『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】戦略は、真似される。健全な空気は、真似できない――最後の、未開拓の金脈

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

経営者は、「賢さ」で、勝とうとします。優れた戦略、鋭いマーケティング、最新のテクノロジー、巧みな財務。書店のビジネス書も、セミナーも、その「賢さ」を、競うように、売っている。ところが、世界的な経営思想家が、こう断言しています。会社が手にしうる、最大の競争優位は、その「賢さ」の中には、ない。それは、まったく別の場所——ほとんどの経営者が、見向きもしない場所に、眠っている、と。今日は、その、最後の「未開拓の金脈」について、お話しします。

―「賢さ」は出尽くした。残る金脈は「健全さ」

その思想家、パトリック・レンシオーニは、著書『ジ・アドバンテージ』で、明快に、こう述べます。「いかなる会社も手にしうる、唯一・最大の優位は、“組織の健全性”である。それは、シンプルで、無料で、誰にでも手が届くのに、ほとんどの経営者に、無視されている」。

彼の言う「健全さ」とは、社内政治や、混乱や、機能不全が、最小限であり、士気と生産性が高く、離職が少ない状態——つまり、「良い空気」のことです。レンシオーニは、こう指摘します。今日、ほとんどの会社は、成功するのに“十分な”知性も、経験も、知識も、すでに持っている。足りないのは、それらを活かす「健全な空気」なのだ、と。にもかかわらず、経営者は、戦略や技術といった「賢い」領域——もはや、ほとんど掘り尽くされた鉱脈——ばかりを、掘り続けている。その足元に、手つかずの金脈が、眠っているのに。

なぜ、この金脈は、無視されるのか。レンシオーニは、鋭く、こう言います。健全さは、「かっこよくもなく、数値化もしにくい」から、だと。派手な新戦略のほうが、語りやすい。空気の健全さは、地味で、測りにくく、そして——効くのです。

―戦略は真似できる。空気は、真似できない

ここに、透明資産経営の、決定的な視点があります。なぜ、「健全な空気」が、最大の“競争優位”になるのか。それは、他社が、真似できないから、です。優れた戦略は、いずれ、競合に、真似されます。新製品は、模倣される。価格は、追随される。テクノロジーは、いつか、追いつかれる。「賢さ」による優位は、すべて、いつか、コピーされる運命にある。ところが、長い時間をかけて、信頼と、率直さと、当事者意識で編み上げられた「健全な空気」だけは——他社が、どれほど欲しがっても、コピーできない。それは、その会社の、歴史と、無数の日々の積み重ねの中にしか、宿らないからです。真似できないものだけが、持続的な優位になる。ゆえに、空気こそが、最後の、そして最強の、競争優位なのです。

―健全な空気は「信頼」から積み上がる

では、その健全な空気は、どう築くのか。レンシオーニは、もう一つの名著で、チームが陥る「五つの機能不全」を、ピラミッドとして、示しました。これは、健全な空気の、設計図でもあります。

土台となる、一段目は、「信頼の欠如」。ここでの信頼とは、弱さを、さらけ出せること。「分からない」「間違えた」「助けてほしい」と、安心して言える空気です。この土台がないと、二段目——「対立への恐れ」が生じる。信頼がなければ、人は、率直な議論を避け、当たり障りのない、上辺だけの合意をする。すると、三段目——「コミットメントの欠如」。本音で議論に加わっていない人は、決定に、本気で、コミットしない。「聞いていない」からです。四段目は、「説明責任の回避」。本気でコミットしていなければ、仲間の、基準に満たない行動を、見て見ぬふりをする。そして頂上、五段目が、「結果への無関心」。こうして、チームは、全体の結果より、個人の地位や、エゴを、優先し始める。——健全な空気とは、この逆を、土台から、一段ずつ、積み上げたもの。すべては、「弱さを見せられる信頼」という、一段目から、始まるのです。

さあ、あなたの会社の空気を、この五段で、診断してください。社員は、あなたの前で、「間違えました」「分かりません」と、安心して言えるでしょうか(信頼)。会議で、本音の、健全な対立が、起きているでしょうか。それとも、上辺の合意ばかりでしょうか(対立への恐れ)。決定に、全員が、本気でコミットしているでしょうか。あなたの会社の空気は、この、どの段で、崩れているでしょうか。

―「賢さ」より、「健全さ」に投資する

だから、あなたの投資の、優先順位を、問い直してください。次の新戦略、次の新システムに投資する前に——その足元の、「健全な空気」に、投資しているでしょうか。レンシオーニが言うように、健全さの設計は、まず、経営者“自身”が、弱さを見せることから、始まります。トップが、率先して、「これは、分からない。助けてほしい」と言えたとき、初めて、信頼という土台が、据えられる。想像してみてください。あなたの会社が、他社には決して真似のできない「健全な空気」を土台に、賢い戦略さえも、より速く、より力強く、実行していく様子を。

戦略は、真似されます。健全な空気は、真似できません。だからこそ、それは、あなたが手にしうる、最後の、そして最強の、競争優位なのです。あなたは、掘り尽くされた「賢さ」の鉱脈を、まだ掘り続けていますか。それとも、足元に眠る「健全さ」という金脈に、鍬を、入れますか。

―勝田耕司