こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
―弾痕のない場所に、装甲を張れ
第二次世界大戦中、連合軍の爆撃機が、被弾だらけで帰還していました。軍は、機体のどこに装甲を追加すべきか、検討します。帰ってきた機体を調べると、弾痕は、主翼と胴体に集中し、エンジンや操縦席には、ほとんどなかった。「弾痕の多い、主翼と胴体を、補強しよう」——誰もがそう考えました。
ところが、統計学者アブラハム・ウォルドは、正反対の結論を出します。「装甲を張るべきは、弾痕の“ない”場所——エンジンと操縦席だ」と。なぜか。調べている機体は、すべて「帰ってこられた」機体だけ。エンジンを撃たれた機体は、墜ちて、帰ってこなかった。だから、データに、入っていない。帰還機のエンジンに弾痕がないのは、そこが安全だからではなく、そこを撃たれた機体が、一機も帰ってこなかったからなのです。軍はこの助言を容れ、多くの命が救われました。今日は、あなたが「成功事例」だけを見て、経営を誤っているかもしれない、という話をします。
―教訓は、「見えない失敗」の中にある
これが「生存者バイアス」です。ある選別を「通り抜けたもの」だけを調べ、「ふるい落とされ、消えていったもの」を、見落とす。生き残った成功例は、目に見え、雄弁です。失敗は、沈黙し、消えていく。だから、私たちは、成功例だけを見て、「うまくいく理由」について、歪んだ結論を、下してしまうのです。
ここに、透明資産経営の設計原理があります。あなたは、自社の「生存者」を、研究しています。成功した施策、優良なお客様、残ってくれた社員、勝ち取った案件。そこから、教訓を引き出そうとする。けれど、本当の教訓は、あなたが「見ていないもの」の中に、あるのです。去っていったお客様。辞めていった社員。失注した案件。静かに消えていった、無数の失敗。爆撃機の、本当に大事な弾痕は、帰ってこなかった機体に、あった。だから、良い意思決定の空気を設計するとは、目の前の「生存者」だけでなく、「不在のもの」——解約した客、去った人、負けた案件、失敗——を、意図的に調べる仕組みを、設計することなのです。
さあ、あなたの会社を見てください。あなたは、満足しているお客様に、アンケートを取り、「うちのサービスは good だ」と結論づけていないでしょうか。けれど、最も聞くべき声は、二度と来なくなった、あのお客様の中にある。あなたは、残ってくれた優秀な社員から、「うちの文化は素晴らしい」と聞いて、安心していないでしょうか。けれど、あなたの文化の本当の弱点は、辞めていった人が、去り際に飲み込んだ言葉の中に、ある。成功したベテラン営業のやり方だけを研究して「これが勝ちパターンだ」と決めても、同じことをして失敗し、辞めていった人を見なければ、それが本当に「勝因」なのか、分からない。あなたは、帰ってきた機体の弾痕ばかりを見て、間違った場所に、装甲を張ろうとしているのかもしれないのです。
だから、「不在のもの」を、調べる仕組みを、設計してください。解約したお客様に、なぜ去ったのかを、聞く。辞めた社員に、本音の退職理由を、聞く(在職中には、決して言えなかった真実を)。失注した案件を、勝った案件と同じ熱量で、分析する。うまくいった事例を並べて「成功の法則」を語る前に、まったく同じことをして、消えていった失敗はないかを、探す。想像してみてください。あなたが、生存者の声だけでなく、沈黙した失敗の声を、聞き始めたとき——これまで見えなかった、本当の弱点と、本当の勝因が、初めて、姿を現す様子を。
成功例は、目に見え、心地よい。だからこそ、危険です。あなたの会社の運命を左右する教訓は、しばしば、あなたが「見ていないもの」——帰ってこなかった機体——の中に、隠れている。だから、生存者だけを見て、結論を出すのを、やめてください。去った者、負けた案件、消えた失敗を、調べる空気を、設計するのです。装甲を張るべきは、弾痕の“ない”場所なのですから。
―勝田耕司
