「理念が“空気”になる会社、ならない会社──パーパス経営の鍵は透明資産にある」
こんにちは、
透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
理念が、貼り紙になっていないですか?
「我が社のミッションは──」
「私たちのパーパスは──」
経営者の想いを込めて掲げた理念やミッション・バリュー。
ところが、数年経つとこうなる会社が多くあります。
社員が覚えていない
入社式と辞令のときだけ読むものになっている
現場ではまったく意識されていない
つまり、“貼り紙”になってしまっているのです。
一方、理念が“空気”になっている会社もあります。
社員が理念を口にしながら行動する
会議で価値観が自然に引き合いに出される
お客様がその会社の「らしさ」を感じてリピートする
この違いは何か?
答えは、理念が“空気化”されているかどうかです。
理念が「伝わる」と「浸透する」は違う
「うちの社員にも理念を伝えています」と言う経営者は多いです。
しかし、伝える=浸透するではありません。
伝えたつもりが届いていない
理解はされても、使われていない
声では言えるけれど、行動に結びつかない
これはすべて、“空気に乗っていない理念”です。
理念は情報ではなく、体感で理解される必要がある。
それが『透明資産』という“空気づくり”の視点です。
理念が空気になる会社の共通点
私がこれまで支援してきた企業で、理念が現場に浸透している会社には、
いくつかの共通点がありました。
① 理念が“使われている”
・朝礼のエピソードトークに理念を絡める
・会議での意思決定に「どっちが理念に沿っている?」を確認
・社内表彰に「理念を体現した行動賞」がある
理念を飾るのではなく、“使う”ことで空気に溶け込んでいきます。
② トップが日常会話で自然に使っている
・「これはウチの“未来志向”の価値観に合っているよね」
・「あの判断、理念に照らすとどう?」
・「今の一言、まさにウチの“誠実さ”だったよ」
理念が“演説用の言葉”ではなく、“社内語”になっているのです。
③ 新入社員や若手が、理念を語れるようになっている
・理念を使ったロールプレイ研修
・理念の解釈文を新人が書く取り組み
・“理念に基づく判断”をフィードバックする文化
ここまでくると、理念は「空気の一部」です。
もはや意識して使っていなくても、全員が“そのフィルター”を通して動いています。
理念が形骸化する会社のパターン
一方、うまくいかない会社は以下のような傾向があります。
- 策定のプロセスが“外注”で終わっている
プロに頼んで立派なスローガンはできた。
でも、社員はまったく関わっていない──
これでは“自分ごと”になりません。
- トップが「語らない」
「もう何度も言ったから…」
「毎年冊子に載せてるし…」
語らない理念は、静かに消えていきます。
理念とは“繰り返し語られてこそ、空気になる”ものです。
- 評価制度とリンクしていない
理念と評価が分断していると、社員は「現実は別」と感じます。
理念を行動に落とし、それを評価に反映させなければ、
「それっぽいこと」になってしまうのです。
“空気設計”で理念は文化になる
理念が現場に生きるために必要なのは、空気の設計です。
つまり、『透明資産』の仕組みを使って理念を“体感化”させる。
具体的には以下のような仕掛けがあります。
◎【言葉の体験化】
→「理念を語る場」を設ける(語り合う/表現する)
→ 社員が自分の経験に重ねて語れるようにする
◎【行動との接続】
→ 理念に紐づいた行動指針(バリュー)を定義
→ 週報や面談でその行動をふり返る仕組み
◎【空気として記録する】
→ 日報に「理念を感じた瞬間」記入欄
→ 空気温度サーベイで「理念の存在感」項目を入れる
これらは、理念を“見える言葉”から、“感じる空気”に変換する手法です。
理念が空気になると、何が起こるのか?
理念が空気になると、次のような変化が現れます。
- 経営判断がブレなくなる
→「この判断は、ウチの理念に合ってるか?」で決まる
- 採用や定着率が上がる
→「この空気、好きです」「価値観が合う」と応募される
- 社内コミュニケーションが柔らかくなる
→ 共通言語があるから、対話の深度が増す
- 顧客が“らしさ”を感じてファンになる
→ サービス以上に「その会社の空気」に惹かれる
これこそ、理念が経営資源になる瞬間です。
最後に──理念は、経営の“空気圧”である
車もタイヤの空気が抜ければ走れません。
会社も同じです。理念という“空気圧”が、行動を支え、方向を整えます。
『透明資産』とは、
企業の持続的成長につながる空気を設計し、運用し、測定し、補充し、流通させる仕組みです。
理念を語るだけでなく、空気として動かす。
これからのパーパス経営において、最も重要な鍵は、
「空気にして伝える力」なのです。
―勝田耕司