こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
―飛行機事故の調査は、パイロットの最後の一秒を見ない
飛行機が墜落したとき、調査官は、パイロットが最後の数秒で何をしたか、だけを見るのではありません。彼らは、鎖を、後ろへとたどっていきます。整備の判断、運航スケジュール、規制のあり方、機体の設計にまで。なぜか。事故とは、たった一つのミスから起きるのではなく、いくつもの層の「穴」が、たまたま一直線に並んだときにだけ、起きるからです。
これを見事に言い当てたのが、心理学者ジェームズ・リーズンの「スイスチーズ・モデル」です。今日は、あなたの会社で、事故やミスやクレームが繰り返されるとき、あなたが「犯人探し」に費やしてきた労力が、なぜ一度も報われなかったのか——そして、その代わりに何を「設計」すべきかを、お話しします。
―防御は、穴だらけのチーズを、何枚も重ねたもの
リーズンは、組織の「防御」を、スイスチーズのスライスに例えました。一枚一枚のチーズには、穴が空いている。この穴が、弱点や、見落としです。そして——たった一枚のチーズの穴を、危険がすり抜けても、事故にはなりません。その後ろに、別のチーズが控えているからです。事故が起きるのは、すべての層の穴が、偶然、一直線に並び、危険が全部の穴を貫いて、向こう側まで突き抜けたときだけ。どんな一つの失敗も、それ単独では、災害を起こさない。
リーズンは、失敗を二種類に分けました。一つは「アクティブな失敗」——現場の最前線にいる人(パイロットや、あなたの社員)が犯す、目に見える、その場で結果が出るミス。もう一つが「潜在的な条件」——設計者や、管理者や、経営者が、ずっと前に下した判断が生んだ、目に見えない弱点。まずい研修、使いにくい道具、無理なスケジュール、分かりにくい書式。これらは、何週間も、何か月も、休火山のように眠ったまま、穴として開き続けている。そして、いつか、他の穴と並んだとき、災害を、貫かせるのです。
―「完璧な一枚」ではなく、「不完全な複数枚」を設計する
ここに、透明資産経営の、重要な設計原理があります。あなたは、ミスを防ごうとして、最前線の社員に「完璧」を要求します。「気をつけろ」「二度とやるな」と。そして、失敗すれば、その人を責め、入れ替える。けれど、どんな人間も、どんなルールも、どんな防御も、必ず「穴」を持っています。常に、です。「完璧な一枚のチーズ」は、設計できません。設計できるのは、「層」です。不完全な防御を、何枚も重ね、一つの穴が開いても、次の一枚が受け止めるようにする。品質と安全の空気とは、一つの完璧な壁ではない。意図的に積み重ねられた、複数の不完全な壁なのです。そして、最も深い穴は——あなた自身が空けた「潜在的な条件」です。あの無理なスケジュール、あの分かりにくい書式、あの足りない道具。
さあ、あなたの会社で、何かが起きたときのことを、思い出してください。あなたは、最後にミスをした人間を見つけ、責め、入れ替えた。けれど、スイスチーズ・モデルは、こう告げます。それは、いくつもの穴が並んだから起きたのだ。そして、その穴のほとんどは、あなたが空けた潜在的な条件なのだ、と。最前線の一人を責めることは、その裏で開いたままの、すべての潜在的な穴を、放置することです。だから、また起きる。今度は、別の人間で。そして、たった一枚の防御——一つのチェック、一人の慎重な人間——に頼ることは、その一枚に穴が開いた瞬間、災害まで一直線、ということなのです。
だからこそ、層を、設計してください。重大な失敗が起きたら、「誰がやった」と問うのを、やめる。代わりに、「私たちとこの災害の間に、独立した防御の層は、何枚あったのか。そして、なぜ、その全部が、同時に破られたのか」と問う。一つ目のチェックの後ろに、独立した二つ目の受け皿を、置く。そして、潜在的な穴——スケジュールの圧、混乱を招く書式、欠けた道具——を狩り出し、それを、ふさぐ。英雄的な注意力に頼るのを、やめる。冗長さを、設計するのです。想像してみてください。あなたが、大きな損失になったはずのミスを、二枚目、三枚目のチーズで、静かに、当たり前のように、受け止めている様子を。あなたが、スライスを、重ねたから、です。
最も安全な会社とは、最も注意深い人間がいる会社では、ありません。人も、ルールも、穴だらけだと「前提」し、どんな一つの穴も、災害にはならないだけの層を、設計した会社です。完璧な一枚を、要求するのを、やめてください。不完全な複数枚を、重ねる。そして、あなた自身が空けた、潜在的な穴を、探しに行くのです。
―勝田耕司