『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】空気を大切にする経営者たち
──“見えない資産”を育てる経営が、なぜ強いのか?

空気を大切にする経営者たち
──“見えない資産”を育てる経営が、なぜ強いのか?

 

こんにちは、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

 

「数字は順調なのに、どこか不安」──空気に向き合う経営者たち

「売上も利益も出ている。離職率も低い。しかし、なぜか社内の雰囲気に引っかかる」

「頑張っている社員が多い。でも、最近、会話が減っている気がする」

 

こうした“なんとなくの違和感”に耳を傾けることができる経営者がいます。

彼らは共通して、数字では測れない「空気」を経営の中心に据え、組織の根本的な変化を生み出してきた人たちです。

 

今日は、空気感を経営資源と捉え、意図的に育てることに注力している数名の経営者を取り上げ、その取り組みがどのように“透明資産”となり、企業の競争力に転化されているかを掘り下げていきます。

 

  1. 星野佳路氏(星野リゾート代表)──企業文化は「空気のデザイン」

 

星野リゾートといえば、サービス業界の中でも圧倒的なブランド力を築いてきた企業です。星野氏は、社員数の急増・新施設の拡大といった変化のなかでも、“サービスの質が落ちない組織”をどのように実現しているのかを語るとき、こう言います。

 

「組織文化は“空気”で伝わるもの。言葉だけではなく、日々の態度や仕組み、評価軸で“どんな空気をつくるか”が勝負です」

 

星野リゾートでは、上下関係の空気感を崩すための「部屋割り制度」や、部署を超えてつながるプロジェクトチームなど、“風通し”を可視化する取り組みがなされています。

 

また、社内会議や資料の場でも「形式ばらず、自然体でいること」が強く奨励され、“心理的安全性”を言語化しなくても機能させる空気設計が実践されています。

 

これはまさに「空気を資産に変える」透明資産経営の実例です。

 

  1. 中村朱美氏(佰食屋創業者)──空気の設計が、採用も売上も変える

 

京都で創業した「佰食屋(ひゃくしょくや)」は、「1日100食限定」「残業ゼロ」「年商1億でも黒字」という経営スタイルで全国的に注目されました。

 

中村氏がこのスタイルを選んだ理由は、「社員が安心して働ける空気を守るため」。

単に働き方改革を目指したわけではなく、「お互いが尊重されていると感じられる空気」を日々つくることが、最高のサービスを生むと信じているのです。

 

たとえば、「仕事が終わったら速やかに帰る」「店内でスタッフ同士が怒鳴るのは禁止」といったルールは、制度ではなく、空気を守る文化として根づいています。

 

このような取り組みは、結果として離職率の低下、採用コストの削減、そして顧客満足度の向上につながっており、まさに「空気が業績を変える」透明資産経営の好例といえます。

 

  1. 中村健太氏(ツクルバ創業者)──場の空気が、ブランドをつくる

 

不動産×デザインの領域で異彩を放つ「ツクルバ」。

中古住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」などを運営し、“空間の価値”に特化したビジネスで急成長してきました。

 

中村氏が最もこだわっているのは、「場の空気をどう設計するか」。

たとえば、オフィスの内装はスタッフ自らが設計に関わる。

会議室はあえてガラス張りにし、フラットでオープンな雰囲気を徹底する。

Slackや朝会では「今の気分」を色で表現するなど、個人の“空気”がそのまま組織文化に投影される仕掛けがたくさんあります。

 

このように、空間やツールを通じて空気を可視化・共有・育成するスタイルは、サービスブランドや社内エンゲージメントを高め、長期的な競争優位をつくる“無形の資産”となっています。

 

  1. 山本陽平氏(株式会社あしたのチーム創業者)──“見えない評価”が空気を壊すことを知っていた経営者

 

評価制度の設計と導入支援を行うベンチャー企業「あしたのチーム」。

山本氏は、従来の人事評価制度に疑問を感じたことが創業のきっかけでした。

 

「社員のモチベーションは、給与やポジション以上に、日々の空気で決まる。上司の機嫌、曖昧な評価、見えない基準。それらが空気を濁らせると、どんなに良い戦略も人が動かない。」

 

この信念から、「評価の透明化=空気の浄化」という思想で、評価制度そのものを「見える化」し、社員間の対話を促す設計をつくり上げました。

 

結果、制度導入企業の多くが「社員の定着率が上がった」「管理職が“空気を読む”から“空気を創る”に変わった」と報告しています。

 

制度もまた、“空気”を設計するツールであると示した好事例です。

 

空気を「仕組み」に変えた経営がもたらす5つの成果

 

上記4社に共通するのは、「空気は感覚ではなく、意図的につくるもの」という視点を持ち、それを経営戦略に落とし込んでいる点です。具体的には、以下のような成果が見られます。

 

 

成果領域 具体的効果
採用力 求人広告なしでも人が集まる/口コミによるリファラル採用増
離職率 感情的な退職が減り、定着率が向上
顧客満足 店舗・現場の空気がそのままサービスの印象に直結
生産性 会議や日常業務のストレスが減少し、集中力が向上
ブランド力 「あの会社、なんかいいよね」と空気で差別化が進む

 

これらは、目に見えるKPI(売上、利益)では測れないものの、企業の未来を左右する「透明資産」として、確実に企業体力を高めていく力になります。

 

「空気は変えられる。そして、空気は資産になる」

空気というと、多くの人は「曖昧」「感覚的」「属人的」と感じます。

しかし、今日紹介した経営者たちは、それを“経営資源”として扱っていました。

 

空気を見えるようにする

空気を整えるルールをつくる

空気を守るために発信し続ける

 

こうした日々の取り組みが、「空気を文化に」「文化を資産に」変えていく。

 

それこそが、まさに『透明資産経営』の真髄です。

 

あなたの会社にも、空気がある

──それを育てる覚悟はありますか?

 

最後にお伝えしたいのは、空気のデザインは特別な会社だけのものではないということです。

大企業でも、小さな会社でも、たった一人の店でも。

 

経営者が“空気”に意識を向けることから、すべては始まります。

 

見えないからこそ、強くできる。

感じるからこそ、動ける。

そして、育てるからこそ、会社は変わる。

 

あなたの会社の「空気」は、すでに資産です。

あとは、それを信じて、整え、伝えるだけです。

 

―勝田耕司