【透明資産経営のススメ】“空気で選ばれる会社”になる──スターバックスの顧客体験とブランドの空気価値
“空気で選ばれる会社”になる──スターバックスの顧客体験とブランドの空気価値
こんにちは、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
なぜ、あの会社を「なんとなく好き」と感じてしまうのか?
私たちは日々、無数の企業やブランドと接しています。
似たような商品、似たようなサービス、似たような価格帯──。
それでも、なぜか「こっちを選びたくなる」会社がある。
その理由を突き詰めていくと、多くの場合、明文化しにくい“雰囲気のよさ”や“空気の心地よさ”に行き着きます。
それは、まさに『透明資産』の働きです。目に見えないが、確実に作用し、企業の価値を底上げする“空気の価値”こそ、これからの時代のブランディングの核心になるのです。
スターバックスに見る「空気価値ブランド」の設計
スターバックスを訪れたとき、私たちは「コーヒーを買う」という目的以上に、「空気を味わう」という無意識の期待を抱いています。
あの香り
あの照明
あの音楽
あの接客のトーン
ひとつひとつを分析すれば、特別奇抜なことはしていません。しかし、それらが“統一された思想”のもとに設計されているからこそ、「居心地のよい空気」が生まれるのです。
ブランドとは「認知の記憶」ではなく、「体感の記憶」になりつつあります。スターバックスは、「体験の設計」=「空気の演出」によって、世界で最も強い空気価値ブランドのひとつとなったのです。
顧客の“感情”が、企業の未来を決める
従来、マーケティングやブランディングは「認知率」「好意度」「購入頻度」といった指標で語られてきました。しかし、今やそれだけでは不十分です。
SNSや口コミ文化の進展により、顧客が“感じたこと”が即座に拡散され、企業価値に直結する時代になっています。
・スタッフのちょっとした一言が、好感を生む
・空間の落ち着きが、滞在時間と消費額を伸ばす
・会話のトーンが、ブランドイメージを決める
このように、「感じがいい」「なんか好き」という“空気の印象”が、いまやブランドの根幹を担っているのです。
『透明資産』としての空気ブランディング
『透明資産』経営においては、空気を“意図的に”設計・運用します。
つまり、
どんな空気をお客様に感じてほしいのかを明確にし、その空気を現場で「再現可能な形」に落とし込み、社員やスタッフが“空気の担い手”として振る舞える状態にするというステップが不可欠です。
たとえば、
・受付スタッフの声のトーンとテンポ
・店舗の導線と視線の流れ
・使用するBGMのリズムと音圧
・ホームページに流れる文章の雰囲気
こうした細部に“共通する思想”を流し込むことで、「この会社、なんか感じがいい」と思わせる空気の価値が形成されていくのです。
空気の価値は、競合優位を築く“無形の武器”
競合がどれだけ価格や商品で模倣してきても、空気の価値はそう簡単にコピーできません。なぜなら、それは“文化と思想の集合体”だからです。
『透明資産』とは、
その企業らしさを体現する空気の構造であり、お客様の無意識に作用するブランドの核であり、採用・定着・紹介・リピートといったビジネスの土台を支える無形の価値です。
たとえばスターバックスでは、新店舗でも同じ空気感が維持されています。それは、「ロゴ」や「マニュアル」ではなく、スタッフひとりひとりの“空気づくり力”が高いから。
つまり、空気の価値とは、ブランドの「再現性のある魅力」なのです。
あなたの会社も、「空気で選ばれる会社」へ
最後に、今日から始められる3つの空気ブランディングアクションをご紹介します。
- 「感じがいい」を分解する
お客様が「感じがいい」と思った瞬間の事例をチームで集め、言語化してみましょう。
どんな言葉?
どんな表情?
どんな空間?
それは“再現可能な設計”になります。
- 空気の担い手を育てる
「人柄」や「性格」で済ませるのではなく、
空気を察する力
空気を整えるスキル
について周囲に波及できるメンバーを社内から発掘しましょう。
- お客様の“感情ログ”を拾う
SNS、アンケート、レビューサイトなどに現れる、
「なんかいい」
「居心地がよかった」
「あのスタッフの感じが良かった」
といった“感情語”を記録・分析し、空気の価値の強化につなげましょう。
空気は、最大の差別化資源である
「目に見えないから、軽視される」
──そんな時代はもう終わりです。
いまや、空気こそが最大の競争優位を生み出す“差別化資源”になりました。
スターバックスがそうであるように、あなたの会社も、「空気で選ばれる会社」になることができます。それは、技術でもなく、広告でもなく、戦略でもなく──
『空気を意図してつくる』という覚悟から始まるのです。
―勝田耕司