『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】速い一人を「見える場所」に置くだけで、周りが速くなる――働きぶりは、視線で伝染する

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―「見えていた人」だけが、速くなった

経済学者のアレクサンドル・マスとエンリコ・モレッティが、あるスーパーマーケットのレジ係の、膨大なデータ(一秒あたり何点スキャンしたか)を分析しました。そして、あるシフトに、飛び抜けて仕事の速いレジ係を一人、投入してみたのです。すると、周りのレジ係の生産性が、1〜2%ほど、上がりました。

ここまでなら、「まあ、そうだろう」という話です。ところが、この研究の肝は、その先にあります。生産性が上がったのは、その速い一人を「見ることができた」レジ係だけだったのです。速い人が視界に入らない場所にいたレジ係は、まったく変わらなかった。同じシフトに、同じ人がいても、です。効果を生んだのは、単なる「存在」ではなく、「視線が通っていたこと」——見える、ということでした。今日は、あなたの会社の「働きぶり」という空気が、実は「誰が、誰を、見えるか」という配置で決まっている、という話をします。

―働きぶりは、視線を通じて伝染する

なぜ、「見えていた人」だけが速くなったのか。人は、隣で誰かが黙々と、速く、丁寧に働いているのが「見える」と、無意識に、「ここでは、これが普通なのだ」という基準を感じ取り、自分の手を、そこへ寄せていきます。逆に、周りがだらけているのが見えれば、自分も緩む。働きぶりは、視線を通じて、静かに伝染するのです。(正直に申し添えれば、この効果は、働きぶりが目に見えやすい現場で強く出るもので、条件によっては表れないという研究もあります。それでも、「見える/見えない」が空気を左右する、という核心は、あなたの現場にも、心当たりがあるはずです。)

ここに、透明資産経営の設計原理があります。あなたは、生産性を、社員個人の「やる気」や「能力」の問題だと考えている。けれど、働きぶりは、視線を通じて伝染する。そして——「誰が、誰を、見えるか」は、あなたが「設計」できるものなのです。席の配置。シフトの組み方。フロアのレイアウト。仕切りの高さ。これらは、単なる事務的な、中立の決定では、ありません。それは、れっきとした「業績への介入」です。「この会社では、どれくらい真剣に働くのが普通か」という空気は、誰が、誰の働きぶりを、見られるかによって、設定されている。あなたは、視線を、設計できるのです。

さあ、あなたの会社の配置を、見てください。あなたは、最も働きぶりの良い社員を、奥まった個室に隠していないでしょうか。あるいは、社員をばらばらに配置して、誰も誰の働きぶりも見えないようにし、結果として、最も緩い一人が「見える基準」になっていないでしょうか。それは、無自覚のうちに、「低い努力」の空気を、設計してしまっているのです。逆に、この力は、チーム全体を引き上げるためにも使えます。よく働く社員の働きぶりが、自然に「見える」ようにする——見せしめのためではなく、「ここでの普通」を、目に見える形で示すために。あなたは、生産性を、精神論の号令で管理しようとしながら、実際にペースを決めている「見取り図」を、放置してきたのかもしれません。

だから、「誰が誰を見えるか」を、設計してください。よく働く社員を、その働きぶりが見える位置に配し、対にする。努力が、互いに見える——「みんなで、やっている」という視線が通る——ように、空間を組む。新人を、優れた先輩の働きぶりが見える場所に、置く。監視の脅しとしてではなく、良い基準を設定する「見える化」として。想像してみてください。数か月後、あなたが号令をかけずとも、チームが、互いの働きぶりを見ながら、自然と、自らを引き上げていく様子を。あなたが、視線の通り道を、設計したから、です。

努力は、視線を通じて、広がります。だから、あなたの会社のペースは、あなたのスピーチよりも、「誰が、誰の働きぶりを、見られるか」によって、決まっている。視線を設計してください。そうすれば、あなたは、「努力」という空気そのものを、設計することになるのです。

―勝田耕司