こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
経営者の皆様、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉に、少し疲れを感じてはいないでしょうか。高額な予算を投じて最新のシステムを導入し、コンサルタントのアドバイスに従って業務をデジタル化しようとしたものの、現場からは不平不満が噴出し、結局は古いエクセルや紙の運用に戻ってしまう。あるいは、導入したツールが全く使いこなされず、形骸化している。こうした風景を、私は数え切れないほど見てきました。
なぜ、多くのDXは失敗するのか。その理由は、プログラムの「コード」に欠陥があるからでも、社員のITリテラシーが低いからでもありません。組織に流れる「空気」が、デジタルという異物を受け入れる準備ができていないからです。DXの成否は、テクノロジーの優劣で決まるのではありません。その根底にある「透明な信頼関係」という透明資産の残高で決まるのです。
デジタル化とは、極めて「透明度」を高める行為です。これまで特定のベテラン社員の頭の中にしかなかった「暗黙知」が可視化され、誰が何をやっているのか、どこで仕事が止まっているのかが、リアルタイムで白日の下にさらされます。空気が濁り、相互不信が蔓延している組織において、この「可視化」は社員にとって「監視」や「管理の強化」としか映りません。自分の既得権益が脅かされると感じた社員は、本能的に変化を拒み、情報の入力を怠り、システムの足を引っ張ります。これが、DXを阻む「心の不透明な壁」の正体です。
逆に、透明資産経営を実践し、心理的安全性が確保されている組織では、デジタル化は「監視」ではなく「解放」として捉えられます。面倒な事務作業から解放され、より創造的な仕事(在り方の追求)に時間を割けるようになるための強力な武器として、社員自らがデジタルを歓迎し、使いこなそうとします。
この「空気による加速」を体現しているのが、工具卸商社であるトラスコ中山の事例です。彼らは一見、泥臭いアナログな商売をしているように見えますが、その実は日本屈指のDX先進企業です。特筆すべきは、データの利活用を一部の専門家だけでなく、現場の全社員に「民主化」している点です。誰でも必要なデータにアクセスでき、自分の判断で仕事を進められる。この「情報を独占せず、全員を信じて公開する」という透明な空気が土台にあるからこそ、最新のデジタル技術が組織の隅々にまで浸透し、圧倒的な物流スピードという独自性を生み出しています。
また、デザイン会社であるグッドパッチの変革も、DXを志す経営者にとって極めて重要な示唆を与えてくれます。彼らはかつて、組織の急拡大に伴い「空気の崩壊」を経験しました。不信感が募り、離職率が高まる中で、彼らが再建の柱に据えたのは、デザイン思考という「やり方」以上に、お互いを尊重し、フィードバックを透明に行う「文化(空気)」の再定義でした。デザインという極めてデジタルと親和性の高い領域であっても、結局は「人と人の信頼」というアナログな透明資産が整わなければ、卓越した成果は生まれないことを彼らは証明しています。
DXを加速させるためには、社長が「社長塾」を通じて、デジタルの導入が「誰を幸せにするためなのか」という在り方を、透明な言葉で語り続けなければなりません。「効率化して利益を出すため」という経営側の都合だけでは、社員の心は動きません。「このツールを使えば、お客様への価値提供がこう変わる」「君たちの本来の才能を、もっと自由に発揮できるようになる」という、社員のウェルビーイングに直結する物語が必要です。
さらに「社内学校」においては、単なる操作説明会を行うのではなく、デジタルを使って「現場がどう楽になったか」「どんな新しい挑戦ができたか」という成功事例(グッドエピソード)を先輩社員が後輩に伝える場にするべきです。デジタルを「外から押し付けられた異物」から、「自分たちの絆を深め、技を磨くための道具」へと定義し直すプロセスが不可欠なのです。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングのデータでも、デジタル活用が進んでいる企業ほど、従業員のエンゲージメントが高く、主体的な「プロアクティブ行動」が活発であるという相関が出ています。これは、デジタルが「やり方」を自動化してくれることで、人間が本来の「在り方」に向き合う余裕が生まれるからです。透明資産とデジタルは、対立するものではなく、お互いを高め合う「共犯関係」にあるのです。
2026年、デジタル化の波は止まりません。AIや自動化技術はますます進化し、あらゆる産業に浸透していくでしょう。しかし、どんなに高度なAIを導入しても、それを動かす人間の「やる気」や「信頼」をコードで書くことはできません。不透明な組織に最新のシステムを載せるのは、錆びついたエンジンに高級な燃料を注ぐようなものです。
社長、システムを発注する前に、まずは自社の会議室の空気を点検してください。社員は、新しい変化を面白がる「新奇歓迎」の心を持っているでしょうか。失敗を恐れずに新しいツールを試してみる「挑戦」の空気があるでしょうか。もし、そこに「これ以上仕事を増やさないでくれ」という重苦しい沈黙があるのなら、あなたが最初にやるべきことは、システムの導入ではなく、社員との「透明な対話」を通じた空気の入れ替えです。
デジタル変革とは、究極的には「人間変革」です。人が変わり、関係性が変わり、空気が変わったとき、システムという名の「技」は初めて命を宿し、あなたの会社を未来へと運ぶ最強の翼となります。
あなたの会社のDXは、社員の瞳を輝かせていますか。デジタルという透明な光を、組織の「淀み」を照らすために使う勇気を持ってください。その先に、技術と心が調和した、真の透明資産経営が待っています。
ー勝田耕司
