こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
会社の空気を、変えたい。古い慣習を、改めたい。新しいやり方を、根づかせたい。——そう決意した経営者が、たいてい、やることは、同じです。「もっと、強く、推し進める」。号令を強め、プレッシャーをかけ、「変われ」「やれ」と、押す。ところが、押せば押すほど、現場は、なぜか、重くなり、抵抗が、強まる。変化は、進まない。なぜでしょうか。変化を科学した、一人の偉大な心理学者が、その答えと、まったく逆の処方箋を、示してくれています。今日は、空気を、本当に変えるための、力学について、お話しします。
―変化は、「二つの力」の綱引きで、決まっている
社会心理学の父とも呼ばれる、クルト・レヴィンは、1940年代に、変化を、こう捉えました。あらゆる状況は、「変化を、推し進めようとする力(推進力)」と、「現状を、維持しようとする力(抵抗力)」の、二つの力の、綱引きの、均衡として、保たれている、と。彼は、これを「力の場分析(フォース・フィールド・アナリシス)」と、名づけました。
推進力が、抵抗力を、上回ったとき、均衡は崩れ、変化が、起きる。だから、変化を起こすには、二つの方法が、あります。一つは、「推進力を、強める」。もう一つは、「抵抗力を、弱める」。——多くの経営者は、前者しか、考えません。号令、プレッシャー、インセンティブで、推進力を、ひたすら、強めようとする。けれど、レヴィンが発見したのは、恐ろしく、逆説的な事実でした。
―押すほど、反発する
レヴィンの、最も重要で、最も直感に反する洞察。それが、こうです。「推進力を強める」よりも、「抵抗力を弱める」ほうが、はるかに、効果的である。
なぜか。推進力を強める——つまり、「変われ」と、プレッシャーを、かければかけるほど、それに対する、反発(カウンターの力)も、同時に、強まるからです。アクセルを、踏み込めば、ブレーキも、強く、踏み返される。結果、両者の力が、せめぎ合い、緊張だけが、高まって、車は、進まない。あるいは、無理に押し通しても、緊張が溜まり、反動で、元に戻ってしまう。
一方、「抵抗力を弱める」——変化を妨げている、ブレーキそのものを、見つけて、外す。すると、低い緊張のまま、均衡が、滑らかに、動き、しかも、その変化は、長く、定着する。レヴィンは、言います。変化を妨げているのは、たいてい、「推進力の、弱さ」ではない。「抵抗力(ブレーキ)」の、強さなのだ、と。だから、賢いやり方は、アクセルを、踏み込むことでは、ない。ブレーキを、外すことなのです。
―あなたの会社の「ブレーキ」は、何か
ここに、透明資産経営の、重要な視点があります。空気を変えようとして、うまくいかないとき——多くの経営者は、推進力(号令・プレッシャー)を、強めます。けれど、本当に手をつけるべきは、空気の変化を、妨げている「抵抗力(ブレーキ)」のほうなのです。そのブレーキとは、何でしょうか。変化への、漠然とした恐れ。「失敗したら、どうなるのか」という不安。新しいやり方が、面倒だ、という手間。古いやり方のほうが、評価される、という、矛盾した仕組み。「どうせ、また、すぐ元に戻る」という、過去の経験からの、諦め。——こうした、目に見えない抵抗力が、ブレーキとなって、どれだけアクセルを踏んでも、変化を、押し戻しているのです。
さあ、あなたの会社で、変えようとして、変わらないことを、思い浮かべてください。あなたは、ひたすら、「もっと、頑張れ」「必ず、やれ」と、アクセルを、踏み込んでいないでしょうか。そして、その裏で、どんな「ブレーキ」が、踏まれ続けているか——恐れ、不安、手間、矛盾した評価、諦め——を、見ようと、しているでしょうか。アクセルを踏むのは、簡単です。けれど、ブレーキを外さないかぎり、車は、進まないのです。
―「解凍→変化→再凍結」で、設計する
レヴィンは、変化のプロセスそのものも、三段階で、示しました。「解凍(アンフリーズ)→変化(チェンジ)→再凍結(リフリーズ)」。氷の塊を、別の形に変えるとき、いきなり、力で、ねじ曲げようとしても、割れるだけ。まず、氷を「溶かし(解凍)」、水にして、新しい型へ「変化」させ、そして、その新しい形で、再び「凍らせる(再凍結)」。組織の空気も、同じです。
だから、空気を、こう設計してください。第一に「解凍」。いきなり変えようとせず、まず、「今のやり方では、まずい」という気づきを生み、古い空気を、溶かす。そして、この段階で、抵抗力(ブレーキ)を、見つけ、弱める。第二に「変化」。新しい空気へ、動かす。第三に「再凍結」。新しい空気を、新しい「当たり前」として、定着させる。すぐ元に戻らないように、仕組みで、固める。この順番と、何より、「アクセルでなく、ブレーキを外す」という発想が、空気を、本当に変えるのです。
想像してみてください。あなたが、推進力を強めるのをやめ、変化を妨げていた「ブレーキ」を、一つずつ、見つけて、外していったとき——これまで、どれだけ押しても動かなかった空気が、低い緊張のまま、滑らかに、そして、戻ることなく、変わっていく様子を。空気は、押して、変えるものでは、ありません。それは、妨げているものを、外して、変えるもの。あなたは、アクセルを、踏み込んでいますか。それとも、ブレーキを、探して、外していますか。
―勝田耕司