『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「スムーズな研修」ほど、身につかない――“ちょうどいい困難”を設計する

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―「わかった気」と「できる」は、別物

何かを学ぶとき、私たちは、こう感じます。「スラスラ頭に入る。よし、身についた」。ところが、UCLAの記憶研究者ロバート・ビョークは、数十年の研究から、驚くべき結論に達しました。「今、簡単に感じる学び方ほど、後で、思い出せない」。逆に、「今、難しく、骨が折れる学び方ほど、後々まで、深く残る」のです。

ビョークは、あえて難しくする学び方を、「望ましい困難」と名づけました。時間を空けて復習する(詰め込まない)。自分でテストする(読み返さない)。異なる種類の問題を混ぜる。答えを見る前に、自力でひねり出す。これらは、その場では、遅く、間違いも多く、「できていない」ように感じる。けれど、長期的な定着と応用力は、圧倒的に高い。逆に、教科書を読み返す、一気に詰め込む——スムーズで、「わかった気」になれる学び方は、「習得したという錯覚(流暢性の錯覚)」を生むだけで、部屋を出た瞬間に、蒸発する。今日は、あなたの会社の「スムーズで好評な研修」が、実は、何も残していないかもしれない、という話をします。

―「今の心地よさ」を、「学び」と取り違える

なぜ、こうなるのか。私たちは、学びを、「今、どれだけ流暢に処理できるか」で、判断してしまう。これが「流暢性の錯覚」です。読み返せば、文字は見慣れて、簡単に感じる。だから「できた」と思う。けれど、「見て分かる(再認)」ことは、「思い出せる(再生)」ことでは、ない。実際、被験者は、効果の低い「読み返し」や「詰め込み」を、系統的に好み、効果の高い「テスト」や「間隔をあけた復習」を、避けます。難しいものを、避けてしまうのです。

ここに、透明資産経営の設計原理があります。あなたは、標準的なやり方で、社員を育てています。研修に送り、そこで、知識を「受動的に、スムーズに」浴びせる。全員が頷き、「いい研修だった」と感じる。けれど、その心地よさこそ、流暢性の錯覚。数週間後、ほとんど、残っていない。本物の学びは、もっと、骨が折れます。思い出そうともがき、テストされ、自力でひねり出し、間隔をあけて反復する。だから、真に力をつける会社の空気を設計するとは、心地よく、忘れられる研修ではなく、「望ましい困難」を、設計することなのです——社員に、思い出させ、応用させ、テストし、間隔をあけて、格闘させる。そして、学びを、「研修の満足度」ではなく、「後で、実際にできるか」で、判断することです。

さあ、あなたの会社の育成を、見てください。それは、スムーズで、好評な、一方通行の研修ではないでしょうか。講師が滑らかに話し、社員が頷き、「わかりやすかった」というアンケートが返ってくる。あなたは、満足する。けれど、その「わかりやすさ」こそ、罠かもしれない。三か月後、その内容を、社員は、実際に「できる」でしょうか。それとも、心地よく浴びて、きれいに忘れたでしょうか。あなたは、研修の「その場の流暢さ」を、「学び」と、取り違えているのかもしれません。

だから、あえて、「望ましい困難」を、設計してください。教えっぱなしにせず、後日、思い出させる(小テスト、口頭での確認)。一気に詰め込まず、間隔をあけて、反復させる。答えを与える前に、自力で考えさせる。異なる状況に、応用させる。その場では、「難しい」「進みが遅い」と感じるでしょう。けれど、それこそ、学びが起きているサインです。そして、育成の成否を、その日の満足度ではなく、数か月後に「何ができるようになったか」で、測る。想像してみてください。社員が、心地よく忘れる研修ではなく、骨は折れるが、確かに身につく訓練を通じて、本当に、力をつけていく様子を。(ただし、困難は、本人が乗り越えられる範囲でこそ「望ましい」もの。手も足も出ない難しさは、逆効果です。)

人の心は、「今の心地よさ」を、「学び」と、取り違えます。だから、明晰さとは、「その場のスムーズさ」では、ない。「後で、できること」です。スムーズで好評な研修に、安心するのを、やめてください。骨は折れるが、確かに残る、「望ましい困難」を、設計するのです。効果的な学びは、その場では、心地よくないのですから。

―勝田耕司