『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】燃え尽きは、「心の弱さ」ではない――空気の“6つのミスマッチ”が、人を焼き尽くす

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

かつて、生き生きと働いていた、優秀な社員が、ある日から、精彩を欠き、やがて、疲れ果て、心を閉ざし、そして、辞めていく。——「燃え尽き(バーンアウト)」です。多くの経営者は、これを、「あの人は、メンタルが弱かった」「自己管理が、できなかった」と、個人の問題として、片づけます。だから、対策も、「もっと、休め」「自分で、ストレスを管理しろ」と、個人に、委ねる。ところが、燃え尽き研究の世界的第一人者は、こう断言します。燃え尽きは、個人の弱さでは、ない。それは、組織の「空気」が、生み出す、構造的な現象なのだ、と。今日は、人を焼き尽くす空気の、正体について、お話しします。

―燃え尽きの、三つの症状

その第一人者、カリフォルニア大学バークレー校のクリスティーナ・マスラックは、数十年の研究で、燃え尽きを、三つの症状として、定義しました。第一に、「情緒的な消耗(エグゾースチョン)」。エネルギーが、枯れ果て、疲れ切った状態。第二に、「シニシズム(冷笑・脱人格化)」。仕事や、関わる人々から、心理的に、距離を取り、冷め、投げやりになる状態。そして第三に、「有能感の低下」。「自分は、役に立っていない」「何も、成し遂げられない」という、無力感です。

マスラックは、この三つが、順に進行することを、突き止めました。まず、消耗が、来る。そして、その消耗に耐えるための、防衛反応として、シニシズム——「どうでもいい」という心の壁が、生まれる。最後に、関わりを失った結果、有能感が、失われていく。これが、燃え尽きの、「滑り落ちる坂道」です。けれど、これらは、あくまで「症状」。問題は、その「原因」が、どこにあるか、です。

―人を焼き尽くす、「6つのミスマッチ」

ここが、マスラックの、最も重要な貢献です。彼女は、燃え尽きの原因が、個人の性格では、なく、「人と、職場環境(空気)との、ミスマッチ」にあることを、突き止めました。そして、そのミスマッチが起きる、6つの領域を、特定したのです。

第一に、「仕事量」。要求が、capacity(能力・資源)を、慢性的に超えている。これが、消耗を、直接、生みます。第二に、「裁量」。自分の仕事に対する、コントロールや、選択の余地が、ない。第三に、「報酬」。働きに見合う、承認と報酬——金銭的だけでなく、社会的な承認(「ありがとう」「よくやった」)が、不足している。これは、「自分も、仕事も、軽んじられている」という感覚を生み、無力感に、直結します。第四に、「つながり(コミュニティ)」。職場に、支え合う、良好な人間関係がない。孤立や、対立がある。第五に、「公平」。評価や、扱いに、不公平が、ある。マスラックは、不公平が、深いシニシズム(冷め)を、生むと指摘します。そして第六に、「価値観」。自分が大切にする価値観と、会社が求めることとの間に、食い違いがある。本心では、おかしいと思うことを、やらされる。

この6つの領域で、ミスマッチが、「3つ以上」重なると、燃え尽きは、確実に、起きる。つまり、この6つは、燃え尽きを診断する、「設計図」なのです。症状(三つ)を見るのではなく、原因(6つのミスマッチ)を、見る。

―「自己管理しろ」は、誤診である

ここに、透明資産経営の、重い教訓があります。社員が燃え尽きたとき、「メンタルが弱い」「自己管理しろ」と、個人のせいにするのは——誤診です。なぜなら、燃え尽きの原因は、個人の内側ではなく、その人を取り巻く、6つの領域の「空気のミスマッチ」に、あるからです。どれほど強い人でも、過大な仕事量、裁量のなさ、承認の欠如、孤立、不公平、価値観の衝突——この6つのミスマッチが重なる空気の中では、焼き尽くされる。逆に言えば、燃え尽きは、個人のケアでは、根本的には、直りません。空気の、ミスマッチを、直すことでしか。

さあ、あなたの会社の空気を、この6つの物差しで、診断してください。社員の仕事量は、持続可能でしょうか(仕事量)。自分の仕事に、裁量が、あるでしょうか(裁量)。働きが、きちんと、承認されているでしょうか(報酬)。支え合う、つながりが、あるでしょうか(つながり)。評価や扱いは、公平でしょうか(公平)。そして、会社が求めることは、社員の価値観と、食い違っていないでしょうか(価値観)。あなたの、燃え尽きかけている社員は、この6つの、どこで、ミスマッチを、抱えているでしょうか。

―「6つのミスマッチ」を、空気で直す

だから、燃え尽きを、空気の設計で、防いでください。「自己管理しろ」と個人に委ねるのを、やめ、6つの領域を、一つずつ、点検し、ミスマッチを、直すのです。仕事量が過大なら、減らす、あるいは資源を足す。裁量がないなら、任せる。承認が足りないなら、「ありがとう」を、仕組みにする。孤立しているなら、つながりの場を、つくる。不公平があるなら、基準を、透明にする。価値観が衝突しているなら、向き合い、すり合わせる。これは、個人への「治療」ではなく、空気への「設計」です。

想像してみてください。あなたの会社の、優秀な社員が、焼き尽くされることなく、6つの領域が、よく整えられた空気の中で、長く、生き生きと、力を発揮し続けている様子を。それは、彼らが、強かったからでは、ありません。あなたが、人を焼き尽くす6つのミスマッチを、空気の設計で、取り除いたから、です。燃え尽きは、心の弱さでは、ありません。それは、空気の、設計ミスなのです。あなたは、社員を、個人の責任に、委ねていますか。それとも、6つのミスマッチを、設計で、直していますか。

―勝田耕司