こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
優秀な社員が、辞めていく。経営者は、その理由を、たいてい「給料」や「待遇」に、求めます。「もっと、払える会社に、行ったのだろう」と。だから、対策も、給料や、手当や、福利厚生に、向かう。ところが——この「常識」は、大規模なデータによって、根底から、覆されています。人が会社を去る、最大の理由は、給料では、ありません。それは、「悪い空気」です。しかも、給料の、10倍以上の力で。今日は、あなたの会社から、静かに人を失わせている、その本当の原因について、お話しします。
―有害な空気は、報酬の10.4倍、人を辞めさせる
2021年、アメリカで、「大退職時代(グレート・レジグネーション)」と呼ばれる、記録的な離職の波が、押し寄せました。その原因を、MITスローン経営大学院のドナルド・サルとチャールズ・サルらが、徹底的に、分析しました。彼らが用いたのは、逸話では、ありません。企業口コミサイトに寄せられた、140万件を超える、従業員のレビューを、AIで解析し、172もの文化的要素が、離職率に、どう影響するかを、突き止めたのです。
そして、明らかになった、最大の離職要因。それは、「有害な企業文化(トキシック・カルチャー)」——すなわち、悪い空気でした。その予測力は、報酬(給料への不満)の、実に「10.4倍」。給料が離職に与える影響を1とすれば、悪い空気の影響は、10.4。人は、給料が低いから辞めるのではなく、その10倍の力で、「空気が悪いから」辞めていたのです。「大退職の、本当の原因は、賃金ではなく、空気だった」。これが、データの、結論でした。
―「悪い空気」の正体——五つの毒
では、人を、給料の10倍もの力で辞めさせる「悪い空気」とは、具体的に、何でしょうか。サルらの、その後の研究は、有害な文化を構成する、五つの要素——いわば「五つの毒」——を、特定しました。それは、「敬意のなさ(disrespect)」「不公平・排他性」「非倫理的なふるまい」「同僚を蹴落とす競争」「威圧・パワハラ的な言動」です。
とりわけ、この中で、最も強く、人を辞めさせる毒が——「敬意のなさ」でした。挨拶を返さない。話を最後まで聞かない。人前で、恥をかかせる。貢献を、認めない。存在を、軽んじる。——大それた不正では、なく、日々の、この「小さな敬意の欠如」の積み重ねこそが、最も、人の心を、蝕んでいたのです。ここに、透明資産経営の、重い教訓があります。悪い空気とは、多くの場合、劇的な事件では、ない。日常に、静かに垂れ流される、無数の「小さな無礼」の、堆積なのです。
―悪い空気は、「静かな出血」である
私は、この現象を、「静かな出血」と、呼んでいます。悪い空気は、大きな音を立てて、会社を、倒しはしません。それは、傷口から、じわじわと、血が流れ出るように、あなたの、最も優秀な人材を——最も、他社からも求められ、最も、敬意の欠如に敏感な人材から——静かに、失わせていく。しかも、経営者は、その出血に、なかなか気づけない。辞めていく社員は、退職理由を、たいてい「一身上の都合」「キャリアアップのため」と、当たり障りなく告げるからです。本当の理由——「この会社の、空気に、耐えられなかった」——は、決して、口にされないまま。
そして、恐ろしいのは、この出血を、「給料」という、間違った止血剤で、止めようとすることです。給料を上げても、悪い空気が変わらなければ、出血は、止まりません。なぜなら、人は、給料の10倍の力で、空気に反応しているのですから。あなたが、離職対策に、報酬という高価な絆創膏を貼り続けても、傷口そのもの——敬意のない空気——を、塞がないかぎり、血は、流れ続けるのです。
―「敬意」を、意図して設計する
さあ、あなたの会社の空気に、この「五つの毒」は、混じっていないでしょうか。とりわけ、最強の毒である「敬意のなさ」。あなた自身が、忙しさにかまけて、社員の挨拶を聞き流し、話を遮り、貢献を当たり前に受け取っていないでしょうか。経営者の、その小さな無礼は、伝染し、会社全体の空気の、標準に、なります。
だから、止血の要は、給料では、ありません。「敬意」を、意図して、設計することです。第一に、経営者自身が、敬意の、最高基準を、体現する。挨拶を返し、話を最後まで聞き、貢献を、名指しで、認める。第二に、「五つの毒」を、明確に、許さないものとして、線を引く。敬意のない言動、威圧、蹴落とし合いを、たとえ、それが「優秀な」社員によるものでも、見過ごさない。ひとりの有害な人物が、部屋全体の空気を、毒するからです。第三に、去っていく人の、本当の声を、聞く仕組みをつくる。「静かな出血」は、その傷口を、直視して初めて、塞げるのです。
想像してみてください。あなたの会社の空気から、五つの毒が消え、敬意が、隅々まで、行き渡ったとき——これまで静かに流れ出ていた、優秀な人材という血が、止まり、留まり、力を発揮していく様子を。人は、給料では、辞めません。空気で、辞めるのです。その、10倍の力を、あなたは、止血剤の場所を、間違えて、放置していないでしょうか。傷口は、給料では、なく、空気に、あるのです。
―勝田耕司