【透明資産経営のススメ】店舗間格差をなくす──スターバックスノ“感じの良さ”を全国で再現する『透明資産』の仕組み
店舗間格差をなくす──スターバックスの“感じの良さ”を全国で再現する『透明資産』の仕組み
こんにちは、
透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
「あの店舗はすごく良かったけど…」が生まれる理由
「この前行った〇〇店は、すごく感じが良かったけど、別の店はちょっとガッカリだった…」
これは多店舗展開している企業でよく聞かれる声です。
お店やオフィス、サービス窓口など、人が対応する場では、空気の差が如実に表れます。
味や価格、ロゴ、商品内容は同じはずなのに、
“感じ”がまったく違う──。
それは、「空気の再現性」が仕組みとして整っていない証拠です。
この「空気の質のばらつき」をほぼ感じさせない企業があります。
それが、スターバックスです。
全国どこへ行っても、「あ、スタバだ」と思わせる、
心地よさと安心感のある空気。
今回は、スターバックスがどのように“空気の再現”を行っているかを読み解き、
『透明資産』経営の実践につなげていきます。
空気の差が生まれる3つの原因
まず、店舗間で「感じの良さ」に差が出てしまう原因は、主に以下の3点です。
① 人に依存している
ベテランがいる店舗は空気がいいが、初心者中心の店舗はギスギス
店長の人柄や価値観で雰囲気が左右される
→ 属人的経営は、再現性を担保できない。
② 理念や価値観が“言語化されていない”
「うちはお客様第一主義だから」と言っても、解釈がバラバラ
感じの良さの基準が言語化されていないため、スタッフによってブレが生じる
→ 「いい空気」が感覚や経験に頼ってしまう。
③ 体現の仕組みがない
研修やマニュアルに“空気感”の部分が反映されていない
感じの良さが“教育項目”に入っていない
→ 教えないものは、伝わらない。
スターバックスは「空気の再現」を設計している
全国どこに行っても、スターバックスの空気には統一感があります。
でも、それは“偶然”ではなく、戦略的に「空気」を設計し、再現しているのです。
以下、その具体的な仕組みを3つの視点から紐解きます。
- 空気を“言語化”して共有する
まず重要なのは、「感じの良さ」を定義していること。
たとえば、スターバックスには以下のような価値観があります
Be Welcoming(誰にでも心地よい場を提供する)
Be Genuine(誠実に対応する)
Be Considerate(相手を思いやる)
Be Knowledgeable(商品・サービスを深く理解する)
Be Involved(チームの一員として関わる)
これらは単なる“スローガン”ではありません。
日々の行動評価、フィードバック、採用、育成、表彰に全てリンクしています。
つまり、「良い空気とはこういうものだよ」という価値観を
全スタッフが共有できる“共通言語”に変換しているのです。
『透明資産』でいうところの、
「空気の意図を言葉で設計する」フェーズです。
- 空気を“体験で学ぶ”設計
スターバックスの新入社員研修は、驚くほど現場体験重視です。
マニュアルよりも、“感じる”ことを重視する設計がなされています。
ロールプレイでは、「この言い方だと冷たく聞こえるね」など、空気の質感を意識させる
店舗OJTでは、「この空気を感じ取ってほしい」という観察型教育が徹底されている
フィードバックも、「売上」ではなく「感じの良さ」が先に来る
つまり、体験→言語化→実践→再フィードバックというサイクルで
“空気感”を染み込ませていくのです。
『透明資産』で言うと、
「見えないものの定着と再現性」のプロセスです。
- 空気の質を“数字化”し、評価に入れる
実は、スターバックスでは
「感じの良さ」も評価指標のひとつになっています。
たとえば
「職場の雰囲気に貢献しているか」
「お客様が店舗に滞在している時間の長さ」
「一人のお客様にかけた丁寧さのスコア」など
これは、“見えない価値を評価する”姿勢の表れです。
数字に出にくいものを、
あえて可視化・評価対象とする──
これが、『透明資産』の考え方そのものです。
『透明資産』としての「空気の再現性設計」
以下は、スターバックスの手法を『透明資産』の構造に当てはめたフレームです。
ステップ | スターバックスの実例 | 『透明資産』視点 |
①意図の言語化 | Be Welcomingなどの行動指針 | 空気の設計図づくり |
②体験の再現性 | ロールプレイとOJTでの習得 | 文化のインストール |
③可視化と評価 | 感じの良さをスコア化・表彰 | 空気の資産化と定着 |
店舗間格差は「空気の差」である
多店舗展開において、
味や商品は標準化できても、
空気感の標準化は最も難しい領域です。
しかし、その空気の再現性こそが、
顧客の信頼とロイヤルティの基盤になります。
スターバックスは、
それを「設計できるもの」として扱い、
意図的に空気を再現するための仕組みを持っている。
あなたの会社でも、「空気の再現性」に本気で取り組めば、
“感じがいい会社”は、意図してつくれるようになります。
最後に──“感じの良さ”は、つくれる。そして遺せる
『透明資産』とは、感じの良さを
感覚で終わらせず、資産にしていく設計経営です。
スターバックスが実践しているのは、
「空気を感性ではなく仕組みで再現する」経営。
それはまさに、『透明資産』そのものです。
―勝田耕司