こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
―なぜ、電話番号は「7桁」だったのか
1956年、心理学者ジョージ・ミラーが、心理学史上、最も引用される論文の一つを発表しました。その題は、「マジカルナンバー7±2」。彼が見出したのは、人間が、一度に、頭(短期記憶)に保持できる情報の「かたまり(チャンク)」は、およそ7個——多くて9個、少なくて5個——しかない、という事実でした。かつて電話番号が7桁だったのは、このためだと言われます。
その後の研究は、この数を、さらに下方修正しました。本当の限界は、およそ「4個」に近い、と。つまり、人の頭に一度に入るのは、たった数個。これは、動かしがたい、小さな「ボトルネック(隘路)」なのです。今日は、あなたが「多く伝える」ほど、なぜ、社員の頭に何も残らないのか——そして、その小さな窓に合わせて、伝え方と仕組みを設計する話を、お伝えします。
―「かたまり」にすれば、窓は広がる
救いも、あります。「チャンキング(かたまり化)」——バラバラの情報を、意味のあるまとまりに、束ねること。これで、窓は、実質的に広がります。チェスの名人は、盤上に、32個の駒を見るのではない。見慣れた「配置のかたまり」を、いくつか見る。熟練とは、より大きなかたまりを作れること、なのです。そして、この限界は「思い出す(再生)」ときのもの。人は、思い出せる数より、はるかに多くを「見て分かる(再認)」ことが、できます。
ここに、透明資産経営の設計原理があります。あなたは、社員の頭に、無限の容量があるかのように、伝え、仕組みを作っています。なぜなら、「あなたの」頭は、その情報で、いっぱいだから。けれど、受け取る側の窓は、たった数個。だから、あなたが、12ステップの手順を、9個の依頼が並んだメールを、12個の優先事項を、15議題の会議を、渡すとき——その全部は、入りません。ボトルネックから溢れ、溢れたものは、失われる。忘れられた手順、見落とされた指示、ミス、あるいは麻痺として。明快さと信頼性の空気は、「より多く言う(網羅)」ことでは、生まれない。それは、メッセージを、ボトルネックに「合わせて」設計すること——かたまりにし、簡素にし、数個に絞ること——で、生まれるのです。あなたは、社員の短期記憶を、大きくしろと念じることは、できません。あなたにできるのは、渡すものを、その実際の大きさに、合わせて設計することだけなのです。
さあ、あなたが社員に手渡すものを、見てください。15ステップの手順。9つの依頼が詰まったメール。12の優先事項を掲げた戦略。すべてを網羅する会議。あなたは、丁寧なつもりです。けれど、あなたは、ボトルネックを溢れさせている。そして、その溢れこそが、あなたのミス、忘れられたフォロー、「なぜXをやらなかったんだ」の、出どころなのです。社員が、気にかけていないのでも、覚えられないのでもない。あなたが、どんな人間の頭にも収まらない量を、手渡したのです。そして、「全部、伝えたのに」と言うとき——それこそが、問題なのです。あなたは、収まる以上を、伝えた。ボトルネックを越えた「網羅」は、「何も言わない」のと、同じ。全部、床にこぼれ落ちるのですから。
だから、その小さな窓に、合わせて設計してください。かたまりにする——関連する項目を、いくつかの意味あるまとまり(15個ではなく、3〜5個)に、束ねる。絞る——すべてではなく、大切な数個を、名指しする。手順を、本質的なステップだけに簡素化し、どうしても長いなら、「思い出す」のではなく「見て分かる」形にする(暗記させるリストではなく、読むチェックリストに)。より少なく言い、より多く、入れる。想像してみてください。あなたの指示が、実際に届き、あなたの手順が、実際に守られる様子を。あなたが、ついに、渡すものを、それを保持する頭の大きさに、合わせたから、です。
人の頭は、一度に、ほんの数個しか、保持できません。そして、あなたの丁寧さは、その事実を、変えません。だから、明快さとは、「どれだけ言うか」では、ない。「どれだけ収まるか」です。伝え方と仕組みを、社員が実際に持つ、その小さな窓に、合わせて設計してください。そうすれば、彼らは、覚え、動く。溢れさせれば、数個を越えたすべては、音もなく、床に落ちる。より少なく言い、「7」に合わせて、設計するのです。
―勝田耕司