こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
会議で、最初に発言した数人が、同じ意見を言う。すると、残りの人は、たとえ、心の中で「それは、おかしいのでは」と思っていても、なかなか、口に出せない。「全員が、賛成しているのに、自分だけ、反対するのは……」。そうして、おかしな決定が、「全員一致」で、通ってしまう。——これは、意志の弱い人の、特別な現象では、ありません。答えが、誰の目にも「明らか」な場合ですら、人は、この「全員一致の空気」に、流されてしまう。それを、科学的に証明した、有名な実験があります。今日は、同調圧力という空気と、それを破る、たった一つの方法について、お話しします。
―「明らかに違う」答えに、約4割が同調した
社会心理学者ソロモン・アッシュが、1950年代に行った、古典的な実験です。彼は、被験者に、ごく簡単な課題を、出しました。一本の線を見せ、「三本の比較線のうち、どれと、同じ長さか」を、答えさせる。答えは、誰が見ても、明らか。一人でやれば、ほぼ100%、正解する、簡単な問題です。
ところが、アッシュは、仕掛けを、しました。被験者の周りに、「サクラ(実験協力者)」を、配置し、その全員が、わざと、「明らかに間違った、同じ答え」を、口にするように、したのです。すると——どうなったか。本物の被験者の、約37%が、自分の目には、間違っていると分かっているのに、その「全員一致の、間違った答え」に、同調してしまった。そして、実験全体を通じて、約75%の人が、少なくとも一度は、同調した。答えが、こんなにも、明らかなのに、です(一方で、約25%は、最後まで、一度も、同調しませんでした)。人は、「正しくありたい」だけでなく、「集団から、浮きたくない」という、強い圧力に、負けるのです。
―鍵は、「全員一致」を、破ること
ところが、ここに、大きな希望が、あります。アッシュは、様々な条件を、試しました。その中で、最も、劇的な効果を生んだのが——「たった一人の、味方(異論者)」の存在でした。
サクラの中に、たった一人、「全員一致」を破って、「正しい答え」を言う人を、混ぜる。すると、本物の被験者の同調率は、約37%から、約5%へと、劇的に、下がったのです。8割近い、減少です。しかも——驚くべきことに、その一人が、「正しい答え」ではなく、「別の、間違った答え」を言った場合でも、同調は、大きく下がりました。つまり、重要なのは、その一人が、自分の意見に「賛成」してくれることでは、ない。「全員一致」という、その状態が、「破られる」こと、だったのです。たった一人が、「いや、違う」と、口火を切るだけで、残りの人は、「自分だけじゃない」と、自分の判断に、従う勇気を、取り戻す。アッシュは、言います。最初に、異を唱える、その一人は、不釣り合いなほど、大きな力を、持っている、と。
―あなたの会議は、「全員一致の空気」を、作っていないか
ここに、透明資産経営の、核心があります。会社の意思決定の空気が、「全員一致の、同調圧力」に、支配されているとき——どれだけ優秀な人が集まっていても、おかしな決定が、誰にも止められずに、通ってしまう。みんな、心の中では、おかしいと思っているのに、「全員が賛成しているのに、自分だけ……」と、口をつぐむからです。そして、最も危険なのが、経営者である、あなた自身が、最初に、強い意見を、述べてしまうこと。社長が、口火を切れば、残りは、全員、それに、同調する。あなたは、「全員一致の、賛成」を得たと、思うかもしれない。けれど、それは、本物の合意では、なく、同調圧力が、作り出した、幻かもしれないのです。
さあ、あなたの会議の空気を、振り返ってください。最初に、声の大きい数人(あるいは、あなた自身)が、同じ方向の意見を言うと、残りは、黙って、頷いていないでしょうか。「反対意見は、ありますか」と聞いても、シーン、としていないでしょうか。その沈黙は、合意では、なく、「全員一致の空気」に、異論が、飲み込まれた音かもしれません。
―「最初の一人の異論」を、守り、称える空気を、設計する
だから、「全員一致の同調圧力」を防ぎ、「異論が出る空気」を、設計してください。第一に、経営者は、最初に、意見を言うのを、こらえる。あなたが先に言えば、全員が、それに同調してしまうからです。第二に、意図的に、「全員一致」を、破る仕組みを、作る。たとえば、誰か一人に、「あえて、反対意見を言う役(悪魔の代弁者)」を、割り当てる。あるいは、全員の意見を、先に、紙に書かせ、「全員一致」の空気が、生まれる前に、多様な意見を、机に載せる。第三に、そして最も大切なのが——「いや、違うと思う」と、最初に口火を切った一人を、罰するのではなく、守り、称えること。その一人こそ、全員を、同調の呪縛から、解き放つ、貴重な存在なのですから。
想像してみてください。あなたの会議で、「全員一致」の空気に流されるのではなく、一人が「違う」と言えば、別の人も「実は、自分も」と続き、本音の、健全な議論が、交わされる様子を。それは、社員が、急に、勇敢になったからでは、ありません。あなたが、最初の一人の異論を、守り、称える空気を、設計したから、です。答えが明らかでも、人は、全員一致の空気に、流されます。たった一人の異論が、それを、破る。あなたは、その「最初の一人」を、潰していますか。それとも、称えていますか。
―勝田耕司