『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】仕事は、与えた時間を、埋め尽くすまで膨らむ――締切と議題を、設計する

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―一週間与えれば、一週間かかる

ある仕事に、一週間の期限を与えると、それは、きっちり一週間かかります。まったく同じ仕事に、二週間の期限を与えると——それは、二週間かかる。二日で終わるはずの仕事が、一日与えれば一日を、一週間与えれば一週間を、埋め尽くすまで、膨らんでいく。

これが、イギリスの歴史学者C・ノースコート・パーキンソンが、1955年に、経済誌『エコノミスト』の風刺エッセイで示した「パーキンソンの法則」です。「仕事は、その完成のために与えられた時間を、埋め尽くすまで膨らむ」。今日は、あなたの会社の「集中」と「緊張感」という空気が、社員の規律ではなく、あなたが与える「時間」と「議題」の設計で決まっている、という話をします。

―そして、議論は、いちばんどうでもいいことに、吸い寄せられる

これは、社員が怠け者だから、では、ありません。緩い締切、曖昧な「完了の定義」、余った時間があると、仕事は膨らみ、会議は延び、決定は先延ばしになる——それが、人間の、いわば物理法則なのです。

パーキンソンは、もう一つ、恐ろしい法則を見つけました。「凡俗法則(トリビアリティの法則)」、通称「自転車置き場の議論(バイクシェッディング)」です。彼は、こんな委員会を描きます。ある委員会が、三つの議題を扱う。一つ目は、巨額の「原子力発電所」の建設。二つ目は、ささやかな「自転車置き場」の建設。三つ目は、会議で出す「コーヒー代」の予算。さて、委員会は、どれに、最も時間を費やしたか。原子力発電所は——数分で、承認されました。あまりに複雑で、専門知識のない者は、無知をさらすのが怖くて、口を出せないからです。ところが、自転車置き場は、誰もが、その姿を思い浮かべられ、意見を言える。だから、その材質をめぐって、延々と議論が続いた。そして、コーヒー代に至っては、全員が理解できるがゆえに、最も長く、紛糾した。議論は、重要さとは無関係に、「誰もが口を出せる、身近で些細なこと」へと、吸い寄せられていくのです。

ここに、透明資産経営の設計原理があります。あなたは、集中と緊張感は、社員の規律や、やる気から生まれると、信じている。けれど、仕事は膨らみ、注意は些細なことへ逸れていく——初期設定で、放っておけば、必ず。それは、性格ではなく、物理です。設計されなければ、仕事は、与えられた時間を埋め尽くし、会議は、その枠を埋め尽くし、議論は、原子力発電所を素通りして、自転車置き場に流れていく。だから、「集中」という空気は、あなたが「もっと効率的に!」と号令して引き出すものでは、ありません。それは、あなたが「設計」するもの——「容れ物(きつく、本物の締切)」と、「議題(重要なことに注意を強いる構造)」を、設計することで、生まれるのです。時間と注意を設計すれば、集中は、ついてくる。放置すれば、膨張と凡俗が、毎回、勝つ。

さあ、あなたの締切と、会議を、見てください。あなたは、「念のため」と、ゆとりのある、曖昧な期限を与え、そして、仕事が、そのすべての日を、一日も速くならず、一つも良くならずに、食い尽くしていくのを、眺めていないでしょうか。会議は、議題に関係なく、決められた一時間を、まるまる使い切っていないでしょうか。そして、エネルギーがどこへ行くかを、見てください。大きく、難しく、重要な決定は、五分で、追認される(誰も、無知に見られたくないから)。その一方で、ロゴの色、メールの文言、事務所のお菓子——自転車置き場に、四十分が、燃やされていく。あなたは、生産性の問題だ、規律の問題だ、と思っている。違います。設計の問題です。あなたが、時間と注意を、設計せずに放置したから、パーキンソンが、あなたの会社を、経営しているのです。

だから、「容れ物」と「議題」を、設計してください。締切を、きつく、本物に(心地よいと感じるより、短く)設定し、そこから逆算して、プロセスを組む——仕事を、会議を、決定を、時間で区切る。そして、決定には、その「重要さ」にふさわしい時間を与え、その「身近さ」が引き寄せる時間を、与えない——原子力発電所を、議題の先頭に置き、自転車置き場は、時間を区切るか、委員会ではなく、一人の担当者に委ねる。重要で難しいものと、些細で簡単なものを、切り分け、前者を、守る。想像してみてください。仕事が、本当に必要な時間で終わり、会議のエネルギーが、自転車置き場ではなく、原子力発電所に注がれる様子を。あなたが、規律に期待するのをやめ、容れ物を、設計したから、です。

仕事は、あなたが与える時間を、埋め尽くすまで膨らみ、注意は、あなたが守らない限り、些細なことへと縮んでいく——設計しなければ。集中は、あなたが説く「美徳」では、ありません。それは、あなたが築く「容れ物」なのです。だから、次に、ゆとりある締切や、終わりの見えない会議の前に、問うてください。「私は、これに、どんな容れ物を与えているか。そして、エネルギーは、原子力発電所に向かっているか、それとも、自転車置き場か」と。時間と、注意を、設計するのです。パーキンソンは、いつも、部屋の中にいます。問題は、あなたが、彼を、設計で締め出したかどうか、だけなのです。

―勝田耕司