『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「やらされ感」のない空気を設計すれば、文化は勝手に根づく――1ドルの逆説

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―1ドルで嘘をついた人ほど、本気で信じ込んだ

心理学者レオン・フェスティンガーとジェームズ・カールスミスが、1959年に行った有名な実験があります。被験者に、ひたすら退屈な単調作業を一時間もやらせる。当然、誰もがうんざりしている。ところが、仕掛けはここから。作業のあと、「次に待っている人に、あれは面白かった、と伝えてほしい」と嘘を頼み、その報酬として、ある人には20ドル、別の人には、たった1ドルを渡したのです。

あとで「本当のところ、あの作業は楽しかったか」と尋ねると、驚くべき結果が出ました。20ドルもらった人は「退屈だった」と正直に答えた。ところが、たった1ドルの人は、「けっこう楽しかった」と、本気で答えたのです。報酬が少ない人ほど、退屈な作業を、心から面白かったと信じ込んでいた。今日は、この不可解な逆説の中に隠された、あなたの会社の「文化という空気」を、意図的に設計するための、決定的な鍵をお話しします。

―心(空気)は、行動のあとから、形づくられる

なぜ、こんなことが起きたのか。人は、自分の「行動」と「本心」が食い違うと、強い不快感を覚えます。「退屈だと思っているのに、面白かったと嘘をついた」——この食い違いは、苦しい。20ドルの人は、簡単に解消できます。「まあ、20ドルもらったんだから」。十分な「言い訳」がある。だから本心を変える必要はない。ところが1ドルの人には、その言い訳がない。そこで人は、食い違いを解消するために、行動ではなく「本心のほう」を書き換える。「いや、あの作業は、本当に面白かったんだ」と。

ここに、透明資産経営の、逆説的な設計原理があります。人の心も、組織の空気も、「行動のあと」から形づくられる。そして——外からの見返りや圧力が「小さい」ほど、人は、その行動を深く内面化し、空気は深く根づくのです。多くの経営者は、これを逆にやっています。まず「心」を変えようと、理念を説き、納得させ、それから行動が変わるのを待つ。けれど、順番が逆なのです。空気は、説得では変わらない。望む「行動」を先に設計し、心が追いつくのを待つ——これが、空気を設計するということです。

―大きな報酬・強い圧力は、空気を「根づかせない」

さあ、あなたの会社の話です。ここが、最も重要な点です。あなたが、望む行動を引き出すために、大きな報酬や、強い圧力を使えば使うほど——社員はこう考えます。「自分は、金のために、命じられたから、やらされているだけだ」と。彼らは、行動を「報酬」や「強制」のせいにして、本心を、いっさい書き換えません。だから、報酬や圧力が消えた瞬間、行動も消える。あなたは、高い報酬や厳しい管理で「行動」を買うことはできても、「根づいた空気」を、決して育てられないのです。「やらされ感」のある空気の中では、文化は、絶対に、自らの根を張らない。

逆に、ごく軽い後押しで——ほとんど外からの言い訳がない状態で——社員が、自ら望んで、その行動を取ったとき。その行動は、最も深く、本心へと、空気へと、内面化されていく。だから、文化という空気を設計するなら、こうしてください。まず、望む行動を、社員ができるだけ「自分の意志で」選べるような、ごく軽い状況を設計する。大きな飴も、大きな鞭も、使わない。むしろ、外からの言い訳を、あえて小さく保つ。そして、行動が生まれたら、空気が、あとからついてくるのを、待つ。これこそ、号令で気分を変えようとするのではなく、「行動を設計して、空気を根づかせる」透明資産経営です。

想像してみてください。数か月後、社員が、ある価値観を、報酬のためでも、命じられたからでもなく、「これが自分たちだ」と、心から信じて生きている様子を。誰も見張っていないのに、その空気が、ひとりでに保たれている様子を。あなたが、大きな見返りで行動を「買う」のをやめ、軽い後押しで行動を「引き出し」、空気が追いつくのを、設計して待ったから、です。心は、説得しても変わりません。空気は、号令しても根づきません。それは、自ら選んだ行動の「あと」に、静かに、しかし決して剥がれないほど深く、形づくられるのです。あなたは今、社員の行動を、大きな報酬と圧力で「買って」いませんか。それとも、自ら動きたくなる空気を、軽い手で「設計して」いますか。

―勝田耕司