『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】働きがいは制度ではなく「間合い」から生まれる。透明資産が埋める経営と現場の決定的溝とは?

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

ー「立派な制度」が会社を殺すとき

経営者の皆様、自問してみてほしい。 「うちは他社に負けない福利厚生を整えている」「テレワークも自由、オフィスにはフリードリンク、評価制度もコンサルを入れて刷新した。なのに、なぜ社員の目が死んでいるのか? なぜ主体的な提案が出てこないのか?」

もしあなたがそう感じているなら、答えは明白だ。あなたは「見える資産(制度・設備)」を整えることに熱心なあまり、それらを動かすためのOSである「透明資産(空気・間合い)」のアップデートを忘れている。

武道において、どれほど優れた「技(制度)」を持っていても、相手との「間合い」を誤れば、その技は空を切り、逆に隙を突かれることになる。経営も同じだ。制度という箱をいくら作っても、そこに流れる「人間関係の空気」が冷え切っていれば、制度は単なる「権利の主張」や「サボるための隠れ蓑」に成り下がる。

本当の働きがいとは、制度の充実から生まれるのではない。社長と社員、あるいは社員同士の「心理的な間合い」が適切に設計されているか、そこから生まれるのである。

ーエビデンスが示す「関係性の質」と「生産性」の相関

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「2万人調査」の結果を深く読み解くと、非常に興味深い事実が浮かび上がる。従業員のパフォーマンスに最も寄与するのは「報酬の高さ」や「休みの多さ」ではなく、上司や同僚との「信頼関係の質」であるという点だ。

また、和光大学の研究リポジトリで論じられている「組織風土変革」においても、組織の病理現象(情報の停滞、責任転嫁、学習の停止)の克服には、構造的な改革以上に「心理的な距離感の再構築」が不可欠であると結論づけられている。

データが証明しているのは、「大切にされている」という実感と、「自分はこのチームに貢献できている」という手応えの合致こそが、最強のモチベーションを生むということだ。これが透明資産の正体であり、この資産が潤沢な組織では、制度がなくても人は動く。逆に透明資産がマイナスの組織では、どんな手厚い制度も「コスト」でしかなくなる。

ー成功事例に学ぶ「間合い」の設計術

「働きがいのある会社2025」の上位企業や、独自の積極的な取り組みで注目される企業の事例から、この「間合い」の作り方を紐解いてみよう。

例えば、シスコシステムズ合同会社。彼らは世界的に「働きがい」の評価が高いが、特筆すべきは「トラスト(信頼)」をベースにした圧倒的な自律性だ。制度としてのテレワークがあるのではない。「どこにいても、君を信頼している」という透明な空気が先にあり、その空気があるからこそ、社員は監視されなくても自律的に高いパフォーマンスを出す「間合い」を維持できる。

また、セールスフォース・ジャパンが提唱する「Ohana(家族)」の文化も、単なるアットホームな雰囲気作りではない。これは、プロフェッショナルとしての厳しい要求をぶつけ合うための「安全な間合い」を確保するための戦略である。

「私たちは家族だ(だから見捨てない)」という安心感という透明資産があるからこそ、ビジネスの現場では妥協のない、時に激しい意見交換が可能になる。

中小規模の企業でも、この「間合い」の設計は可能だ。例えば、株式会社土屋ホームなどの住宅メーカーや、アクロクエストテクノロジー株式会社のようなIT企業では、全社員が経営情報を共有し、互いの給与さえも納得感のあるプロセスで公開されることがある。

情報の不透明さが生む「猜疑心」という壁を取り除き、社員を「経営のパートナー」という至近距離の間合いに招き入れているのだ。

ー透明資産を磨く「3つの心理的間合い」

経営者が今すぐ見直すべき「間合い」には、3つの次元がある。

1. 経営者と社員の「垂直の間合い」

社長、あなたは「雲の上の存在」になっていないか。社員があなたに「NO」と言える距離にいるだろうか。透明資産経営では、社長が自らの弱さや迷いをさらけ出す「自己開示」を推奨する。あなたが透明になれば、社員との心の距離が縮まり、現場の真実が吸い上げられるようになる。

2. 部署間の「水平の間合い」

セクショナリズム(縦割り)は、透明資産の天敵だ。営業と製造、開発とサポート。これらの間に流れる「あいつらは分かっていない」という濁った空気を、あえてシャッフルする「場」を意図的に作る。部門を跨いだプロジェクトや、相互理解のワークショップは、透明資産を横に広げる投資である。

3. 自分自身との「内的な間合い」

社員一人ひとりが、自分の仕事の価値をどう捉えているか。これを「ジョブ・クラフティング」と呼ぶが、会社が「やらされている仕事」を「自分のための仕事」へと変換する空気を醸成できているか。

ー2026年、透明資産が「採用」を制する

2026年、労働力不足はさらに深刻化し、採用市場は「選ぶ側」から「選ばれる側」へと完全に主導権が移っている。 今、優秀な若手人材が求人票でチェックしているのは、福利厚生の欄ではない。SNSや口コミサイトに漏れ伝わってくる「その会社の空気」だ。

「この会社は、社員を数字として見ているのか、人間として見ているのか」 「失敗した時に、背中を支えてくれる空気があるのか」 「挑戦を愉しめる間合いが、そこにはあるのか」

彼らは、透明資産の残高を直感的に嗅ぎ分ける。透明資産が豊かな会社には、自然と人が集まり、リファラル(紹介)が起きる。三井金属鉱業や賀正軒が証明したように、独自の空気感を持つ企業には、広告費をかけずとも「その空気に触れたい」という人材が吸い寄せられる。これこそが、透明資産経営による「採用コストのゼロ化」という究極の利益貢献である。

ー制度を疑い、空気を信じよ

社長、今日から一週間、あえて「制度の話」を封印してみてはどうだろうか。 代わりに、社員一人ひとりと向き合い、彼らの心の声に耳を傾ける「間合い」を確保してみてほしい。

社員が「この社長は自分を見てくれている」と感じた瞬間、組織の空気は変わり始める。濁っていた水が澄み渡るように、情報の滞留が消え、新しいアイデアが芽吹き、顧客への接し方が劇的に進化する。

働きがいは、誰かに与えられるものではない。適切な間合いの中に、自然と湧き上がってくるものだ。 その「湧き水」を枯らさないための環境整備こそが、あなたの真の仕事である。透明資産経営という最強の武器を手に、制度という鎧を脱ぎ捨てた「本物の組織」を共に創り上げようではないか。

あなたの会社の「間合い」、今日は10センチ、近づけましたか?

ー勝田耕司