『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】変えようとしても、変わらない――あなたの会社は、アクセルとブレーキを、同時に踏んでいる

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

「変わろう」と、決意する。社員にも、「変えよう」と、呼びかける。みんな、本気で、変わりたいと、思っている。それなのに——しばらくすると、元どおり。何も、変わっていない。なぜ、人も、組織も、あれほど「変わりたい」と願いながら、変われないのでしょうか。意志が、弱いから? やる気が、足りないから?——いいえ、違います。ハーバード大学の研究が突き止めた、その本当の理由は、もっと、根深く、そして、もっと、希望に満ちたものでした。今日は、「変われない」ことの、本当の正体について、お話しします。

―「変われば、死ぬ」と言われても、7人に6人は、変われない

ハーバードの心理学者、ロバート・キーガンとリサ・ラスコウ・レイヒーが、紹介する、衝撃的なデータがあります。重い心臓病を患い、医師から「生活習慣を、変えなければ、死にますよ」と、宣告された患者たち。命がかかっている。これ以上ない、動機です。ところが——実際に、生活を変えられたのは、7人に1人だけ。残りの、7人に6人は、死の宣告を受けてもなお、変われなかったのです。

これは、何を、意味するでしょうか。「変われない」のは、動機や、意志の、弱さのせいでは、ない、ということです。命がかかっても、変われないのですから。では、何が、人を、変われなくさせているのか。キーガンとレイヒーは、そこに、目に見えない「免疫システム」が、働いている、と言います。

―あなたには、気づいていない「裏の目標」がある

キーガンとレイヒーの、核心的な洞察は、こうです。人は、しばしば、二つの、相反する「約束(コミットメント)」を、同時に、抱えている。一つは、「変わろう」という、表の、公的な目標。そして、もう一つが——その変化が、脅かすものから、自分を守ろうとする、「裏の、隠れた目標(競合するコミットメント)」です。

たとえば、「もっと、人に任せよう(権限委譲しよう)」と、表では、決意している経営者がいるとします。ところが、彼は、心の奥底で、「自分が、無能だと、思われたくない」「自分が、必要とされなくなるのが、怖い」という、裏の目標を、抱えている。すると、どうなるか。「任せよう」としながら、無意識に、細かく口を出し、結局、自分で抱え込んでしまう。——彼は、片足で「変化」のアクセルを踏みながら、もう片足で、「裏の目標」という、ブレーキを、全力で、踏んでいたのです。だから、車は、進まない。

キーガンは、言います。「表のコミットメントを、実行できないのは、しばしば、裏のコミットメントを、“うまく実行できている”からだ」。つまり、変われないのは、失敗では、ない。あなたの、見えない免疫システムが、あなたを、脅威から守ることに、“成功”しているのです。

―ブレーキの、さらに奥にある「大きな思い込み」

そして、その「裏の目標」の、さらに、奥底に、あるもの。それが、「大きな思い込み(Big Assumption)」です。それは、あまりに深く、信じ込んでいるため、もはや、「思い込み」だとすら、気づかない、「事実」のように感じている、前提です。先の経営者なら、「自分が、すべてを握っていなければ、価値がない」「弱みを見せれば、見下される」といった、思い込み。キーガンの、見事な表現を借りれば——私たちは、その思い込みを「持っている」のではない。その思い込みに、「持たれている」のです。

ここに、透明資産経営の、深い視点があります。あなたが、会社の空気を、変えようとしても、変わらないとき。それは、社員のやる気や、能力のせいでは、ありません。組織全体に、変化を妨げる「免疫システム」——共有された「裏の目標」と「大きな思い込み」——が、働いているからです。「風通しの良い空気にしよう」と言いながら、「裏では、下手なことを言うと、損をする」という思い込みが、全員の、ブレーキになっている。アクセルと、ブレーキを、組織ぐるみで、同時に、踏んでいる。だから、空気は、変わらないのです。

―「免疫マップ」で、見えないブレーキを、見える化する

では、どうすれば、変われるのか。キーガンとレイヒーの答えは、明快です。「免疫システムを、見える化せよ」。見えないブレーキは、踏み続けられる。見えたブレーキは、外せる。彼らは、そのための「免疫マップ」を、提案しました。問うのです。第一に、本当に、達成したい「変化の目標」は、何か。第二に、その目標に反して、自分(たち)が、実際に、やってしまっている行動は、何か。第三に、その行動の裏に隠れた、「守ろうとしている目標」は、何か。そして第四に、その裏の目標を、必要だと感じさせている、「大きな思い込み」は、何か。

この四つを、見える化したら、最後に、その「大きな思い込み」を、小さな実験で、安全に、検証するのです。「本当に、弱みを見せたら、見下されるのか」——試してみる。たいてい、思い込みは、現実とは違う。思い込みが、崩れたとき、ブレーキは、力を失い、変化が、ついに、動き出す。

さあ、あなたの会社で、「変えよう」としても、変わらないことを、思い浮かべてください。その裏に、どんな「裏の目標」と、「大きな思い込み」という、ブレーキが、隠れているでしょうか。それを、見える化せずに、ただ、「もっと頑張れ」と、アクセルを、踏み込んでも——反対の足のブレーキは、踏まれたまま。車は、決して、進みません。

想像してみてください。あなたが、会社の、見えないブレーキを、一つひとつ、見える化し、その奥の思い込みを、検証し、外していったとき——これまで、どれだけ頑張っても動かなかった変化が、ついに、滑らかに、動き出す様子を。変われないのは、意志が弱いからでは、ありません。見えないブレーキを、踏み続けているからです。あなたの会社は、どんなブレーキを、踏んでいますか。

―勝田耕司