『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「余白」という空気を設計しなければ、良い空気は、すべて窒息する

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―ベッドを埋めるほど、病院は回らなくなる

経営者は、稼働率を愛します。設備も人も、100%動いていてこそ効率的だ、と。空いた設備、手の空いた社員は、無駄に見える。ところが医療の現場は、この「常識」がいかに危険かを、はっきり教えてくれます。

病院のベッドの稼働率が、およそ85%を超えたあたりから、病院は危険な兆候を示し始め、90%を超えると、慢性的なベッド不足と周期的な「病床クライシス」に陥る。これは、1999年に権威ある医学誌で示された実証的な知見です。「もったいないから埋め尽くそう」とするほど、病院はかえって回らなくなる。高速道路と同じです。70%の交通量なら滑らかに流れる。85%では、流れてはいるが脆く、一つの事故で全体が渋滞する。95%では、事故など何もなくても、車間がないというだけで、大渋滞になる。稼働率が100%に近づくほど、待ち時間は、直線的にではなく、爆発的に跳ね上がるのです。今日は、あなたが「効率」と信じて削ってきた「余白」こそが、実は、意図的に設計すべき“空気”であり、他のすべての良い空気の土台だった、という話をします。

―「余白」は、変動を吸収し、良い空気を宿す空間である

なぜ、100%に近づくと崩壊するのか。答えは「余白(スラック)」にあります。現実の仕事には、必ず「変動」があります。突然の注文の波、急な欠勤、予想外のトラブル。この変動を吸収してくれるのが、余白です。余白のある組織は、変動が来ても吸収し、しなやかに元に戻る。ところが稼働率100%——余白ゼロの組織は、ごく普通の日常的な変動が来ただけで、たちまち行き詰まり、遅れが次の遅れを呼ぶ悪循環に陥る。(なお「最適は85%」という数字そのものは単純化で、規模が小さく変動の大きい組織ほど、より多くの余白が要ります。)

ここに、透明資産経営の、見落とされがちな真実があります。「余白」は、単なる遊びや無駄ではありません。それ自体が、一つの“空気”なのです。ゆとりのある空気。急かされていない空気。息のできる空気。そして決定的なのは——この余白の空気こそが、他のすべての良い空気を宿す「器」だということです。考えてみてください。100%で埋め尽くされたチームには、改善する余白も、じっくり考える余白も、困っている同僚を助ける余白も、目の前を横切る危機に気づく余白も、決定の前に立ち止まって検証する余白も、ありません。親切も、誠実も、創意も、助け合いも——良い空気のすべては、余白という空間の中にしか、生きられないのです。余白を削ることは、良い空気の「住む場所」を、根こそぎ奪うことにほかなりません。

―「全員フル稼働」を、誇っていないか

さあ、あなたの会社を正直に見てください。あなたは、「うちは全員が手いっぱいだ」「遊んでいる人間は一人もいない」「無駄なくフル稼働だ」と、誇っていないでしょうか。そして一方で、なぜ改善が進まないのか、なぜ変化に対応できないのか、なぜ小さなトラブルが大惨事になるのか、なぜ社員が余裕をなくし、お客様や同僚にとげとげしく当たるのか——不思議に思っていないでしょうか。答えは、あなた自身が、良い空気の宿る場所である「余白」を、「無駄」として削り尽くしてしまったから、です。あなたは、効率を最大化したつもりで、実は、あなたの会社から、良い空気のすべてを窒息させていたのです。

だからこそ、余白を、意図的に「設計」してください。これは、だらけを許すことではありません。良い空気を宿すための、戦略的な空間の確保です。あえて稼働率を100%より下に保つ。予定を隙間なく詰め込まない。「何も入っていない時間」を、無駄としてではなく、変動を吸収し、改善と思考と助け合いという良い空気を生む「投資」として、守り抜く。ある一線を越えた「効率」は、もはや効率ではありません。それは「脆さ」の、そして「良い空気の窒息」の、別名なのです。

想像してみてください。数か月後、あなたの会社が、突然の変動にもしなやかに対応し、社員に、改善し、考え、助け合う余裕があり、その余白の中で、親切と誠実と創意が、自然に息づいている様子を。それでいて、以前よりも滑らかに、多くの仕事が流れていく様子を。あなたが、余白を削るのをやめ、余白という空気を、意図的に設計したから、です。あなたの会社の稼働率は今、良い空気が息づく85%でしょうか。それとも、何もなくても渋滞し、良い空気が窒息する、95%でしょうか。良い空気を願う前に、その空気が住む「余白」を、設計してあげてください。

―勝田耕司