『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】信頼は「気持ち」ではない。オキシトシンという“分子”で回る、測れる資産である

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

「信頼が大事だ」。——これほど、誰もが口にし、これほど、誰も「設計」していない言葉も、ないでしょう。多くの経営者にとって、信頼とは、いつの間にか「ある」か「ない」かの、漠然とした気持ちであり、意図して、つくったり、増やしたりするものだ、とは、考えられていない。ところが、脳科学は、この「信頼」を、驚くほど具体的な、測定可能で、設計可能な対象へと、変えてしまいました。今日は、信頼という透明資産の、生物学的な正体と、その、具体的な設計レバーについて、お話しします。

―高信頼の会社の社員は、生産性が50%高く、燃え尽きが40%少ない

神経経済学者のポール・ザックは、20年以上にわたり、人が「信頼」を感じるとき、脳の中で何が起きているかを、測定し続けました。鍵となる物質は、「オキシトシン」。信頼を感じると、脳はこの物質を分泌し、それが、さらなる信頼と、共感と、協力を、生む。信頼は、気持ちである前に、まず、脳内の「化学反応」だったのです。

そして、ザックが、実際の職場で測定した結果は、衝撃的でした。信頼度の高い会社の社員は、信頼度の低い会社の社員に比べ、ストレスが74%少なく、仕事上のエネルギーが106%多く、生産性が50%高く、病欠が13%少なく、仕事への熱意(エンゲージメント)が76%高く、人生への満足度が29%高く、そして、燃え尽き(バーンアウト)が、40%も、少なかった。さらに、高信頼企業の社員は、来年もこの会社に留まりたいと考える割合が50%多く、会社を人に勧めたいと考える割合が、88%も、多かったのです。信頼という空気は、生産性、定着、健康、熱意——経営の、あらゆる硬い指標に、直結していました。

―信頼は、空気の「基軸通貨」である

ここで、私なりの見方を、お伝えします。信頼とは、組織の空気における、「基軸通貨」です。あらゆる取引が、通貨を介して行われるように、組織のあらゆるやり取り——指示、報告、相談、協力——は、信頼という通貨の上で、行われている。信頼が厚ければ、通貨の価値は高く、少ないコストで、速く、物事が動く。逆に、信頼が薄ければ、すべての取引に、「確認」「監視」「根回し」という、重い手数料がかかる。低信頼は、あらゆる仕事に課される、見えない「税金」なのです。

考えてみてください。信頼のある部下になら、「あれ、頼む」の一言で、仕事は動く。信頼のない相手になら、事細かに指示し、途中で何度も確認し、上がってきたものを、疑いの目で、点検する。同じ仕事なのに、信頼の有無で、かかる時間もコストも、まるで違う。信頼は、速度であり、コストなのです。だからこそ、信頼という基軸通貨を、意図して「発行」し、「流通」させることが、透明資産経営の、根幹になります。

―信頼は「オキシトシンが出る行動」で、設計できる

では、どうやって、信頼を発行するのか。ここが、ザックの研究の、真骨頂です。彼は、脳内でオキシトシンの分泌を促し、信頼を生み出す、具体的な「経営者の行動」を、特定しました。信頼は、祈るものではなく、特定の行動によって、設計できるのです。その主なものを、挙げましょう。

第一に、卓越を、称える。優れた働きを、公に、具体的に、そして達成の直後に、認める。第二に、達成可能だが、手応えのある課題を、与える。第三に、仕事の「やり方」を、本人に委ねる(裁量)。第四に、情報を、広く共有する。ザックによれば、自社の目標や戦略を「よく知っている」と感じる社員は、わずか40%。情報が閉ざされた不確実さは、慢性的なストレスとなり、信頼を、蝕むのです。第五に、人としての成長を、支える。第六に、そして意外にも——リーダーが、弱さを見せ、助けを求めること。「これは、分からない。助けてほしい」と言えるリーダーは、脆いのではなく、安定している。それが、相手のオキシトシンを引き出し、信頼を、深めるのです。

さあ、あなた自身を、振り返ってください。あなたは、卓越を、具体的に称えているでしょうか。情報を、広く開いているでしょうか。それとも、「知らせる必要はない」と、閉ざしていないでしょうか。仕事の「やり方」を、細かく管理し、部下の裁量を、奪っていないでしょうか。あなたが、良かれと思って行っている、あの「監視」や「情報の抱え込み」は、社員のオキシトシンを、そして、信頼という基軸通貨を、日々、目減りさせているのかもしれません。

―基軸通貨を、意図して発行する

だから、信頼を、「気持ち」の問題として、放置するのを、やめてください。それは、設計できる、経営の資産です。今日挙げた行動を——卓越を称える、手応えある課題を託す、やり方を委ねる、情報を開く、成長を支える、そして自らの弱さを見せる——意図した「仕組み」として、あなたの経営に、組み込むのです。

想像してみてください。あなたの会社に、信頼という基軸通貨が、豊かに流通し、あらゆる仕事が、確認と監視の重い手数料なしに、速く、軽やかに、動いていく様子を。生産性が上がり、燃え尽きが減り、社員が、留まりたいと願う様子を。信頼は、漠然とした「気持ち」では、ありません。それは、オキシトシンという分子で回り、生産性を50%動かす、測れる資産です。そして、その資産は、あなたの、日々の、具体的な行動によって、発行される。あなたは、信頼という基軸通貨を、今日、どれだけ、発行しましたか。

―勝田耕司