こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
経営者は、学びます。本を読み、セミナーに通い、コンサルタントの話を聞き、同業の成功事例を研究する。「何をすべきか」を、たくさん、知っている。ところが——その「知っていること」の、ほとんどが、実際の行動には、移されない。会議で、熱心に議論し、立派な方針を掲げ、理念を唱える。それでいて、現場は、何も、変わらない。なぜでしょうか。実は、会社の、最大の問題は、「何をすべきか、知らない」ことでは、ありません。「知っているのに、やらない」こと、なのです。今日は、この「知識と行動のギャップ」という、経営の、根深い病について、お話しします。
―「知らない」と「知っているのにやらない」――後者のほうが、はるかに大きい
スタンフォード大学の経営学者、ジェフリー・フェファーとロバート・サットンは、4年にわたる研究の末、この問題を、「知識と行動のギャップ(ノウイング・ドゥーイング・ギャップ)」と、名づけました。彼らは、こう指摘します。ほとんどの会社は、成功するために「何をすべきか」を、すでに、知っている。あるいは、簡単に、知ることができる。だから、本当の問題は、「知らないこと(無知)」と「知っていること」の間の、ギャップでは、ない。「知っていること」と「実際に、やっていること」の間の、ギャップのほうが、はるかに、大きく、そして、はるかに、高くつく。
考えてみてください。あなたは、「社員を、もっと、信頼して、任せるべきだ」と、知っている。「お客様の声を、もっと、聞くべきだ」と、知っている。「先延ばしにしている、あの決断を、下すべきだ」と、知っている。——知っている。けれど、やっていない。会社が、停滞するのは、知らないからでは、なく、知っているのに、やらないからなのです。
―「話す」ことが、「行動」の代わりになる
では、なぜ、知っているのに、やらないのか。フェファーとサットンは、その原因を、五つ、特定しました。その中で、最も、厄介なのが——「話すことが、行動の代わりになる(スマートトークの罠)」です。
会社は、ある問題について、会議を開き、議論し、分析し、立派な資料を作り、方針を発表する。——そして、「それについて、話した」ことで、まるで、「それを、やった」かのような、錯覚に、陥る。けれど、話すことと、やることは、まったく、別です。フェファーとサットンは、痛烈に、こう言います。「ミッション・ステートメント(理念・方針)は、組織が、行動の代わりに、話で済ませる、最も、ありふれた手段の一つである」。立派な理念を、壁に掲げ、議論し、唱える——それで、やった気になり、肝心の行動は、何も、起きない。そして、恐ろしいことに、「賢そうに、話す」人——とりわけ、鋭く、批判的に、問題点を指摘する人——が、評価される空気の会社では、人は、ますます、「行動」より「賢い話」に、傾いていくのです。
残りの原因も、挙げましょう。②過去の「前例・習慣」が、「今、考えること」の代わりになる(「昔から、こうだ」)。③「恐怖」が、行動を妨げる(失敗を恐れて、動けない。ここでも、恐怖が、敵なのです)。④まずい「評価の仕組み」が、正しい判断を、狂わせる。⑤「社内競争」が、仲間を、敵にする(勝つために、同僚を、蹴落とす空気では、知識は、分かち合われず、行動に、つながらない)。——これらが、「知っている」を「やる」に変える、その回路を、断ち切っているのです。
―「知は、行動から生まれる」
そして、フェファーとサットンが示す、最も深い処方箋が、これです。「知は、行動から、生まれる(ノウイング・カムズ・フロム・ドゥーイング)」。本当の「知」は、本を読んだり、議論したりするだけでは、身につかない。実際に「やってみる」こと、そして、それを、人に「教える」ことを通じて、初めて、深く、血肉になる。だから、「やる」ことと、「知る」ことは、別々では、ない。「やる」ことが、「知る」ことを、深めるのです。そして、「やる」には、必ず、失敗が、伴う。「失敗なくして、行動なし」。だから、失敗を罰する空気の会社では、人は、行動せず、知識は、知識のまま、死蔵されるのです。
ここに、透明資産経営の、核心があります。会社の空気が、「賢く話せば、評価される」「失敗すれば、罰せられる」「社内で、競い合う」ものであれば——知識は、いくら溜まっても、行動には、変わりません。逆に、「話すだけで終わらせない」「失敗を、行動の証として、許容する」「協力し合う」空気の会社では、知識は、どんどん、行動に、変わっていく。知識を、行動に変えるのは、個人の意志だけでなく、「空気」なのです。
さあ、あなたの会社を、正直に、見てください。あなたは、「知っているのに、やっていないこと」を、いくつ、抱えているでしょうか。会議で、議論し、方針を掲げた「だけ」で、やった気に、なっていないでしょうか。失敗を恐れる空気が、行動を、止めていないでしょうか。——そして、この文章を読んでいる、あなた自身も、きっと、多くの経営理論を「知って」いる。けれど、その、どれだけを、実際に「やって」いるでしょうか。
―「知っている」を「やる」に変える空気を、設計する
だから、「知識と行動のギャップ」を、埋める空気を、設計してください。第一に、「話すこと」で、終わらせない。会議や、方針は、「行動を、呼び起こす」ためのものとし、「話した=やった」の錯覚を、断つ。「で、誰が、いつまでに、何をやるのか」まで、必ず、落とし込む。第二に、恐怖を、追放する。失敗を、行動の証として、許容する。「やってみて、学ぶ」を、良しとする。第三に、社内競争を、やめ、協力を、称える。知識が、分かち合われ、行動へと、流れる空気を。
想像してみてください。あなたの会社が、「知っているのに、やらない」会社から、「知ったら、すぐ、やってみる」会社へと、変わったとき——溜め込まれていた、たくさんの「知」が、次々と、行動へ、そして、成果へと、変わっていく様子を。会社の、最大の未開拓資源は、「まだ知らないこと」では、ありません。「知っているのに、やっていないこと」なのです。あなたは、知っていますか。それとも、やっていますか。
―勝田耕司