こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。 透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
―「説明会に来てくれた学生が、内定を辞退していく」
新卒採用に力を入れている中小企業の経営者から、近年とりわけ多く聞く悩みがあります。「合同説明会に出展して、そこそこ学生が来てくれる。個別説明会も開いて、興味を持ってくれる学生もいる。選考を進めて、内定を出す。でも、入社直前になって辞退される。
あるいは、せっかく入社してくれても1年以内に辞めていく。採用に毎年多大なコストと時間をかけているのに、手元に残らない」この悩みの構造を分析すると、ほぼ例外なく同じ問題が浮かび上がります。「採用活動で見せている会社の顔」と「実際の職場の空気」の間に、ギャップがある——。
学生は賢くなっています。企業の口コミサイト、OB・OG訪問、インターンシップでの体験、SNSでの情報収集——さまざまな経路から「実際のその会社の空気」を感じ取ろうとします。説明会でどれだけ美しいビジョンを語っても、インターンシップで感じた職場の空気、OB訪問で感じた社員の表情、採用担当者の言葉の温度感——これらの「空気の総体」が、学生の「この会社に入りたいか」という判断を決定します。
―Z世代の学生が「何で会社を選ぶか」
現在の就職活動市場に向き合う学生——いわゆるZ世代——は、会社選びにおいて過去の世代とは異なる判断基準を持っています。
マイナビが毎年実施している「大学生就職意識調査」(2024年版)では、学生が就職先企業を選ぶ際に最も重視する要素として「自分の成長につながる仕事ができる」「社員の雰囲気が良い」「働きやすい環境がある」が上位を占め続けています。
一方で、「給与が高い」「知名度が高い」「安定している」という従来型の選択基準の優先度は相対的に低下しています。「社員の雰囲気が良い」——この言葉が意味するのは、まさに職場の「空気感」です。
Z世代の学生は、幼少期からSNSを通じて多様な生き方・働き方を見てきています。「会社に入ったら我慢するのが当たり前」「仕事はつらくて当然」という価値観を持っていない。だからこそ、「この会社の空気の中で、自分はイキイキと働けるか」という問いを、会社選びの中心に置きます。給与や福利厚生は「比較できる条件」です。しかし空気感は「比較できない感覚」です。そしてZ世代の学生が最終的に「この会社にする」と決断するとき、多くの場合、この「比較できない感覚」が決め手になっています。
―採用のあらゆる「接点」が空気を伝える
学生が会社の空気を感じ取る接点は、会社説明会だけではありません。採用プロセスのすべての接点が、「この会社はどんな空気の会社か」を伝えています。採用サイトの文体と写真が伝える空気。エントリー後に送られてくるメールの温度感。説明会の会場の雰囲気と担当者の表情。面接官の質問の内容と聞き方。面接後のフィードバックや連絡の速さと丁寧さ。内定後のフォローの頻度と内容——。これらのひとつひとつが「この会社の空気」として学生の記憶に積み重なっていきます。
特に注目すべきは「面接の空気」です。面接は、会社が学生を評価する場であると同時に、学生が会社を評価する場でもあります。面接官が学生の話を真剣に聞いているか、学生の個性や考え方に本物の関心を示しているか、質問が「落とすための質問」なのか「知りたいという好奇心からの質問」なのか——
これらすべてが、学生に「この会社の空気」を伝えます。「あの面接官の話し方が好きだった」「面接が終わった後、なんか温かい気持ちになった」——こうした感覚が、最終的な入社決定に強く影響します。
―「インターンシップ」は空気の最大の発信機会
近年、採用において「インターンシップ」の重要性が急速に高まっています。2025年卒採用からは、一定の条件を満たしたインターンシップが選考に活用できるようになったことも背景にあります。しかしインターンシップの本当の価値は、「優秀な学生を早期に囲い込む」ことよりも、「自社の空気を学生に直接体験させる機会」にあります。
インターンシップで学生が体験するのは、業務の内容だけではありません。社員が仕事をするときの表情、社員同士の会話のトーン、ランチの場での自然な笑い声、困ったときに先輩が声をかけてくれるかどうか——こうした「日常の空気」を、学生は敏感に感じ取ります。
