こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
問題が起きたとき、ミスが続くとき、業績が上がらないとき——経営者は、たいてい、「人」を見ます。「あの担当者が、悪い」「現場の意識が、低い」。そして、叱り、評価で順位をつけ、「もっと頑張れ」とスローガンを掲げ、発破をかける。ところが、戦後の日本を、品質で世界一の経済大国へと押し上げた、ある伝説の人物は、こう断言しました。あなたの会社の問題の、ほとんどは、「人」のせいではない、と。今日は、空気と業績の、最も根本的な関係について、お話しします。
―日本を変えた、アメリカ人
その人物の名は、W・エドワーズ・デミング。アメリカの統計学者であり、経営思想家です。彼が、戦後の日本企業に、品質管理の神髄を説いたことは、あまりに有名で、日本には今も、彼の名を冠した「デミング賞」があります。多くの日本企業の躍進の、礎を築いた人物です。
そのデミングが、生涯をかけて、説き続けた、たった一つの、しかし、ほとんどの経営者が、見落としている真実。それが、こうです。「組織の問題の、94%は、“仕組み(システム)”に由来する。残りの、わずか6%だけが、“人(個人)”に由来する」。94対6。問題の、圧倒的大多数は、人ではなく、その人を取り巻く「仕組み」——そして、その仕組みには、目に見えない「空気」も、含まれます——が、生み出している。そして、仕組みを設計し、所有しているのは——経営者です。つまり、問題の94%は、経営の責任なのです。
―どんなに頑張っても、赤いビーズは、減らない
デミングは、これを、誰もが忘れられない、ある実験で、証明しました。「レッドビーズ実験」です。彼は、白いビーズ(良品)と、赤いビーズ(不良品)が混ざった、大きな箱を、用意します。白が8割、赤が2割。そして、「意欲ある労働者」を数人、選び、穴の開いたヘラで、ビーズをすくわせる。仕事は、白いビーズを、できるだけ多く、赤いビーズを、できるだけ少なく、すくうこと。赤いビーズは、お客様が、決して受け取らない「不良品」です。
デミングは、「管理者」を演じ、赤いビーズの少なかった労働者を、褒め、多かった労働者を、叱ります。順位をつけ、「最優秀」を表彰し、「最低」を解雇する。「もっと、集中しろ」「努力が、足りない」と、発破をかける。——ところが、何をしようと、赤いビーズの数は、一向に、減りません。なぜなら、労働者は、赤いビーズを、すくうかどうかを、まったく、コントロールできないからです。赤が出るかどうかは、ヘラでも、意欲でも、努力でもなく、「箱の中身(=仕組み)」が、決めている。労働者は、良い仕事をしようと、必死に努力する。けれど、できない。すべての「ばらつき」は、人ではなく、仕組みが、生み出していたのです。
デミングは、この実験を、「ばかばかしいが、一生忘れられない実験」と呼びました。そして、こう結論づけます。叱っても、褒めても、順位をつけても、スローガンを貼っても、報奨金を出しても——赤いビーズの数は、1つも、変わらない。人を動かそうとする、あらゆる働きかけは、仕組みが生む結果の前では、無力なのだ、と。変えられるのは、ただ一つ。箱の中身——仕組みそのもの、だけなのです。
―あなたは、「赤いビーズ」を取った人を、責めていないか
ここに、透明資産経営の、根幹があります。あなたの会社で、社員が「赤いビーズ」——失敗や、ミスや、低い成果——を取ってしまうとき。あなたは、その社員を、責めていないでしょうか。叱り、順位をつけ、「もっと頑張れ」と、発破をかけていないでしょうか。けれど、デミングが示したように、その赤いビーズは、たいてい、人ではなく、「箱」——あなたが設計した、仕組みと、空気——が、決めているのです。悪い仕組みの中では、どれほど優秀で、意欲的な人でも、赤いビーズを、取らざるを得ない。
そして、人を責めることには、もう一つ、深刻な副作用があります。それが、「恐怖」です。デミングは、経営者が守るべき「14の原則」の一つに、こう掲げました。「恐怖を、追放せよ(Drive out fear)」。なぜか。恐怖のある空気の中では、人は、正直さを、失うからです。叱責や、処罰を恐れて、人は、問題を、隠す。本当のことを、言わなくなる。あなたが、本当に、見なければならない「赤いビーズがどこで混入しているか」——その真実を、恐怖が、覆い隠してしまうのです。人を責めれば責めるほど、恐怖は増し、真実は遠のき、仕組みは、決して、改善されない。
―「人」を責めるのをやめ、「仕組み・空気」を設計する
だから、問題が起きたとき、まず、「誰のせいだ」と問うのを、やめてください。代わりに、デミングのように、こう問うのです。「この問題を生んでいる、“箱”——仕組みと、空気は、何か」と。94%は、そこにある。そして、それを変えられるのは、人を叱ることではなく、経営者が、仕組みと空気を、設計し直すこと、だけなのです。
第一に、繰り返す問題を、個人の資質ではなく、仕組みの問題として、捉える。第二に、人を順位づけ、競わせ、スローガンで煽るのを、やめる。それらは、赤いビーズを、1つも減らさないのですから。第三に、何より、「恐怖を、追放する」。失敗を、罰する空気から、失敗を、仕組み改善の手がかりとして、歓迎する空気へ。恐怖が消えて初めて、社員は、本当のことを話し、あなたは、赤いビーズの、本当の混入経路を、知ることができるのです。
想像してみてください。あなたが、人を責めるのをやめ、仕組みと空気を、設計し直したとき——社員が、恐怖なく、本当のことを話し、共に、箱の中身を、改善していく様子を。赤いビーズが、叱責ではなく、設計によって、本当に、減っていく様子を。問題の94%は、人では、ありません。あなたが設計した、仕組みと、空気です。あなたは、赤いビーズを取った人を、責めていますか。それとも、箱の中身を、設計し直していますか。
―勝田耕司