こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
経営者が、社員に、最も強く願うことの一つが、「当事者意識を、持ってほしい」でしょう。自分の会社のように、考え、動いてほしい。けれど、いくら「当事者意識を持て」と号令をかけても、社員の目は、どこか他人事のまま。——なぜでしょうか。実は、当事者意識は、号令や、精神論から、生まれるものでは、ありません。それは、ある、もっと根本的な条件から、生まれる。その条件を、仕組みとして、会社まるごとに、設計し、驚異的な強さを手にした会社があります。今日は、「当事者意識」という空気の、本当の作り方について、お話しします。
―全米最大の「従業員が所有する会社」
アメリカに、パブリックスという、スーパーマーケットチェーンがあります。南部を中心に、1,300以上の店舗を展開し、年商は5兆円を超える、巨大企業です。ところが、この会社には、際立った特徴があります。株式を、公開していない。そして、株式のおよそ8割を、現役と退職した「従業員」が、保有している。パブリックスは、全米最大の、「従業員が所有する会社」なのです。
創業者ジョージ・ジェンキンス——社員から「ミスター・ジョージ」と慕われた彼は、創業当初から、ある信念を、持っていました。「社員が、会社の所有権(オーナーシップ)を持てば、全員が、得をする」。彼は言いました。「我々は、食料品業ではない。人間業(people business)なのだ」と。そして、その信念を、仕組みにしました。社員に、毎年、無償で、自社株を、付与する。社員は、文字どおり、会社の「オーナー」になるのです。
―「所有」が、当事者意識を、生む
なぜ、ジェンキンスは、これほど、従業員の所有に、こだわったのか。彼の論理は、明快でした。社員が、会社の株を持ち、文字どおり「投資」していれば、社員は、会社に成功してほしいと、心から願い、そのために、より一生懸命に働き、お客様に、より良い体験を、提供しようとする——と。
その読みは、見事に、当たりました。あるパブリックスの店長は、こう語っています。「従業員が所有する会社で働くことは、私に、強いオーナーシップを与えてくれる。だから、毎日出社するとき、私は、最高の仕事をしたいと、思うのです」。社員は、「雇われ人」ではなく、「オーナー」として、働く。だから、言われなくても、棚を整え、改善策を考え、お客様に、心を尽くす。結果、パブリックスは、小売業では異例の、低い離職率と、伝説的な顧客サービスを、実現し、不況の際も、解雇をせず、安泰を保ってきました。あの投資家ウォーレン・バフェットさえ、称賛する会社です。
これは、パブリックス、一社の、偶然では、ありません。従業員所有に関する研究は、こう示しています。広く行き渡った従業員所有は、生産性を、平均で約4%高め、従業員所有の会社は、そうでない場合に比べ、年2.5%ほど速く、成長する。離職は低く、満足度は高く、不況への耐性も、強い。「所有」は、当事者意識という空気を生み、その空気が、業績を生んでいたのです。
―号令では生まれないものを、「仕組み」で生む
ここに、透明資産経営の、核心があります。当事者意識という空気は、「持て」という号令からは、生まれません。それは、「所有している」という、具体的な事実から、生まれるのです。人は、自分が所有しているものを、大切にする。自分の家は、磨くが、借りた部屋は、磨かない。会社も、同じです。社員が、会社を「自分のもの」だと感じられる、具体的な条件を、設計しないかぎり、当事者意識という空気は、育たない。
パブリックスが教えてくれるのは、「当事者意識を、精神論で求めるな。所有という、仕組みで、生み出せ」ということです。もちろん、すべての会社が、パブリックスのように、全社を従業員所有にできるわけでは、ありません。けれど、「所有」には、様々な形があります。会社の株を、一部、分け与える。利益を、分かち合う(profit sharing)。あるいは、金銭的な所有でなくとも——仕事の「決定権」を、所有させる。成果を、「自分の手柄」として、所有させる。情報を、開き、会社の全体像を、「共に所有」させる。規模に関係なく、「社員が、何かを、本当に自分のものとして所有できる」空気は、設計できるのです。
さあ、あなたの会社で、社員は、何を、「所有」しているでしょうか。会社の成功に対して、具体的な「取り分」を、持っているでしょうか。自分の仕事に対して、「決定権」を、所有しているでしょうか。それとも——決定権も、情報も、利益も、すべてを、あなたが、握りしめ、社員には、「当事者意識だけ」を、求めていないでしょうか。何も所有していない人に、当事者意識を求めるのは、借り部屋の住人に、「我が家のように、磨け」と、求めるようなものなのです。
―「オーナー」にする空気を、設計する
だから、社員を、「雇われ人」から、「オーナー」へと、変える空気を、設計してください。金銭的な所有(株、利益の分配)が難しくても、決定権の所有、成果の所有、情報の共有という形で、社員に、「これは、自分のものだ」という実感を、渡していく。所有を渡した分だけ、当事者意識という空気は、育っていきます。
想像してみてください。あなたの社員が、「雇われ人」としてではなく、「オーナー」として——誰にも言われずに、棚を整え、改善を考え、お客様に心を尽くし、会社の成功を、我が事として、願っている様子を。それは、あなたが、上手に「当事者意識を持て」と、説いたからでは、ありません。あなたが、社員を、本当に「オーナー」にする空気を、設計したから、です。当事者意識は、号令では、生まれません。所有から、生まれるのです。あなたは、社員に、何を、所有させていますか。
―勝田耕司