こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
もし、上司が、一人もいない会社があったら——あなたは、どう思うでしょうか。「そんなもの、混沌と、無責任の、巣窟になるに決まっている」。ほとんどの経営者が、そう考えます。命令する者がいなければ、人は動かない、と。ところが、その常識を、数十年にわたって、覆し続けている会社が、実在します。しかも、混沌とは、正反対の——高い規律と、業績を、保ちながら。今日は、この、極めて示唆に富む会社を通じて、「命令」ではなく「約束」で回る、空気の設計について、お話しします。
―世界最大のトマト加工会社に、管理職はいない
その会社の名は、モーニング・スター。アメリカの、トマト加工の、世界最大手です。全米のトマト加工の、実に25〜30%を、手がける。この、決して小さくない会社に——「管理職」が、一人も、いません。上司も、役職も、命令系統も、ない。経営学者ゲイリー・ハメルが、名門ハーバード・ビジネス・レビューで、「まず、管理職を、全員クビにしよう」という、挑発的な題で紹介し、世界的に、知られるようになりました。
ハメルは、こう論じます。管理職の階層は、組織に、重い「税金」を課している、と。管理職は、コストがかかり(組織が大きくなるほど、そのコストは、絶対的にも、相対的にも、膨らむ)、大きな判断ミスのリスクを高め(意思決定者に異を唱えられる者が、減っていく)、意思決定を、遅らせ(承認の階層が増える)、そして何より、現場の社員から、力を、奪う。管理という活動は、しばしば、組織で「最も非効率な活動」なのだ、と。では、その管理職なしで、モーニング・スターは、どうやって、規律ある協働を、実現しているのか。
―「使命」が上司であり、「約束」が組織構造である
その仕組みは、二つの、柱から成ります。第一に、「使命を、上司にする」。社員一人ひとりが、会社の全体目標に、自分がどう貢献するかを記した、個人の「使命(ミッション)」を、自ら、掲げる。人は、上司の命令ではなく、この、自ら定めた使命に、導かれて、動くのです。
第二に、そして、この会社の、核心が——「CLOU(同僚との、了解の手紙)」です。毎年、社員は、自分の仕事に最も関わる、およそ10人の同僚と、話し合い、「自分は、何に責任を持ち、何を、いつまでに、どう成し遂げるか」を記した、約束の文書——CLOUを、自ら、取り交わします。上司が与える「職務記述書」の、代わりに。全社では、このCLOUが、およそ3,000もの、正式な「約束」の網を、形づくる。つまり、この会社の組織構造は、上から下への「命令系統」ではなく、同僚どうしの、水平な「約束の網」なのです。誰も、他人に、決定を強制する権限を、持たない。その代わり、誰もが、自ら交わした約束に、責任を負う。命令ではなく、約束が、組織を、回している。
―「命令」で動く組織か、「約束」で動く組織か
ここに、透明資産経営の、究極の問いがあります。あなたの会社は、「命令」で、動いていますか。それとも、「約束」で、動いていますか。命令で動く組織では、人は、言われたことを、言われたとおりに、こなす。責任は、命令した上司にあり、部下は、実行するだけ。だから、上司の目がなければ、動きは、止まる。一方、約束で動く組織では、人は、自ら交わした約束を、果たそうとする。責任は、本人にある。だから、誰も見ていなくても、動く。同じ「働く」でも、命令に従うのと、約束を守るのとでは、そこに宿る当事者意識が、まるで、違うのです。
もちろん、正直に申し添えなければ、なりません。この、上司ゼロの仕組みを、そのまま、どんな会社でも真似できる、わけではありません。実際、急進的な権限移譲が、深刻な混乱を招き、階層に、揺り戻した組織も、あります。モーニング・スターの仕組みが機能するのは、その土台に、高い信頼と、当事者意識という、長年かけて設計された「空気」が、あるからです。仕組みだけを、空気なしに、移植すれば、それこそ、混沌になる。逆に言えば——鍵は、仕組みそのものではなく、その仕組みを支える「空気」に、あるのです。
さあ、あなたの会社を、見てください。社員は、あなたの「命令」を待って、動いていないでしょうか。あなたの目が、届かないところで、動きが、止まっていないでしょうか。それは、社員が、受け身だからでは、ないかもしれません。あなたが、「命令で動く空気」を、設計してきたから、かもしれないのです。
―「約束」で回る空気を、設計する
だから、命令を、少しずつ、「約束」に、置き換えてください。上司ゼロに、いきなりする必要は、ありません。けれど、その原理は、今日から、設計できます。第一に、「使命」を、共有する。一人ひとりが、会社の目標に、自分がどう貢献するかを、自らの言葉で、描けるようにする。第二に、「命令」ではなく、「約束」を、交わす。上から「これをやれ」と指示する代わりに、「何を、いつまでに、どう成し遂げるか」を、本人と、そして関わる同僚と、話し合い、本人の口から、約束させる。第三に、その約束が、守られる空気——高い信頼と、当事者意識——を、土台として、育てる。
想像してみてください。あなたの会社で、社員が、命令を待つのではなく、自ら交わした約束に、責任を持って、あなたの目がなくても、動いていく様子を。管理という重い「税金」が減り、当事者意識という資産が、増えていく様子を。上司を減らすほど、当事者が、増える。ただし、それは、それを支える「空気」を、設計できたなら、の話です。あなたの会社は、「命令」で回っていますか。それとも、「約束」で回る空気を、あなたは、設計しますか。
―勝田耕司