『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】あなたの会社の最大の資産は、決算書に一行も載っていない

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

経営者は、資産を、数えるのが仕事です。現金、在庫、設備、不動産、売掛金。決算書には、会社の価値が、几帳面に、一行ずつ、記されています。ところが、あなたの会社の、おそらく「最大の資産」は——その決算書に、ただの一行も、載っていません。それが、「空気」です。目に見えず、簿価もつかず、それでいて、他のすべての資産の働きを、静かに、決定づけている。今日は、この「簿外の最大資産」が、いかに、あなたの会社の長期業績を、支配しているか。そして、それを、どう「設計」すべきかを、お話しします。

―756倍。文化が生んだ、業績の差

「空気なんて、精神論だ。数字が、すべてだ」。そう考える経営者にこそ、突きつけたい研究があります。ハーバード・ビジネス・スクールのジョン・コッターとジェームズ・ヘスケットが、1992年に発表した、記念碑的な実証研究です。彼らは、22の業界にまたがる、207社もの大企業を、11年間にわたって、追跡しました。感覚や逸話ではなく、売上、株価、純利益という、硬い数字で。

そして、企業を、二つに分けたのです。「業績を高める文化(=良い空気)」を持つ会社と、そうでない会社に。11年後、両者の差は、経営者の想像を、はるかに超えていました。売上の伸びは、682%対166%。従業員数の伸びは、282%対36%。株価の伸びは、901%対74%。そして、純利益の伸びに至っては——756%対、わずか1%。良い空気を持つ会社は、そうでない会社を、純利益の成長で、実に「756倍」もの差で、引き離していたのです。

これは、精神論では、ありません。空気という「簿外資産」が、11年をかけて、財務諸表の、あらゆる行に、その姿を、現した記録なのです。空気は、コストではない。それは、複利で成長する、最大の資産です。

―ただし、「強い空気」が、会社を殺すこともある

ここで、多くの経営者が、勘違いをします。「なるほど、では、強い企業文化を、つくればいいのだな」と。——ここに、この研究の、最も深い洞察があります。コッターとヘスケットは、はっきりと、こう警告しました。「強い文化が、優れた業績を生む」という、当時の通説は、間違っている、と。

強いだけの空気は、しばしば、会社を、殺します。とりわけ、過去に大きな成功を収めた会社ほど、その危険は、高い。かつての成功体験が、「うちのやり方は、正しい」という、強固で、硬直した空気を、生む。そして、市場が変わっても、お客様が変わっても、その空気は、変わろうとしない。強い空気は、内向きの結束を生む一方で、変化への「鈍感さ」を、育ててしまうのです。

では、756倍の差を生んだのは、何だったのか。彼らが突き止めたのは、「適応する文化(アダプティブ・カルチャー)」でした。それは、三つの相手——お客様、従業員、株主——のすべてを、等しく大切にし、そして、環境の変化に合わせて、自らを、柔軟に変えていく空気です。強い空気ではなく、「適応する空気」。ここに、透明資産経営の、核心があります。設計すべきは、変わらない「強さ」ではなく、変わり続ける「しなやかさ」なのです。

―あなたの空気は、「強くて硬い」か、「しなやかに適応する」か

さあ、あなたの会社の空気を、この物差しで、測ってみてください。あなたの会社は、お客様と、従業員と、株主(あなた自身の利益)の、三つを、等しく大切にしているでしょうか。それとも、どれか一つ(多くは、目先の利益)に、偏っていないでしょうか。そして、あなたの会社の空気は、過去の成功体験に、固まっていないでしょうか。「昔は、これで、うまくいった」——その言葉が、口癖になっているなら、それは、あなたの空気が、「強く、そして、硬く」なりかけている、危険信号です。

とりわけ、成功している会社ほど、危うい。今、うまくいっているからこそ、空気は、硬直し、変化を、拒み始める。あなたが、この文章を読んで、「うちは、大丈夫だ」と感じたなら——その、根拠のない安心こそ、コッターとヘスケットが警告した、「硬い空気」の、最初の兆候かもしれないのです。

―「適応する空気」を、意図して設計する

では、どうするか。適応する空気は、放っておいて、育つものでは、ありません。むしろ、放っておけば、空気は、成功とともに、硬直していく。だからこそ、「意図した設計」が、要るのです。

第一に、三つの相手を、等しく大切にする「仕組み」をつくる。利益(株主)だけでなく、お客様の声と、従業員の声が、経営の意思決定に、確実に、届く経路を、設計する。第二に、「昔のやり方」を、定期的に、疑う場を、設ける。うまくいっているものほど、「これは、まだ正しいか」と、問い直す。硬直は、成功の裏で、静かに進むからです。第三に、現場の、あらゆる階層のリーダーに、変化を起こす裁量を、渡す。適応は、トップ一人からでは、なく、全階層のリーダーシップから、生まれるのですから。

想像してみてください。10年後。あなたの会社が、変化に、しなやかに適応し続け、その空気が、売上に、株価に、純利益に——決算書の、あらゆる行に、複利で、姿を現していく様子を。空気は、精神論では、ありません。それは、11年で756倍の差を生む、最大の「簿外資産」です。そして、その資産は、放っておけば硬直し、意図して設計すれば、しなやかに、成長し続ける。あなたの会社で、最も価値ある資産は、金庫の中にも、決算書の中にも、ありません。それは、社員が今、この瞬間に吸っている、その「空気」の中に、あるのです。あなたは、その最大の資産を、意図して、設計していますか。

―勝田耕司