『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「やる気を出せ」ではなく、「やる気の出る仕事」を設計する

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―熟練するほど、やる気を失っていった工員たち

組織心理学者のリチャード・ハックマンとグレッグ・オルダムは、工場労働者を研究したとき、当然の仮説を立てていました。「経験を積むほど、人は熟練し、生産性が上がるはずだ」と。ところが、観察された現実は、逆でした。経験を積んだ工員は、生産性を上げるどころか、退屈し、興味を失っていったのです。

彼らは、気づきました。問題は、工員ではない。「仕事の設計」だ、と。仕事そのものが、退屈になるように設計されていた。そして彼らは、「仕事の設計」こそが、やる気を決める、という結論にたどり着きます。今日は、あなたが「やる気を出せ」と号令をかける、その相手の「やる気」が、実は、あなたが設計した「仕事」の中に、すでに組み込まれている(あるいは、そこから抜き取られている)、という話をします。

―「自律」と「フィードバック」は、ゼロなら、すべてをゼロにする

ハックマンとオルダムは、やる気の出る仕事の「五つの核」を、特定しました。第一に、多様な技能を使うか。第二に、断片ではなく、「まるごと一つの、目に見える仕事」を完成させられるか。第三に、その仕事が、誰かにとって重要か。第四に、やり方や進め方に、「自律(裁量)」があるか。第五に、自分の出来について、「フィードバック」があるか。この五つが、「意味」と「責任」と「結果の実感」を生み、内発的なやる気を、生む。

そして、彼らが導いた計算式には、恐ろしい真実が隠されていました。「自律」と「フィードバック」は、掛け算の項なのです。仕事がどれほど多様で、意味深くても、「自律」がゼロなら(=すべてを細かく管理されているなら)、あるいは「フィードバック」がゼロなら(=暗闇の中で働かされているなら)、やる気の総和は、ゼロに、崩れ落ちる。他の項では、埋め合わせが、きかないのです。

ここに、透明資産経営の設計原理があります。あなたは、人を「やる気にさせよう」とし続けています。スピーチ、報奨、「全力を出せ」。けれど、やる気は、主に「人」の中にあるのでは、ありません。それは、「仕事の設計」の中に、あるのです。よく設計された仕事は、同じ人を、やる気にさせ、まずく設計された仕事は、同じ人を、退屈させる。だから、意欲の空気は、号令で呼び出すものではない。それは、仕事の中に「設計」するもの——断片ではなく、まるごと一つの仕事を与え、その仕事が誰かの役に立つことを見せ、やり方に本物の裁量を与え、結果に本物のフィードバックを返すことで。そして、あの二つの掛け算の項を、決して、ゼロにしないこと。どれほど意味ある仕事でも、自律を抜き取れば(細かく管理すれば)、フィードバックを抜き取れば(暗闇に置けば)、やる気は、ゼロになる。あなたは、やる気を抜き取るように設計した仕事を、号令では、埋め合わせられないのです。

さあ、あなたが設計した仕事を、見てください。社員は、断片を(全体の、ほんの一切れを、決して「これをやり遂げた」と指させないものを)、やっていないでしょうか。自分の仕事が、誰の役に立つのか、見えているでしょうか。本物の裁量が、あるでしょうか——それとも、あなたが、あらゆる「やり方」を、細かく管理していないでしょうか。フィードバックが、あるでしょうか——それとも、暗闇の中で、うまくやれたのかも分からないまま、働いていないでしょうか。もし、あなたが、自律とフィードバック(掛け算の項)を抜き取ったなら、あなたは、やる気の潜在力がゼロの仕事を、設計しておきながら、やる気のなさを、社員のせいにしているのです。あなたの最も有能な社員は、断片的で、裁量もフィードバックもない仕事の中で、経験とともに、やる気を増すのではなく、退屈し、去っていく。あなたが見ている「やる気のなさ」は、あなたが「設計」したものなのです。

だから、人ではなく、「仕事」を、設計し直してください。まるごと一つの、その人が最初から最後まで所有できる仕事を、与える。その仕事が助ける相手と、目に見える形で、つなぐ。裁量を返す——「やり方」を手渡し、細かい管理を、やめる。そして、フィードバックを組み込む——即座の、明確な、出来ばえの信号を。とりわけ、あの二つの掛け算の項を守る。自律とフィードバックを、決して、ゼロにしない。想像してみてください。同じ「やる気のない」社員が、身を乗り出している様子を。あなたが、ついに、身を乗り出すに値する仕事を、与えたから、です。

やる気を殺すように設計された仕事に、号令で、やる気を注ぎ込むことは、できません。やる気は、あなたが説く「気質」ではない。それは、あなたが「設計」する——仕事そのものの中に——「結果」なのです。だから、また「全力を出せ」と説く前に、あなたが手渡したその仕事を見て、問うてください。まるごとの仕事、本物の裁量、本物のフィードバックは、あるか。それとも、私は、やる気を、設計から抜き取ってしまったか、と。仕事を設計すれば、やる気は、おのずと、そこに宿るのです。

―勝田耕司