【透明資産経営のススメ】社員が空気の担い手になる──スターバックスに学ぶ採用・教育・エンゲージメントの仕組み
社員が空気の担い手になる──スターバックスに学ぶ採用・教育・エンゲージメントの仕組み
こんにちは、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
“感じのいい空気”は、誰がつくっているのか?
あなたがスターバックスに足を運んだとき、
「なんだか、感じがいいな」と思うのは──
コーヒーの味でも、ソファの硬さでも、音楽の選曲でもありません。
それは、おそらく「人」ではなでしょうか、、、
忙しそうなのに笑顔で迎えてくれるスタッフ
一人でいる自分にさりげなく話しかけるタイミング
名前で呼んでくれる“ちょっとしたパーソナル感”
これらは、マニュアルでは生まれません。
にもかかわらず、全国どの店舗でも“なんとなくいい空気”が保たれている。
この再現性の源は、社員一人ひとりが“空気の担い手”として機能しているからです。
スターバックスが求める人材像に「経験」「スキル」はない
スターバックスの採用基準を見てみると、非常に特徴的です。
「バリスタ経験者」や「飲食接客スキル」などは一切問われません。
むしろ、以下のような非言語的・内面的な資質が重視されます。
ホスピタリティ精神を持ち、人に喜んでもらうことにやりがいを感じる人
状況に応じて柔軟に動ける人
仲間との関係性を大切にする人
つまり、空気を乱さない・空気を良くする資質を最初から見ているのです。
これは、スキルを“後から育てる”ことよりも、
“空気を扱う感性”の初期値を重視する戦略だといえます。
教育の目的は「接客の型」ではなく、「空気の言語化」
スターバックスの教育研修は、一般的なマニュアル接客と異なります。
接客フレーズを“覚えさせる”のではなく、
「なぜそれをするのか」を“考えさせる”構造になっています。
たとえば──
「商品説明より、あなた自身の言葉で話していい」
「感じが良いとお客様が思うのは、言葉ではなく態度と間」
「いい接客とは、目の前の相手に“ちゃんと気づいている”という証」
このように、空気を“感じて・言語にし・再現する力”を養成しているのです。
これはまさに『透明資産』が提唱する
「空気の意図化 → 行動化 → 再現化」のプロセスそのものです。
スタッフが“空気の守り手”になる3つの仕掛け
では、スターバックスの空気が、全国どの店舗でも崩れない理由は何か?
その鍵となるのは、次の3点に集約されます。
① “想い”を言語化したミッションカードの活用
社員は、企業理念やビジョンではなく、
「日々の行動に落とし込まれた“意味ある指針”」で動いています。
ミッション:
人々の心を豊かで活力あるものにするために──
一人のお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから
これは単なるスローガンではなく、
“今日の行動に反映できる思想”として浸透しているのです。
② 「空気に気づく力」を育てる評価制度
スターバックスでは、業績評価に「感じの良さ」は直接含まれません。
しかし、人間関係やチーム貢献度に関する評価項目が多く、
「空気を良くする人」が評価される設計になっています。
感謝を言葉で伝えているか?
他メンバーのフォローに積極的か?
周囲の雰囲気が沈んでいるときに、動けるか?
このような指標が、“空気づくりの担い手”を育てていくのです。
③ 「誰かが見ている」からではなく、「誰かのために動く」文化
感謝のメッセージを送り合うカルチャー、
ポジティブなフィードバックが日常的に流れる空間。
これは、監視でもマネジメントでもありません。
“相手の存在を尊重する文化”が、空気を整えているのです。
『透明資産』としての「社員の空気づくり力」
ここまでを『透明資産』経営の視点で整理すると、
スターバックスでは、以下のようなモデルが完成しています。
ステージ | スターバックスの実践例 | 『透明資産』との関係性 |
採用段階 | 感覚・空気感覚に敏感な人材を選抜 | 空気を崩さない“土壌づくり” |
教育・育成 | 空気の意図を言語化し、接客に落とし込む | 空気の“デザイン力”を育てる |
組織カルチャー | 感謝と承認、関係性を大切にする文化 | 空気が循環し、維持される“自走組織”へ |
つまり、スターバックスでは「空気」を仕組みで運用しているのです。
しかも、それを“人”という資源を通じて再現している。
これは、まさに『透明資産』の活用例として最も洗練された実践です。
空気を担う人材を、どう育てるか?
ここで、経営者の皆さんに問いかけたいのは──
「あなたの会社の空気を担っているのは誰ですか?」
「その人たちは、“空気のつくり方”を理解していますか?」
「良い空気が“仕組み”として再現されていますか?」
採用も育成も、「人手を埋めるため」ではなく、
“空気を支える仕組みのパーツ”として位置づけるべき時代です。
最後に──空気は、社員の姿勢で決まる
経営は、戦略と仕組みだけでは動きません。
社員がどう“感じて”、どう“振る舞っているか”が、空気に現れます。
そして空気は、社員によって育ち、社員によって壊されもします。
だからこそ、
『透明資産』は人材戦略と切っても切れない関係にあります。
スターバックスのように、
「空気の担い手」を採用し、育て、支える仕組みをあなたの会社でも。
―勝田耕司