『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】原発も空母も、めったに事故を起こさない――「事故を起こさない空気」は、設計されている

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

考えてみれば、不思議な組織があります。原子力空母の甲板。航空管制。原子力発電所。——一つのミスが、即、大惨事につながる、極限の危険と、複雑さの中で、彼らは、日々、稼働している。常識で言えば、混沌と、事故が、支配してもおかしくない。ところが、現実には、そうした組織は、驚くほど、事故を起こさない。なぜ、最も危険な現場が、最も安全なのか。そこには、偶然でも、幸運でも、根性でもない、「設計された空気」が、あります。今日は、事故や重大なミスを、繰り返す会社と、繰り返さない会社を分ける、その空気の設計原理を、お話しします。

―「高信頼性組織」という、研究対象

経営学者のカール・ワイクとキャスリーン・サトクリフは、こうした組織を、「高信頼性組織(High Reliability Organization、HRO)」と名づけ、研究しました。彼らの定義によれば、HROとは、「常に、極めて過酷な条件下で稼働しながら、それでも、起きて当然の量よりも、はるかに少ない事故しか、起こさない組織」。彼らは、その秘密を、突き止めました。それは、優れた設備でも、天才的な個人でも、なかった。組織全体に行き渡った、ある種の「注意の払い方」——彼らが「マインドフルな組織化」と呼ぶ、空気——でした。そして、その空気は、五つの原則から、成っていました。

―事故を起こさない空気を、つくる五つの原則

第一に、「失敗への、こだわり」。HROは、成功に、油断しません。むしろ、小さなヒヤリ・ハット、些細な異常、危うく免れた失敗にこそ、神経を尖らせる。彼らは、こう問い続けます。「今回は、うまくいった。だが、それは“実力”か、それとも“運”か」。小さな失敗の兆候を、大惨事の“予告”として、扱うのです。

第二に、「単純化への、抵抗」。物事を、「まあ、こういうことだろう」と、安易に決めつけない。都合のいい単純な説明に飛びつかず、複雑さと、真の原因を、粘り強く、掘り下げる。異論や、違う見方を、歓迎する。

第三に、「現場への、敏感さ」。今、まさに、現場で何が起きているか——その生々しい状況を、常に把握し、異常の兆しを、早期に、捉える。

第四に、「回復力への、コミットメント」。失敗を、ゼロにはできない、と知っている。だから、失敗が起きても、それを小さく抑え込み、素早く立ち直る力を、日頃から、鍛え、備えておく。

そして第五に、「専門性への、敬意」。危機の瞬間、決定権は、役職の“上下”ではなく、その問題に最も詳しい“現場の専門家”へと、移る。役職の低い者でも、現場の事実を、上司への恐れなく、声に出せる。この「率直に言える空気」こそ、五原則すべてを、支える土台です。

―「うまくいっている」ときこそ、空気は緩む

ここに、透明資産経営の、重要な洞察があります。信頼性とは、ワイクの言葉を借りれば、「ダイナミックな“非・出来事”」です。事故が“起きない”という状態は、一度達成すれば終わり、では、ない。それは、絶え間ない警戒によって、日々、能動的に、つくり出し続けなければ、すぐに崩れる。放っておけば——とりわけ、うまくいっているときほど——空気は、油断し、緩んでいくのです。多くの会社が、大きな事故やミスの“後”になって、初めて、慌てる。HROは、その逆です。何も起きていない、平穏な今この瞬間にこそ、小さな綻びに、目を凝らしている。

さあ、あなたの会社の空気は、どちらでしょうか。小さなヒヤリ・ハットや、ささいなクレームを、「たいしたことない」と、流していないでしょうか。それとも、「これは、大事故の予告かもしれない」と、掘り下げているでしょうか。現場の若手が、「これは、おかしいのでは」と、役職の上の者に、恐れずに、言えるでしょうか。それとも、「余計なことを言うな」という空気が、その声を、封じていないでしょうか。うまくいっている“今”、あなたの空気は、張り詰めているでしょうか。それとも、緩んでいるでしょうか。

―「失敗への執着」という空気を、設計する

だから、事故やミスを繰り返さない空気を、意図して、設計してください。第一に、小さな失敗を、歓迎し、掘り下げる仕組みをつくる。ヒヤリ・ハットの報告が、罰ではなく、称賛される空気に、する。第二に、「まあ、大丈夫だろう」という安易な単純化を、許さない。第三に、危機のとき、役職ではなく、専門性に、決定を委ねる。そして何より、現場の一番弱い立場の者が、一番上の者に対しても、事実を、恐れず言える——その「率直さの空気」を、経営者自身が、守り抜くのです。

想像してみてください。あなたの会社が、何も起きていない平穏な日々の中で、小さな綻びを、静かに、確実に、摘み取り続け、その結果、大きな事故もクレームも、「起きない」——その、ダイナミックな“非・出来事”を、実現している様子を。最も危険な現場が、最も安全であるのは、幸運では、ありません。それは、設計された空気の、賜物です。あなたは、事故が起きるのを待って対処する会社と、事故を起こさない空気を設計する会社の、どちらを、経営していますか。

―勝田耕司