『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】財務資本でも、人的資本でもない――「第三の資本」を、空気で育てる

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

経営者は、二種類の資本を、知っています。一つは、「財務資本」——お金、設備、資産。もう一つは、「人的資本」——社員の、知識、技能、経験。会社の力は、この二つの掛け算だ、と、多くの人が、考えている。ところが、経営心理学の研究は、これに、決定的な「第三の資本」を、付け加えました。それは、測ることができ、育てることができ、そして、業績を、直接、押し上げる。にもかかわらず、ほとんどの会社が、その存在にすら、気づいていない。今日は、この「第三の資本」と、それを育てる、空気の役割について、お話しします。

―「心理的資本(PsyCap)」という、第三の資本

その第三の資本を、経営学者フレッド・ルーサンスらは、「心理的資本(サイコロジカル・キャピタル、PsyCap)」と、名づけました。それは、四つの、前向きな心理的資源から、成ります。頭文字をとって、「HERO」。

「H」は、Hope(希望)。目標へ向かう意志と、そこへ至る道筋を、描ける力。「E」は、Efficacy(自己効力感)。「自分なら、できる」という、根拠ある自信。「R」は、Resilience(レジリエンス)。困難や失敗から、立ち直り、しなやかに前へ進む力。「O」は、Optimism(楽観)。ただし、根拠のない楽観ではなく、「努力すれば、良い結果につながる」と、現実的に、前を向く力。この四つが、そろったとき——研究によれば、それは、四つの合計以上の、相乗効果を発揮し、業績、仕事の満足度、定着に、はっきりと、結びつくのです。

―この資本の、驚くべき性質——「育てられる」

心理的資本が、財務資本や人的資本と並ぶ「資本」と呼ばれるのには、理由があります。それは、三つの、重要な性質を、備えているからです。第一に、「測れる」。妥当性の検証された尺度で、数値化できる。第二に、「業績を生む」。それは、気分の問題ではなく、パフォーマンスに、直結する資本です。そして、第三に——ここが、最も重要ですが——「育てられる」。

希望も、自信も、レジリエンスも、楽観も、生まれつきの、固定した“性格”では、ありません。それらは、「状態」であり、開発可能なのです。実際、わずか数時間の、適切な介入で、心理的資本が高まり、業績に影響することが、実験で、示されています。この点で、心理的資本は、鍛えれば増える「筋肉」に、似ています。生まれつきの才能では、なく、育てられる、資本なのです。だからこそ、米軍や、NASAまでもが、この開発に、取り組んできました。

―HEROを育てるのも、蝕むのも、「空気」である

ここに、透明資産経営の、核心があります。心理的資本は、「個人」の中にある、資源です。しかし、それを育てるのも、そして——静かに、蝕むのも、「組織の空気」なのです。ある研究者は、鋭く、こう警告しています。「心理的資本は、壊れた文化への、絆創膏では、ない。もし、組織が、まずいリーダーシップや、無理な要求や、耳を貸さない姿勢によって、社員の希望、自信、レジリエンス、楽観を、系統的に、蝕んでいるなら——どんな研修も、それを、直せはしない」。

これは、決定的な指摘です。あなたが、社員に「もっと前向きに」「もっと打たれ強く」と、いくら研修を施しても——彼らが日々戻っていく職場の空気が、失敗を罰し、挑戦を潰し、声を無視するものであれば、心理的資本は、育つそばから、枯れていく。逆に、失敗が学びとして扱われ、挑戦が支えられ、声が聴かれる空気の中でなら、HEROは、自然と、根を張り、育っていく。心理的資本という第三の資本は、空気という“土壌”の中でしか、育たないのです。土壌が痩せていれば、どんな種も、育たない。

さあ、あなたの会社の空気は、社員のHEROを、育てる土壌でしょうか。それとも、蝕む土壌でしょうか。社員は、目標への道筋を、描けているでしょうか(希望)。「自分なら、できる」と、思えているでしょうか(自信)。失敗しても、立ち直れる、安全があるでしょうか(レジリエンス)。努力が報われる、と、信じられているでしょうか(楽観)。それとも——あなたの空気が、この四つを、日々、少しずつ、削り取っていないでしょうか。

―「第三の資本」を、空気で、設計する

だから、心理的資本を、育てる空気を、設計してください。財務資本や、人的資本と、まったく同じように、意図して、投資するのです。「希望」を育てるなら、明確で、手応えのある目標と、そこへの道筋を、共に描く。「自信」を育てるなら、小さな成功を、積ませ、それを認める。「レジリエンス」を育てるなら、失敗を、罰ではなく、学びとして扱う空気をつくる。「楽観」を育てるなら、努力が、確かに報われる、と、実感させる。そして何より、これらを蝕む空気——失敗への叱責、挑戦の否定、声の黙殺——を、経営者自身が、断つのです。

想像してみてください。あなたの会社の社員が、希望と、自信と、レジリエンスと、楽観に、満ちて働き、その心理的資本が、業績という形で、会社に、還ってくる様子を。それは、社員の“性格”が良いから、ではありません。あなたが、その資本を育てる“空気”を、設計したから、です。会社の力は、財務資本と、人的資本の、二つでは、ありません。そこに、第三の資本——心理的資本が、掛かります。そして、その資本を育てる土壌こそが、空気なのです。あなたは、この見えざる「第三の資本」に、投資していますか。

―勝田耕司