『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】暖房を強める前に、窓が開いていないか――「前提」を問い直す空気を設計する

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―寒いから、暖房を強める。だが、なぜ寒いのか

部屋が寒い。だから、サーモスタットが、暖房を、強める。これが「シングルループ学習」です。組織心理学者クリス・アージリスが、ドナルド・ショーンとともに提唱した概念です。問題(寒さ)を検知し、既存のやり方(暖房)の中で、修正する。目標や前提そのものは、問い直さない。

一方、「ダブルループ学習」は、こう問います。「そもそも、なぜ寒いのか。窓が開いているのではないか。設定温度が、そもそも間違っているのではないか。街路を暖めているのではないか」と。つまり、行動を修正するだけでなく、その行動を支配している「前提・方針・目標」そのものを、問い直す。シングルループは「やること」を直し、ダブルループは「考え方」を問う。今日は、あなたの会社で、同じ問題が繰り返されるとき、あなたが「暖房を強める」ことばかりして、「窓が開いていないか」を、一度も問うていないかもしれない、という話をします。

―賢い組織が学べないのは、「防衛」が働くから

アージリスは、恐ろしいことを発見しました。賢い組織ほど、しばしば、学べない。なぜか。「防衛的な習慣」が働くからです。前提を問い直すことは、その前提(しばしば、経営者自身のもの)が、間違っていたと、認めることを意味する。それは、恥や、脅威を伴う。だから、人は、無意識に、それを避ける。結果、「教訓」は、戦術(やること)を変えるだけで、根底の信念には、決して触れない。だから、同じ問題が、手を変え品を変え、繰り返されるのです。窓を開けたまま、暖房を強め続けるように。

ここに、透明資産経営の設計原理があります。あなたの会社で、何かがうまくいかないとき、あなたと社員は、シングルループ学習をしていないでしょうか。目の前のミスを直し、戦術を調整し、「次はもっと頑張る」。けれど、そのミスの背後にある「支配的な前提」を、一度も、問い直さない。だから、同じ問題が、再発する。そして、あなたがシングルループに留まる理由は、「防衛」です。支配的な前提を問うことは、その前提(多くは、あなたが決めたもの)が誤っていたと認めることであり、脅威だから、全員が、静かに、それを避ける。本物の学びの空気を設計するとは、ダブルループの問いを、設計することなのです——前提を、明示し、検証可能にし、そして、支配的な信念(とりわけ、経営者自身のもの)を問うことが、安全な空気を、つくることです。

さあ、あなたの会社で、繰り返される問題を、思い浮かべてください。あなたは、それが起きるたびに、「暖房を強めて」いないでしょうか。担当者を叱り、手順を微調整し、「気を引き締めろ」と。けれど、その問題を生んでいる「前提」——「この市場では、こうするものだ」「うちの強みは、これだ」「顧客は、これを求めている」——を、一度でも、疑ったでしょうか。もし、その前提が、もう間違っているなら(窓が、開いているなら)、あなたがどれだけ暖房を強めても、部屋は、決して暖まりません。そして、その前提を疑わないのは、それを立てたのが、あなた自身であり、それが間違っていたと認めるのが、痛いから、かもしれないのです。

だから、ダブルループの空気を、設計してください。問題が再発したら、「どう直すか」の前に、「この問題を生んでいる、私たちの“前提”は何か。その前提は、まだ正しいのか」と、問う。前提を、口に出し、机の上に載せ、全員で、検証可能なものとして、吟味する。そして、あなた自身の前提が疑われることを、脅威ではなく、学びとして、歓迎する。想像してみてください。何年も繰り返してきた問題が、たった一つの「前提」の問い直しで、根本から、消えていく様子を。あなたが、暖房を強めるのをやめ、開いていた窓を、閉めたから、です。

同じ問題が繰り返すとき、それは、あなたが、間違った前提の上で、暖房を強め続けているサインかもしれません。学びとは、やることを直すことではなく、考え方を問い直すこと。だから、次に問題が起きたら、暖房のつまみに手を伸ばす前に、部屋を見回してください。どこかで、窓が、開いていないか。あなたが、疑うことを避けてきた「前提」こそ、その、開いた窓なのです。

―勝田耕司