『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「今度こそ気をつけろ」で、同じミスが消えないのは、なぜか――空気は、気合いではなく、仕組みで設計する

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―「墜落するには、あまりに優秀すぎる飛行機」

1935年、アメリカ陸軍が、次期爆撃機を決める競技会を開きました。本命は、ボーイングのモデル299。当時の常識を覆す、革命的な機体でした。従来機の何倍もの爆弾を積め、より速く、より遠くまで飛ぶ。設計は完璧で、操縦するのは、当時最も経験豊かなテストパイロットの一人。

そのパイロットが操る最新鋭機は、離陸し、数百フィート上昇し——そして、失速し、炎に包まれて墜落しました。原因は、設計不良でも、機体の欠陥でもありません。パイロットが、ある小さな固定装置のロックを、解除し忘れた。ただ、それだけ。この飛行機は、あまりに多くの操作を一人に要求する、「一人の人間が飛ばすには、あまりに多すぎる飛行機」だったのです。陸軍は、この機体を、諦めかけました。ところが、数人のパイロットが、別の道を見つけます。パイロットを、もっと賢く、もっと勇敢にしようとしたのではありません。彼らは、ただ、単純なものを一つ、作ったのです。「チェックリスト」を。その、ばかばかしいほど当たり前の項目が並んだ紙切れ一枚で、「飛ばせない」はずの機体は、その後180万マイルを、一度の事故もなく飛び続けました。今日は、この紙切れが、あなたの会社の、何年も繰り返しているミスを、消す話です。

―私たちは「知らない」から失敗するのではない

外科医のアトゥール・ガワンデは、なぜ、賢く、訓練を積み、経験豊富なプロが、それでも失敗するのかを、探求しました。そして、失敗には二種類あることを、見出します。一つは「無知」——何をすべきか、知らないこと。もう一つは「無能」——何をすべきか知っているのに、それを、確実に、正しく、実行できないこと。

そして、現代の失敗のほとんどは、前者ではなく、後者だ、と彼は言います。医療も、金融も、そしてあなたの会社も——知識が足りないのではありません。知っているはずのことを、忙しさ、疲れ、プレッシャーの中で、確実にやり遂げられない。そこで、失敗する。この、「知っている」と「確実にやる」の間に横たわる、深い溝。それを埋めるものが、あの、拍子抜けするほど単純な、チェックリストなのです。

―「当たり前の5項目」が、1500人の命を救った

その威力を、命がけの現場で証明したのが、医師のピーター・プロノボストです。彼は、病院で日常的に行われる、ある処置——「中心静脈カテーテル」の挿入——に注目しました。この処置に伴う感染症が、患者を、ばたばたと死なせていたのです。

彼が作ったチェックリストは、あまりに基本的で、医師たちが「侮辱だ」と感じるほどのものでした。手を洗う。皮膚を消毒する。患者に清潔な布をかける。滅菌された手袋とガウンを着ける。清潔な被覆材を貼る。——たった5項目。どの医師も、全員、とっくに「知っている」ことばかりです。ところが、看護師に観察させてみると、なんと三分の一以上のケースで、医師たちは、この当たり前の手順を、どれか一つ、飛ばしていた。そこで、このリストを義務化し、さらに——看護師に、手順を飛ばした医師を、たとえ相手が誰であろうと、止める権限を与えたのです。結果、ある病院では、10日間あたり11%もあった感染率が、ほぼゼロに落ちました。この取り組みがミシガン州のICUに広がると、18か月で、この「ばかばかしい紙切れ」は、推計でおよそ1500人の命を救い、およそ1億7500万ドルを節約したと言われています。新しい知識でも、新しい技術でもない。一枚の、リストが、です。

―「知っている」と「やる」の間は、気合いでは埋まらない

さあ、ここに、あなたの会社の教訓が、そして透明資産経営の核心が、あります。「何をすべきか知っている」ことと、「それを、毎回、プレッシャーの中で、確実にやり遂げる」ことの間には、広大な溝がある。そして、その溝こそが、あなたの品質が、安全が、一貫性が、静かに漏れ出していく場所なのです。

ところが、あなたは、この溝を、多くの経営者と同じやり方で埋めようとしていないでしょうか。注意する。会議で、また蒸し返す。叱る。「気をつけろ」と貼り紙をする。「もっと集中しろ」「もっと丁寧に」と、繰り返す。けれど——本当のプレッシャーの中では、忙しい一日、疲れた午後、締切間際の慌ただしさの中では、記憶も、意志の力も、崩れます。あなたの最も優秀な社員ですら、例外ではありません。行動が実際に起きる、あの現場は、善意では、統治できないのです。それを統治するのは、ただ一つ、「設計」です。だから、繰り返す失敗は、社員の「気持ち」を変えることでは、直りません。それは、誰が覚えていようが、どんな気分だろうが、正しいことが自動的に起きるような、単純な「仕組み」を設計することでしか、直らない。チェックリストは、空気を「設計された仕組み」として捉える、最も純粋な例です。信頼性とは、あなたが「発破をかけて」引き出す美徳ではない。あなたが「作り上げる」機械なのです。

さあ、あなたの会社で、何度注意しても、繰り返されるミスを、思い浮かべてください。同じ受注ミス。同じ、飛ばされる手順。同じ、品質の抜け。同じ、忘れられるフォロー。そして、あなたが、それにどう対処してきたかを。あなたは、また、注意した。また、会議で持ち出した。また、「今度こそ気をつけろ」と言った。そして翌月、別の社員が、同じミスを繰り返す。あなたは、「設計」の問題を、「気合い」の問題として、扱ってきたのです。仕組みでしか埋まらない溝を、注意喚起で埋めようとして。「もっと気をつけろ」と言うたびに、あなたは、本当に効く、たった一つのこと——チェックリストを設計すること——を、避けているのです。繰り返す失敗は、社員が不注意な証拠ではありません。それは、プロセスが「未設計」である証拠であり、そして、それを設計できる人間は——あなたです。

だから、リストを、作ってください。何度も繰り返すその失敗を取り上げ、それを防いだはずの、ばかばかしいほど単純な、五行のチェックリストを書く。誰もが「知っている」のに、プレッシャーの中で飛ばす、その手順を。短くしてください(長すぎるチェックリストは、無視されます)。そして、提案ではなく、必須の儀式にする。さらに、これが力の源となる設計上の一点——最も立場の若い者に、手順を飛ばした者を、たとえあなたであっても、止める権限を、はっきりと与える。この一つのルールが、信頼性が、役職にも記憶にも依存しない空気を、設計します。想像してみてください。数か月後、あなたが何年も口うるさく言い続けてきたあのミスが、ただ……止まっている様子を。あなたが、叱っても決して手に入らなかった品質と一貫性が、静かに、ひとりでに回っている様子を。あなたが、注意するのをやめ、設計を始めたから、です。

社員の「知っていること」と「確実にやること」の溝は、意志の力では埋まりません。名演説でも、埋まりません。それは、設計でしか、埋まらない。世界で最も慎ましい道具——チェックリスト——が、最も立派な決意に勝るのは、それが、誰にも「最高の状態」であることを要求しないからです。これこそ、透明資産経営の、約束のすべてです。社員が、覚えていてくれる、気にかけてくれる、もっと頑張ってくれる——それを願うのをやめ、正しいことが、いずれにせよ起きる、単純な機械を、作る。次に、同じミスが、あなたの机に届いたら、注意喚起に手を伸ばすのは、やめてください。ペンに手を伸ばし、リストを、設計するのです。気合いは、プレッシャーの中で、崩れます。設計は、持ちこたえます。

―勝田耕司