こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
あなたは、部下に、耳の痛いことを、言えていますか。「ここは、よくない」「このままでは、まずい」。——言うべきだと分かっていても、「嫌われたくない」「気まずくなりたくない」「相手を傷つけたくない」と、つい、飲み込んでしまう。そして、「優しさ」のつもりで、黙る。ところが、この「気まずさを避ける優しさ」こそ、実は、部下を、最も傷つける、残酷な行為かもしれないのです。今日は、職場の空気を腐らせる、最も一般的な、そして最も見過ごされがちな失敗について、お話しします。
―グーグルとアップルを渡り歩いた女性が見た、職場の病
キム・スコットは、グーグルとアップルで、チームを率いた、マネジメントの専門家です。二つの、まったく異なる文化を持つ巨大企業で、人を育てた彼女が、たどり着いた結論。それが、「ラディカル・キャンダー(徹底的な率直さ)」という、フィードバックの枠組みでした。
彼女は、フィードバックを、二つの軸で、捉えます。縦軸は、「相手を、個人として、心から気にかけているか(Care Personally)」。彼女は、これを「本気で思いやる軸」と呼びました。横軸は、「相手に、率直に、ものを言えているか(Challenge Directly)」。この二つの軸で、フィードバックは、四つの領域に、分かれます。
この二つが、両方とも高い、右上の領域が、目指すべき「ラディカル・キャンダー」。心から相手を思いやりながら、同時に、率直に、明確に、ものを言う。これが、最良のフィードバックです。
―職場に蔓延する、三つの「悪い空気」
残りの三つの領域は、すべて、失敗です。一つ目。「気にかけているが、率直に言えない」——これを、スコットは「破滅的な共感(Ruinous Empathy)」と、名づけました。相手の気持ちを思うあまり、言うべきことを、飲み込む。やんわりと、ぼかす。いわゆる「優しすぎる」上司です。二つ目。「率直に言うが、気にかけていない」——「不快な攻撃(Obnoxious Aggression)」。いわゆる「残酷な正直さ」。相手への配慮なく、冷たく、ばっさり切る。これは、人間関係を、壊します。三つ目。「気にかけてもおらず、率直でもない」——「作為的な不誠実(Manipulative Insincerity)」。面と向かっては、お世辞を言い、陰で、批判する。保身と、政治。これが、最悪です。
そして、スコットが、「マネジメントの失敗の、大多数は、ここで起きる」と断言したのが——「破滅的な共感」、つまり、「気まずさを避ける優しさ」でした。悪意からでは、ありません。むしろ、「優しさ」から。けれど、その優しさが、相手から、成長の機会を、奪うのです。
―なぜ、「黙る優しさ」が、残酷なのか
ここに、透明資産経営の、重要な洞察があります。「破滅的な共感」が、なぜ、残酷なのか。考えてみてください。部下の仕事に、問題がある。あなたは、気まずさを避け、黙る。すると、部下は、自分の問題に、気づけない。だから、直せない。そして、同じ失敗を、繰り返し、成長できないまま、取り返しのつかない段階まで、来てしまう。——あなたの、その場の「優しさ」が、部下の、長い目で見た成長を、殺したのです。本当の優しさとは、その場の気まずさを避けることでは、ありません。相手の成長のために、あえて、率直に、伝えることなのです。
スコットは、鋭く、こう言います。「もし、ラディカル・キャンダーが無理なら、次善の策は、“不快な攻撃”でさえある」と。黙る優しさよりも、たとえ配慮を欠いても、率直に言うほうが、まだマシだ、と。なぜなら、率直に言えば、少なくとも、相手は、問題に、気づけるからです。それほど、「黙ること」の罪は、重いのです。
―「率直さ」は、「思いやり」の上でしか、機能しない
ただし、ここが、肝心です。率直さだけでは、いけません。率直さが、機能するのは、「あなたを、心から、気にかけている」という関係の、空気の上でだけ、なのです。考えてみてください。あなたは、見ず知らずの他人からの厳しい指摘には、反発しますが、自分を本当に大切に思ってくれる友人からの、同じ指摘は、受け入れられる。率直さは、思いやりという土台があって、初めて、相手の心に、届くのです。
だから、二者択一では、ありません。「優しさか、率直さか」ではなく、「優しさも、率直さも」。この両立こそが、人を伸ばす空気の、核心なのです。
さあ、あなたの会社の空気は、どうでしょうか。あなたは、「破滅的な共感」——気まずさを避ける優しさの中で、言うべきことを、飲み込んでいないでしょうか。あるいは、逆に、「不快な攻撃」——思いやりのない、冷たい指摘で、関係を、壊していないでしょうか。そして、最悪の「作為的な不誠実」——面と向かっては言わず、陰で批判する空気が、蔓延していないでしょうか。
―「率直さ×思いやり」の空気を、設計する
だから、「ラディカル・キャンダー」の空気を、意図して、設計してください。第一に、「本気で思いやる」土台を、築く。一人ひとりを、人間として、本当に大切にし、関心を示す。率直さは、その上でしか、効かないからです。第二に、その土台の上で、率直に、伝える。問題を、飲み込まず、しかし、冷たくではなく、相手の成長を願って、明確に、親身に、伝える。第三に、経営者である、あなた自身が、率直なフィードバックを、「求める」。「私の、よくないところを、一つ、教えてほしい」と。上が、率直さを歓迎する姿勢を見せて、初めて、会社全体に、率直に言える空気が、生まれるのです。
想像してみてください。あなたの会社で、人々が、互いを心から思いやりながら、同時に、率直に、ものを言い合えている様子を。気まずさを避けて黙るのではなく、相手の成長のために、本音を交わし合う、そんな空気の中で、全員が、伸びていく様子を。本当の優しさとは、沈黙では、ありません。それは、思いやりを込めて、率直に伝える、勇気です。あなたは、部下に、本当の優しさを——率直さを、渡していますか。それとも、気まずさを避ける優しさの中で、部下から、成長の機会を、奪っていませんか。
―勝田耕司