こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー「制度の承継」よりも「空気の承継」を急げ
経営者の皆様、事業承継という人生最大の決断を前に、何に頭を悩ませておられるでしょうか。資産の移転、借入金の個人保証、あるいは後継者の経営能力。もちろん、これらは無視できない課題です。しかし、承継の現場で最も多く、そして深刻な悲劇を生んでいるのは、実は「空気の断絶」です。
先代が長年かけて醸成してきた「社員との信頼関係」や「顧客との暗黙の絆」。これらはすべて、数値化できない透明資産の源泉です。後継者がこの資産を軽視し、あるいは理解しないまま、最新の「やり方」だけを強引に持ち込もうとしたとき、組織の空気は一瞬にして濁り、崩壊が始まります。ベテラン社員の離職、顧客の離反、そして社内の冷ややかな沈黙。これらはすべて、透明資産という土台を無視して「建物(制度)」だけを建て替えようとした結果の報いです。事業承継の本質とは、資産を譲ることではなく、組織が呼吸してきた「透明な志」を、次世代の呼吸へと繋ぐことなのです。
ー感性価値を繋ぐ、老舗メーカーの「透明な脱皮」
事業承継において、先代の「在り方」を尊重しつつ、現代に合う「やり方」を上乗せした見事な事例として、石川県の小松マテーレ株式会社を挙げたいと思います。彼らは伝統的な染色技術を持つ老舗ですが、承継のプロセスにおいて「独自の空気感」を損なうことなく、世界的な先端材料メーカーへと進化を遂げました。
彼らが承継したのは、単なる工場や技術ではありません。どんな困難な注文にも「できませんと言わない」という、先代から受け継がれた「挑戦の空気」です。後継者は、この透明な志(在り方)を核に据えながら、感性価値という新しい「やり方」を上乗せしました。古い職人の技をデジタルで可視化し、アートや建築といった異分野と融合させる。この「古い空気を新しい器で磨く」という透明な意思決定が、社員の誇りを高め、世界中からクリエイティブな人材を惹きつける透明資産へと昇華されたのです。
また、東京都大田区の町工場、ダイヤ精機の事例も極めて示唆に富んでいます。先代の急逝により、専業主婦から二代目を引き継いだ諏訪貴子氏は、当初、現場の職人たちとの強烈な「空気の壁」に直面しました。彼女が最初に行ったのは、制度の刷新ではなく、徹底的な「対話による空気の洗浄」でした。
彼女は、先代が守ってきた「品質への厳しさ」という透明資産を誰よりも深くリスペクトしつつ、情報の不透明さを排除するためのIT化や、若手の抜擢という新しい風を吹き込みました。「先代の想いは私が一番大切にする。その上で、みんなで生き残るための新しいやり方を創ろう」。この透明な覚悟が職人たちの心を動かし、不透明だった工場の空気が、次世代を担う若手とベテランが切磋琢磨する「活気ある空気」へと一変したのです。
ー統計が示す「承継後の成長」と「信頼資産」の相関
中小企業庁の「中小企業白書」などのデータによれば、後継者が「先代の経営方針を尊重しつつ、新たな事業領域に挑戦した企業」は、そうでない企業に比べて、承継後の経常利益率が有意に高いことが示されています。また、帝国データバンクの調査でも、承継が成功する要因のトップに「従業員の理解と協力」が挙げられています。
これは、透明資産経営が説く「在り方の継承」と「やり方の革新」のバランスがいかに重要かを物語っています。先代が築いた信頼資産を一度解体してしまうと、再構築には何倍もの時間と労力がかかります。逆に、信頼という透明資産の源泉を「レバレッジ」として活用し、そこに現代のスピード感を加味できる後継者は、承継を「停滞」ではなく、組織の「第二創業」へと変えることができるのです。
ー社長塾と社内学校がバトンを繋ぐ「神域」となる
透明資産を毀損させない事業承継を実現するために、私は「社長塾」の場を、先代と後継者が「志の答え合わせ」をする神聖な場として活用することを提唱しています。先代が「なぜこの会社を作ったのか、何を一番守りたかったのか」という在り方を語り、後継者がそれを「今の時代なら、こういう形で実現したい」と翻訳する。この透明な対話のプロセスを社員が見守ることで、組織全体の空気が一つにまとまります。
そして「社内学校」は、後継者が現場のベテラン社員から「やり方(秘伝の技)」を教わる謙虚な学びの場となるべきです。後継者が「教える側」ではなく「教わる側」として現場の苦労を知ることで、社員との間に「助け合い」という新しい透明資産が生まれます。後継者が現場の技術をリスペクトし、そこにデジタルの効率性を付け加える「共同作業」こそが、新しい時代の組織の空気を作っていくのです。
ー2026年、承継は「空気のアップデート」である
現在、2026年の日本において、事業承継は社会全体の最重要課題となっています。多くの後継者が「古い空気を変えなければ」と焦るあまり、組織が大切にしてきた「透明な良心」まで捨て去ってしまう過ちを犯しています。
社長、そして後継者の方。どうか忘れないでください。事業承継とは、過去を否定することではありません。過去の「良質な空気」を抽出し、それを未来へ運ぶための「新しい風」を吹かせることです。先代の「在り方」を透明な誇りとし、後継者の「やり方」を透明な勇気とする。この二つの透明さが重なり合ったとき、組織には「創業時以上の熱量」が宿ります。
承継の成敗を決めるのは、株数でも預金額でもありません。 「この会社を守り抜く」という、先代と後継者が共有する「透明な愛」が、社員の心にどう響いているか。その一点に尽きるのです。
あなたの会社のバトンは、今、どのような「温度」で手渡されていますか?
ー勝田耕司

