『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】あなたの会社は「天才を崇める空気」か、「全員が伸びる空気」か――たった一つの信念が、文化を分ける

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

会社の空気は、様々な要素で、できています。制度、人間関係、リーダーの振る舞い。ところが、その根底に、たった一つ、空気全体の性質を、決定づけてしまう「信念」があることを、ご存じでしょうか。それは、「才能は、生まれつき固定されたものか。それとも、伸ばせるものか」という、たった一つの、ものの見方です。この一点が、信頼も、挑戦も、誠実さも、そして定着さえも、左右する。今日は、あなたの会社の空気が、無意識のうちに、どちらに傾いているか、という話をします。

―「固定」か「成長」か――二つのマインドセット

スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエックは、40年にわたる研究で、人が、能力について、二つの、対照的な信念のどちらかを、抱いていることを、突き止めました。一つは、「固定マインドセット」。才能や知能は、生まれつき決まっていて、変わらない、という信念です。もう一つは、「成長マインドセット」。能力は、努力と、学びと、工夫によって、伸ばせる、という信念です。

この違いは、個人の、挑戦への姿勢を、大きく分けます。固定マインドセットの人は、「自分の能力の低さ」が露呈するのを恐れ、挑戦を避け、失敗を隠し、努力を「才能のなさの証拠」だと感じる。成長マインドセットの人は、挑戦を「伸びる機会」と捉え、失敗を「学びの材料」とし、努力を「成長の道」だと考える。そして、ドゥエックが、後に明らかにしたのが——この二つのマインドセットは、個人だけでなく、「組織」も、持っている、ということでした。会社全体が、「才能は固定」と信じるか、「才能は伸びる」と信じるか。それが、会社の空気を、根本から、分けていたのです。

―「天才の文化」の会社で、起きていること

ドゥエックらが、フォーチュン1000社の社員を対象に行った研究は、衝撃的な差を、浮かび上がらせました。「固定マインドセット」の会社——ドゥエックが「天才の文化」と呼ぶ会社では、こんなことが起きていました。才能は固定だと信じるがゆえに、ごく一部の「スター(天才)」だけが、崇められ、過大に評価される。残りの大多数は、「才能のない側」に、分類される。すると、社員は、何より、「自分が、無能だと、ジャッジされること」を、恐れ始める。だから、失敗を、隠す。挑戦を、避ける。そして——自分を良く見せるために、ときに、不正にさえ、手を染める。

一方、「成長マインドセット」の会社——「才能は、全員、伸びる」と信じる会社では、正反対のことが、起きていました。社員は、挑戦を恐れず、失敗を学びに変え、互いに協力し、誠実に振る舞う。数字が、それを、裏づけています。成長マインドセットの会社の社員は、固定マインドセットの会社の社員に比べて、同僚を「信頼できる」と答える割合が47%高く、会社への「オーナーシップと強い献身」を感じる割合が34%高く、会社が「挑戦(リスクテイク)を支持している」と答える割合が65%高く、「革新を促している」と答える割合が49%も、高かったのです。別の研究では、固定マインドセットの会社ほど、協力、革新、そして誠実さ(倫理)が、乏しく、不正が多いことまで、示されました。

「才能は固定か、伸びるか」。この、たった一つの信念が、信頼、献身、挑戦、革新、そして誠実さという、会社の空気のすべてを、左右していたのです。

―巨人を蘇らせた、空気の転換

これは、抽象論では、ありません。かつて、硬直し、停滞していた、ある巨大IT企業を、劇的に蘇らせたのが、まさに、この「マインドセットの転換」でした。その会社の新しい経営者は、社内に蔓延していた「知ったかぶり(know-it-all)」の、固定マインドセットの空気を、「学ぶ人(learn-it-all)」の、成長マインドセットの空気へと、転換することに、全力を注いだのです。才能を誇示し、互いに足を引っ張り合う文化から、学び、挑戦し、協力する文化へ。その空気の転換が、停滞していた巨人を、再び、世界最高の企業群へと、押し上げました。空気は、戦略の実行を、妨げもし、加速もする。彼は、それを、知っていたのです。

―あなたの会社は、どちらの空気か

さあ、あなたの会社の空気を、診断してください。あなたは、ごく一部の「できる社員(スター)」ばかりを、崇め、評価していないでしょうか。社員を、「A評価の人材」「B評価の人材」と、固定したレッテルで、分類していないでしょうか。社員は、失敗を、安心して、さらけ出せるでしょうか。それとも、「無能だと思われる」ことを恐れて、隠しているでしょうか。——もし、あなたの会社が、「天才の文化」の側に傾いているなら、社員は、挑戦を避け、失敗を隠し、自分を守ることに、エネルギーを費やしている。本来、成長と、革新に、使われるべき力を。

とりわけ、経営者であるあなた自身が、どちらのマインドセットを、発しているかが、決定的です。あなたが、「あいつは、できない」「才能がない」と、人を固定して見るとき、その固定マインドセットは、空気となって、会社中に、伝染します。

―「全員が伸びる」という空気を、設計する

だから、「成長マインドセット」の空気を、意図して、設計してください。第一に、「才能は、全員、伸びる」という信念を、言葉と、態度で、示す。一部のスターだけでなく、全員の成長に、投資する。第二に、固定したレッテル(優秀/ダメ)で、人を分類するのを、やめる。評価を、「今、どこにいるか」ではなく、「どう伸びているか」に、向ける。第三に、失敗を、無能の証拠ではなく、学びの材料として、扱う空気をつくる。挑戦を、称える。

ただし、ドゥエックは、賢明にも、こう釘を刺しています。固定マインドセットを「悪」として、断罪し、禁じてはいけない、と。そうすると、人は、「成長マインドセットのふり」をするだけの、偽物の空気が生まれる。誰もが、二つのマインドセットの、混ざり合いの中にいる。大切なのは、自分の中の「固定マインドセットが、顔を出す引き金」に、気づき、そこから、本物の成長へと、歩み始めることなのです。

想像してみてください。あなたの会社が、「天才を崇める空気」から、「全員が伸びる空気」へと、転換したとき——社員が、失敗を恐れず挑戦し、学び合い、互いを信頼し、誠実に振る舞っていく様子を。それは、優秀な人を集めたから、では、ありません。あなたが、「才能は、伸びる」という、たった一つの信念を、空気として、設計したから、です。あなたの会社は、どちらの空気を、吸っていますか。

―勝田耕司