透明資産の中で大切なキラーメニューは、お店の「強い思い」があってこそ生まれる
飲食店にとってもっとも大切な「透明資産」のうち、お客様を強く惹きつける要素が「キラーメニュー」です。
同業他店と差別化された強いメニュー、言い換えれば「その店の売り」があってこそ、飲食店は継続してお客様の支持を得ることができます。
しかしそのメニューの本当の魅力は、実は商品そのものにあるのではありません。本当の魅力は、メニューに込められた店側の強い思いです。
その思いがお客様に伝わることによって、おいしさがさらに高まり、「おいしかった。また来よう」と思っていただけることにつながる。
息の長い繁盛店は例外なく、この積み重ねによって熱心な固定客を獲得しています。
店側の強い思いとは、メニューに対する思い入れだけではありません。もうひとつ大切なのが、お客様への強い思いです。料理をよりおいしい状態で提供したい、よりおいしくしてお客様に喜んでいただきたい。
そういう思いこそが、お店に対するお客様の信頼につながることは言うまでもないでしょう。
キラーメニューに対する強い思いと、お客様に対する強い思い。これがもっとも大切な透明資産なのです。
日本を代表するフランス料理の料理人で、帝国ホテルの総料理長を務めた故・村上信夫シェフはこういう有名な言葉を遺しました。
「料理の極意は、愛情と真心」
これは料理と、それを食べる相手に対するつくり手の強い思い、すなわち透明資産の大切さを端的に示している言葉です。
また、日本最大のカレーチェーン「CoCo壱番屋」の創業者で、夫である宗次徳二氏と二人三脚でチェーンを育てた宗次直美氏は、CoCo壱番屋の前身である喫茶店を経営していた頃のことをふりかえって次のように語っています。
「本当にお客さまのことを思ってコーヒーを淹れたり、カレーをつくれば、おいしくなるんです」(柴田書店発行『月刊食堂』2013年8月号より)
CoCo壱番屋はQSCがきわめて高いレベルで維持されているチェーンであり、その背景には商品とお客様に対する強い思いがあります。
そしてその思いは、もう40年以上も前から創業者によって生み出され、連綿と受け継がれてきたわけです。
透明資産が企業にとってもっとも大切なものと位置づけられていることが、高いブランド力の源泉となっているのです。
強い商品を支えるのは強い思いであり、それこそが透明資産。その実例をこれから、本コラムで伝えていきたいと思います。
ー勝田耕司