こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
「お客様を、大切にしなさい」「誠実であれ」「挑戦を、恐れるな」。——経営者は、社員に、望ましい行動を、言葉で、説きます。理念に掲げ、朝礼で語り、研修で教える。ところが、その言葉どおりに、社員が動くことは、驚くほど、少ない。なぜでしょうか。実は、人は、「言われたこと」で、行動を学ぶのでは、ありません。人は、「見たこと」——とりわけ、力を持つ者の、振る舞いを、見て、真似て、学ぶのです。だから、あなたが、何を「言うか」より、何を「するか」が、会社の空気を、作っている。今日は、空気を作る、最も強力な力——「モデリング(手本)」について、お話しします。
―子どもは、見たとおりに、振る舞った
心理学者アルバート・バンデューラが、1961年に行った、極めて有名な実験があります。「ボボ人形実験」です。彼は、幼い子どもたちを、二つのグループに分けました。一方のグループの子どもには、大人が、「ボボ人形」という、大きな空気人形を、乱暴に、叩き、蹴り、怒鳴りつける様子を、見せます。もう一方には、見せません。
その後、子どもたちを、一人ずつ、同じボボ人形のある部屋に、入れ、観察しました。すると——大人が乱暴にするのを「見た」子どもたちは、自分も、その人形を、叩き、蹴り、怒鳴りつけた。見ていない子より、はるかに、攻撃的に、振る舞ったのです。しかも、ここが、決定的です。子どもたちは、そう振る舞ったことで、何の「ご褒美」も、もらっていません。叩けと、命じられても、いません。ただ、大人が、そうするのを「見た」だけ。それだけで、子どもは、その行動を、学び、真似たのです。
バンデューラは、これを「社会的学習(観察学習)」と、名づけました。人は、自分が、報酬や罰を、直接受けなくても、ただ「他者を観察する」だけで、行動を、学び、模倣する。この発見は、「学習には、本人への、報酬や罰が必要だ」という、当時の常識を、覆しました。
―最も強力な「手本」は、あなた自身である
バンデューラは、さらに、重要なことを、突き止めました。人は、誰の行動でも、等しく真似るわけでは、ない。「地位の高い、力を持った、尊敬する人物」の行動ほど、強く、真似る。——会社において、それは、誰でしょうか。経営者である、あなたです。あなたは、社員にとって、最も強力な「手本(モデル)」なのです。
ここに、透明資産経営の、核心があります。あなたが、いくら「お客様を、大切に」と、言葉で、説いても——あなた自身が、お客様を、ぞんざいに扱っているのを、社員が「見て」いれば、社員は、あなたの「言葉」ではなく、あなたの「行動」を、学びます。あなたが、いくら「誠実であれ」と、唱えても、あなた自身が、ずるや、ごまかしをしているのを、社員が「見て」いれば、社員は、ずるを、学ぶ。あなたが、いくら「挑戦を、恐れるな」と、鼓舞しても、あなた自身が、失敗を恐れ、無難ばかりを選んでいるのを、社員が「見て」いれば、社員は、挑戦しないことを、学ぶのです。会社の空気とは、経営者の「言葉」ではなく、経営者の「背中(行動)」が、日々、社員に、教え込んでいるもの、なのです。
―人は、「報われている行動」を、真似る
バンデューラは、もう一つ、鋭い指摘をしました。「代理強化」です。人は、他者が、ある行動で「報われている」のを見ると、その行動を、真似たくなる。逆に、「罰せられている」のを見ると、真似なくなる。
これも、空気を、強力に、形づくります。あなたの会社で、どんな行動が、「報われている」ように、見えているでしょうか。たとえば——誠実に、正直に、報告した社員が、叱られ、都合の悪いことを隠した社員が、お咎めなしなら、社員は、「隠すことが、報われる」と、学ぶ。数字のために、手段を選ばない社員が、昇進していれば、社員は、「手段を選ばないことが、報われる」と、学ぶ。社員は、あなたが「称える行動」と「罰する行動」を、じっと見て、何が、この会社で「報われる」のかを、学び、それを、真似るのです。
さあ、あなた自身を、振り返ってください。あなたは、社員に説いている通りの行動を、自ら、実践しているでしょうか。あなたの「言葉」と「背中」は、一致しているでしょうか。そして、あなたの会社で、「報われている」ように見える行動は、あなたが、本当に、根づかせたい行動と、一致しているでしょうか。
―「生きた手本」になる空気を、設計する
だから、空気を設計するとは——結局のところ、経営者である、あなた自身が、望む行動の「生きた手本(モデル)」に、なることなのです。第一に、社員に説くことを、まず、あなた自身が、実践する。「言葉」ではなく、「背中」で、示す。お客様を大切にしてほしいなら、あなたが、誰よりも、お客様を大切にする。第二に、「報われる行動」を、設計する。あなたが、本当に根づかせたい行動を、公に、称え、報い、望ましくない行動が、「得をする」ことの、ないようにする。社員は、それを見て、何を真似るべきかを、学ぶのですから。
想像してみてください。あなたが、「言葉」で説くのをやめ、「背中」で示し始めたとき——社員が、あなたの立派な行動を、見て、真似て、会社全体が、その行動で、満たされていく様子を。それは、あなたが、上手に、説教したからでは、ありません。あなたが、望む行動の「生きた手本」に、なったから、です。社員は、あなたの言葉を、聞いては、いません。あなたの、背中を、見ています。あなたの背中は、社員に、何を、教えていますか。
―勝田耕司