「インターンシップに来た学生が、口コミで仲間を連れてくる」「インターンシップ参加者の内定承諾率が著しく高い」——こうした現象が起きている会社には、共通して「見せても恥ずかしくない、誇れる日常の空気」があります。インターンシップは「採用のためのイベント」ではありません。「自社の本物の空気を体験させる機会」として設計したとき、初めてその価値が最大化されます。
―「採用担当者の空気」が会社を代表する
採用活動において、学生と最も多く接触するのは採用担当者です。この採用担当者が発する空気が、学生にとっての「この会社の空気」の第一印象を決定づけます。採用担当者が、仕事に誇りを持ち、自社のことを本気で好きで、学生に対して本物の関心を持っているかどうか——この空気は、どれだけ言葉を取り繕っても隠せません。
逆に、採用担当者が「ノルマを達成しなければならない」という焦りから学生に接しているとき、その焦りの空気は学生に伝わります。「この会社の人たちは、なんか必死すぎる」「なんか押し付けられている感じがする」——こうした感覚が、優秀な学生ほど敏感に感じ取り、辞退という形で現れます。
採用担当者を「採用のプロ」として育てることは重要ですが、それ以上に重要なのは「採用担当者が自社の空気に誇りを持てる状態にあること」です。採用担当者が自社を心から好きで、「この会社に来てほしい」という純粋な気持ちから学生に接するとき、その空気は言葉以上に強く伝わります。
―「社員全員が採用担当者」という空気
新卒採用で強い会社には、「採用は採用担当者だけの仕事ではない」という空気が根付いています。社員全員が「この会社の良さを伝えるアンバサダー」として機能している会社では、採用活動は採用部門の業務を超えた、組織全体の文化として機能します。
社員がSNSで日常の仕事の様子を自然に発信する。OB・OG訪問を受けた社員が、本音で会社の良さを語る。インターンシップで学生と関わった社員が「あの学生、良かったな」と採用担当者に自然に話す——こうした「全員参加の採用文化」が生まれるとき、会社の空気は採用市場に自然に広がっていきます。
株式会社サイボウズは、社員全員が採用アンバサダーとして機能している企業として知られています。「100人いれば100通りの働き方」という文化が社員に深く浸透しているため、社員が自分の言葉で「サイボウズで働くことの意味」を語ることができます。この多様で本物の語りが、就職活動中の学生に「この会社は言っていることと実態が一致している」という信頼感を与え、採用力の強さにつながっています。
―「内定後」の空気設計が入社率を決める
内定を出した後、入社までの期間の空気設計が、内定辞退率を大きく左右します。多くの会社は、内定を出した後の関係構築を「内定者懇親会」や「近況報告メール」程度にとどめています。しかしこの期間は、学生にとって「本当にこの会社でいいのか」を何度も問い直す期間でもあります。
内定後に「孤立した学生」は、他社の内定者コミュニティの活発な雰囲気と比較して、「やはり別の会社の方が良かったかもしれない」という感覚を持ちやすくなります。逆に、内定後も会社との接点が豊かで、「すでにこの会社の一員になりつつある」という感覚を持てる学生は、入社への意欲が高まり続けます。
内定者に対して、社員との自然な交流機会をつくる。入社前から会社のプロジェクトに関わる機会を提供する。先輩社員がメンターとして個別に関係を築く——これらは「入社前からの空気への参加」を促す設計です。この設計の質が、内定承諾率を高め、入社後の早期定着率を高め、採用投資の回収率を最大化します。
―「採用で選ばれる会社」の空気は、今日からつくれる
もし今日、就職活動中の学生があなたの会社を一日体験したとして、その学生は「ここで働きたい」と感じるでしょうか?その答えを決めるのは、会社説明会の資料でも、採用サイトのデザインでも、福利厚生の充実度でもありません。その一日に感じた「空気」です。
社員が活き活きと仕事をしているか。互いに声をかけ合っているか。困ったときに助け合う文化があるか。仕事に誇りを持っている社員がいるか——。「採用で選ばれる会社」は、採用活動を頑張ることで生まれるのではありません。「選ばれたくなる空気」を日常の職場につくることで生まれます。
その空気は、採用シーズンに急につくれるものではありません。日々の職場の空気の設計の積み重ねが、採用市場における会社の評判となり、「あの会社で働きたい」という声を生み出していきます。
採用の競争力は、空気から生まれます。そしてその空気は、今日から意図的につくり始めることができます。
―勝田耕司
