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COLUMNコラム

お客さまへの強い思いが「透明資産」を生む。 「島正」の看板商品どて焼きは格好の事例

飲食店におけるキラーコンテンツとは、すなわち「看板商品」のことです。

看板商品はそう簡単に生まれるものではありません。研究に研究を重ねても思うような味が生まれなかったり、やっと完成したと思ってもクオリティが安定しなかったりと、それこそ試行錯誤を重ねてやっとつくりあげるものです。

しかも、そうしてできあがった看板商品も決して永続的なものではありません。

常においしくする努力を重ねていないと、お客さまから「まずくなった」と言われてしまいます。

お客さまは食体験を重ねるうちに舌が肥えるものですし、長いスパンでみると嗜好も変化していきます。時を経ても継続して支持を得ていくためには、クオリティアップのためのたゆまぬ努力が必要です。

そして、老舗として高い評価を受けている店の多くは、そうした努力を続けているものです。

愛知・名古屋のどて焼きの名店「島正」はその好例といえるでしょう。

島正は終戦から間もない70年前に屋台として創業以来、ずっとどて焼きを看板商品としています。

どて焼きは名古屋市民にとってのソウルフードであり、いってみれば「どこにでもある商品」ですが、島正のどて焼きは一味も二味も違います。

それを象徴するメニューが大根です。どて焼きの特徴である八丁味噌がしっかりと染み込んだ、濃い赤褐色の見た目はいかにも塩辛そうですが、食べてみると大根本来の味がしっかりと感じられることに驚かされます。

その独特の味わいを生み出しているのが島正ならではのていねいな仕事です。

大根は下茹でした後で水にさらし、水を取り替えながら徹底してアクを抜いていきます。これは素材の持つピュアな味だけを残していくために大切な作業。

そのうえで八丁味噌を加えてじっくりと煮込んでいきます。アク抜き作業だけで4日間、仕込み開始から提供までには実に10日間以上を要するというから驚きです。

それは、お客さまに本当においしいどて焼きを提供したいという強い思いの表れに他なりません。

食べることでその思いがお客さまに伝わるからこそ、どこにでもあるどて焼きに「決して他にはない価値」を感じるようになるのです。

こういう店とお客さまの関係性こそ、本当に大切にすべき「透明資産」といえます。

島正はオーソドックスなどて焼きの他に、オムライスのソースにどて焼きを使った「どてオムライス」などのユニークなメニューも提供しています。

それらが決してアイデア商品に終わっていないのも、お客さまへの強い思いゆえといえるでしょう。

ー勝田耕司

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