『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】切符では直らなかった違反を、「あなたの速度」の表示が直した――“自ら正す空気”を設計する

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―罰しても減らなかったスピード違反を、直したもの

アメリカ、カリフォルニア州のガーデングローブ市。学校のそばの道で、車のスピード違反が絶えず、事故が増えていました。市当局は当然の手を打ちます。新しい速度制限の標識を立て、警官を配置し、違反者にどんどん切符を切った。「罰」で、行動を抑え込もうとしたのです。ところが——事故の傾向は、いっこうに改善しませんでした。

そこで市の技術者たちは、まったく別のことを試みます。道路脇に、レーダー付きの「速度表示板」を設置したのです。近づく車のスピードを測り、「あなたの速度は○○キロ」と、その場でドライバー本人に見せる、ただそれだけの装置。罰則も切符も、追ってきません。ただ、自分のスピードを見せられるだけ。結果、ドライバーは平均でおよそ14%もスピードを落とし、その効果は何年も続きました。切符という「罰」で動かせなかった行動を、「あなたの速度」という、ただの表示が動かした。今日は、あなたが「ルールと罰」で直そうとして直らない、あの問題を——「自ら正す空気」を設計することで解く、という話をします。

―人は、罰される空気より、「自分の姿が見える空気」で、自ら正す

なぜ、罰は効かず、ただの表示が効いたのか。ドライバーは、そもそも制限速度を「知って」いました。標識に書いてある。知識が足りなかったのではない。足りなかったのは、「今、自分がどう振る舞っているか」という、即座の、そして自分ごととしての、フィードバックだったのです。「あなたの速度は62キロ」——その場の、自分に向けられた情報が、「あ、出しすぎだ」という自己修正を引き起こした。罰せられたからでも、命じられたからでもなく、自分の姿が見えたから、人は自ら行動を直した。

ここに、透明資産経営の、力強い設計原理があります。組織には、二種類の空気があります。一つは「監視され、罰せられる空気」——上からルールを課し、違反を罰する空気。ここでは、人はしぶしぶ従い、静かに反発し、見張りがいなくなれば元に戻る。もう一つは「自分の姿が見え、自ら正す空気」——一人ひとりが、自分の振る舞いを即座に、目に見える形で受け取り、自分で調整する空気。ここでは、人は、罰されずとも、命じられずとも、自ら正す。そして、こちらの空気のほうが、安上がりで、長続きし、反発を生まない。どちらの空気の中で会社を回すか——それは、あなたが「設計」できるのです。

―あなたは、「ルールと罰」の空気ばかり、つくっていないか

さあ、あなたの会社の、繰り返す問題を思い浮かべてください。品質の抜け、対応の遅れ、望ましくない振る舞い。それに、あなたはどう対処してきたでしょうか。たいていは、新しいルールを作り、守らせ、守らなければ罰する。上からの「管理」です。そして、それはしばしば、しぶしぶの服従と静かな反発を生むばかりで、根本的には直らない。あなたは、知らず知らず、「監視され、罰せられる空気」を、せっせと設計してきたのかもしれません。

その一方で——あなたの社員は、自分自身の「今の速度」を、リアルタイムで見ることができているでしょうか。自分の仕事ぶりを映す、「あなたの速度」の表示板を、あなたは、彼らに与えているでしょうか。おそらく、答えは「いいえ」です。彼らは、自分の姿が見えないまま、ただ「制限速度を守れ」と、標識と切符で締めつけられている。これでは、自ら正しようがありません。

だから、経営者として設計すべきは、もう一つのルールでも、もう一つの罰でもありません。「自分の姿が見え、自ら正す空気」です。社員一人ひとりの「今の速度」——自分の仕事の成果や、お客様の生の反応を、即座に、目に見える形で、本人に返す仕組みを、設計する。処罰の脅しとしてではなく、「自分で見て、自分で直せる」ように。自分の数字が見えるダッシュボード。届いたお客様の声が、すぐ本人に伝わる仕組み。今日の出来が一目でわかる、見える化。これは、管理を強めることではありません。「自ら正す空気」を、仕組みとして設計することです。

想像してみてください。数か月後、あなたが口うるさく管理しなくても、社員が、自分の“速度計”を見ながら、自ら、静かに、行動を修正し続けている様子を。監視と罰の重い空気ではなく、自己修正の軽やかな空気の中で、会社が、ひとりでに良くなっていく様子を。あなたが、また一つルールを足すのをやめ、「自ら正す空気」を、意図的に設計したから、です。人は、罰される空気の中では、渋々従うだけ。けれど、自分の姿が見える空気の中では、自ら、正すのです。あなたは、次の問題に、また新しいルールと罰で応えますか。それとも、社員が自ら正したくなる空気を、設計しますか。

―勝田耕司