こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
―「ゴリラは、見えましたか?」
有名な動画があります。白いシャツと黒いシャツの二つのチームが、それぞれバスケットボールをパスし合っている。あなたの役目は、「白いチームが、何回パスをしたか」を、数えること。あなたは真剣に目で追い、正確に「15回」と数え上げます。簡単な課題です。
ところが、そのあと、こう尋ねられます。「ところで、ゴリラは、見えましたか?」。ゴリラ? 何のことだ、と、あなたは動画を巻き戻す。すると——そこには、着ぐるみのゴリラが、堂々と画面の中央まで歩いてきて、こちらを向き、胸を叩き、9秒間も居座ってから、悠々と歩き去っていたのです。ずっと、そこに、いた。それなのに、この動画を見た人の、およそ半分が、そのゴリラに、まったく気づきません。目が悪いからではありません。注意が、別のところに向いていたから。これは、単なる余興ではありません。あなたの会社が、世界を「どう見ているか」についての、恐ろしい警告なのです。
―「集中」が、目の前のものを、消してしまう
これは、心理学者ダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスが、1999年に行った、伝説的な実験です。彼らは、この現象を「非注意性盲目(インアテンショナル・ブラインドネス)」と名づけました。人は、一つのことに注意を集中させると、目の前にある、明白で、予想外のものに対して、盲目になる。ゴリラが見えないのは、「目」ではなく、「心」に対して、なのです。
そして、この実験には、経営者が肝に銘じるべき、重要な細部があります。「黒いチーム」のパスを数えるよう指示された人は、ゴリラに気づく確率が、ぐっと高かった。ゴリラが黒っぽく、彼らが注目していたものに、近かったからです。つまり——あなたが「何を探すか」が、あなたが「何を見られるか」を決める。そして、あなたは、自分の注目対象に「似ていないもの」に対して、最も盲目になるのです。
―注意という「空気」を、あなたは設計している
ここに、あなたが夜も眠れなくなるべき、理由があります。「集中」は、タダではありません。あなたが、組織の注意を、何か一つに向けるたびに、あなたは同時に、それ以外のすべてに対して、組織を盲目にしているのです。そして、ほとんどの経営者が見落とすのは、ここです。その「集中」を設計しているのは——あなた自身だ、ということ。
あなたが何を測り、何を評価し、何をすべての会議の議題にし、何に慌てるか。それらはすべて、「白いチームのパスを数えろ」という指示となって、会社全体に、放送されています。社員は、忠実に、あなたが指さした方向へ、注意を集中させる。そして、彼らがパスを数えている間に、ゴリラたちが、画面を横切っていく。静かに去っていくお客様。競合の新しい一手。冷めていく、あなたの最優秀の社員。隅で、静かに育っていくリスク。会社全体の注意——何に耳を澄まし、何に対して盲目でいるか——は、その会社の空気の、最も強力で、最も検証されていない部分の一つです。そして、あなたが、その設計者なのです。空気を設計するとは、社員が何に「集中するか」を決めることだけではありません。それは、意図するとしないとにかかわらず、社員が何に対して「盲目になるか」を、決めることでもあるのです。
―「突然」起きたことは、9秒間、そこにいた
さあ、正直に、自らに問うてください。あなたの会社は今、何の「パスの回数」を、数えているでしょうか。四半期の数字。大型の新商品。全員で消している、あの一つの火事。そして——その画面を、目の前を、堂々と横切っているのに、誰にも見えていないものは、何でしょうか。
思い出してください。最後に、何かが「突然、どこからともなく」起きたときのことを。主要顧客の離反。競合の飛躍。エースの退職。品質の崩壊。それらは、ほとんど決して、「どこからともなく」やって来たのではありません。それは、画面に歩いて入り、こちらを向き、9秒間、胸を叩いていた。それなのに、あなたの組織全体が、それを見逃した。あなたが、全員の注意を、別のものへと、設計してしまっていたから。そして、より残酷な真実は、これです。あなたが、たった一つの指標に、強く、一心に集中を強いれば強いるほど、あなたは、誰にも見えない、より大きなゴリラを、生み出すことになる。激しい集中は、盲目を「招く」だけではない。盲目を「製造する」のです。
だから、この盲目への備えを、あなたの空気に、設計として、組み込んでください。第一に、その代償を、声に出して名指しすること。あらゆる集中は、同時に、盲目を生む。だから、「これに全員が注目している間、画面を、何が横切っているだろうか」と、問う。第二に、「ゴリラ・チェック」を設計すること。誰か一人に、定期的に、指標から目を上げ、予想外のもの——誰も見張るよう命じられていないもの——を探す役目を、はっきりと与える。第三に、注目対象を、意図的に、動かすこと。黒いチームを見てゴリラに気づいた人のように、時折、注意を、まったく新しい方向へ向け、別のゴリラが、見えるようにする。そして第四に、「新鮮な目」を、守ること。新入りや、部外者や、まだあなたの集中に絡め取られていない人こそ、ゴリラが見える人です。だから、彼らが「あれは、誰も心配していないんですか?」と言ったとき、手で払いのけては、いけません。それこそが、彼らの存在意義なのですから。これをやれば、あなたは、集中しながらも、盲目にならない空気を、設計できます。想像してみてください。数か月後、「どこからともなく」現れる脅威を、それがまだ、画面に歩いて入ってくる段階で、あなたが捕まえている姿を。ゴリラを見張ることを、決してやめない会社を、あなたが設計したから、です。
あなたの会社は、あなたが「探すよう設計したもの」しか、見えません。そして、それ以外のすべてに対しては、どれほど明白でも、どれほど長く、胸を叩いて目の前に立っていても、盲目です。その盲目は、社員の頭の悪さの証ではありません。それは、あなたが設計した「集中」の、組み込み済みの代償なのです。だから、問いは、「今、あなたのビジネスを、ゴリラが横切っているかどうか」ではありません。横切っています。いつだって、そうです。問いは——あなたが、それでもなおゴリラを見られる会社を、設計しているか。それとも、パスを数えることに集中するあまり、部屋で最も重要なものが、9秒もの長い間、まったく見えないままの会社を、設計してしまっているか、です。今この瞬間、あなたの画面を横切っている、「誰も見るように設計されていないもの」は、何でしょうか。
―勝田耕司