こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
―「初期設定のまま」が、運命を分けた
あるアメリカの会社が、退職金制度(401k)への加入方法を、変えました。それまでは「加入したい人が、手続きする」方式。これを、「全員、自動的に加入。抜けたい人だけ、手続きする」方式に、切り替えたのです。たったこれだけで、加入率は、49%から、86%へと跳ね上がりました。しかも——自動加入した人の多くは、初期設定の積立率も、初期設定の運用先も、そのまま、何年も変えなかった。自分で選んだ人なら、まず選ばないような組み合わせを、です。
臓器提供も、同じです。「提供したい人が意思表示する」国では、同意率は十数%。「提供しない人だけが意思表示する」国では、九割超。人々の本心は、同じはず。決めたのは、「初期設定(デフォルト)」でした。今日は、あなたの会社の社員の行動が、実は、あなたが無意識に置いた「初期設定」によって、静かに決められている、という話をします。
―初期設定は、「最も抵抗の少ない道」であり、「暗黙の推奨」である
なぜ、初期設定は、これほど強いのか。理由は二つ。一つは、それが「最も抵抗の少ない道」だから。人は、わざわざ変える手間を、かけたがりません。もう一つは、初期設定が「暗黙の推奨」として、受け取られるから。「これが標準として設定されているなら、これが望ましいのだろう」と。慣性と、暗黙の承認。この二つが、人を、初期設定に、留め置くのです。
ここに、透明資産経営の設計原理があります。あなたの会社は、無数の「初期設定」で、満ちています。そして、あなたは、それを——たいてい、無意識に——設定している。会議の初期設定の長さ(60分に設定すれば、会議は60分かかる)。新しい提案への、初期設定の反応(「まず疑う」か、「まず試す」か)。ミスが起きたときの、初期設定の反応(「犯人を探す」か、「学びを問う」か)。「うちは昔からこうだ」という、初期設定のやり方。初期設定が何であれ、それが、大半の社員が、大半の場合に取る行動になる——説得など、一切不要で。なぜなら、初期設定は、空気の「最も抵抗の少ない道」だからです。空気を設計するとは、初期設定を設計することなのです。望む行動を初期設定にすれば、それは、労せずして、標準になる。初期設定を放置すれば、慣性が、あなたの文化を、勝手に決めてしまう。
さあ、あなたの会社の「初期設定」は、何でしょうか。会議の初期設定は、60分でしょうか(だから、すべての会議が、一時間を食い潰す)。提案への初期設定の反応は、懐疑でしょうか。ミスへの初期設定の反応は、犯人探しでしょうか。あなたは、これらの行動を、号令で正そうとしながら、初期設定が、毎日、全員に、それを生み出させているのかもしれない。あなたは、自分が置いた(あるいは受け継いだ)、一度も見直したことのない初期設定に対して、坂を上るように、抗っているのです。そして、残酷なのは、初期設定が、目に見えないこと。誰も決めていない。ただ、そう「なっている」だけ。だから、あなたは、文化を決めている、そのたった一つのレバーを、変えようと、思いつきもしないのです。
だから、初期設定を、点検し、設計し直してください。望む行動を、初期設定にする——放っておけば、そうなる道にする。会議の初期設定は25分。小さな実験への初期設定の答えは「イエス」。ミスへの初期設定の反応は「何を学んだか」。正しいやり方が、自動で、抜けるほうに手間がかかるようにする。十分な情報を持つ人が選ぶであろう結果を、初期設定にし、慣性を、敵ではなく、味方にするのです。想像してみてください。あなたが乞い求めてきた行動が、ひとりでに起きている様子を。あなたが、それを、初期設定にしたから、です。
社員の行動の大半は、「選ばれた」ものではありません。「初期設定された」ものです。だから、あなたが持つ、最も強力で、目に見えないレバーは、あなたのスピーチではなく、あなたが置く「初期設定」なのです。初期設定は、運命です。だから、号令をかけるのを、やめて、あなたの会社を静かに動かしている初期設定を、探し出し、あなたが本当に望む空気に、意図して、設定し直してください。
―勝田耕司