こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
ある日、突然、大きな事故が、起きる。重大なクレームが、会社を、揺るがす。経営者は、「なぜ、こんなことが、突然」と、頭を抱える。——けれど、本当に、「突然」だったのでしょうか。安全工学が、明らかにしたのは、こうです。大きな災害は、決して、突然、降ってくるのでは、ない。その背後には、必ず、数多くの、小さな兆候が、積み重なっている。そして、その小さな兆候に、どう向き合うかの「空気」こそが、大惨事を、招くか、防ぐかを、分けるのです。今日は、食の安全にも、品質にも、直結する、この法則について、お話しします。
―1 : 29 : 300 という、黄金比
1931年、アメリカの安全技師、ハーバート・ハインリッヒは、55万件を超える、膨大な労働災害のデータを、分析しました。そして、ある、驚くほど、一定の「比率」を、発見したのです。重傷を負う、大きな事故が「1件」起きるとき、その背後には、軽傷で済んだ事故が「29件」あり、さらにその背後には、怪我には至らなかったが、ヒヤリとした、ハッとした「300件」の、小さな出来事(ヒヤリ・ハット)が、存在する。
1 対 29 対 300。これが、「ハインリッヒの法則」です。三角形(ピラミッド)で、表されます。頂点に、たった1つの、大惨事。その下に、29の、小さなトラブル。そして、広大な底辺に、300の、ヒヤリ・ハット。大惨事は、氷山の、一角にすぎない。その水面下には、同じ原因から生まれた、数百の、小さな兆候が、沈んでいるのです。(正直に申し添えれば、この「1:29:300」という比率そのものは、あくまで一つの目安で、現代の研究では、議論もあります。けれど、「大きな失敗は、数多くの小さな兆候の上に、積み重なって起きる」という、核心は、今も、揺るぎません。)
―大惨事を防ぐ唯一の道は、「300」を、拾うこと
この法則が、私たちに、教えることは、明快です。頂点の「1つの大惨事」を、直接、防ぐことは、できません。それは、結果だからです。けれど、底辺の「300のヒヤリ・ハット」を、一つずつ、拾い上げ、その原因を、取り除いていけば——同じ原因から生まれるはずだった、頂点の大惨事も、起きなくなる。三角形を、低く、平たくしていくことが、大惨事を防ぐ、唯一の、確実な道なのです。
ところが——ここに、多くの会社の、落とし穴が、あります。「ヒヤリ・ハットなんて、結局、何事も、なかったのだから、わざわざ、報告しなくていい」。そういう空気の会社では、300の、貴重な兆候が、報告されず、拾われず、闇に、葬られていく。そして、その、見過ごされた兆候が、やがて、1つの大惨事へと、育っていくのです。安全工学が、指摘する、重要な事実があります。「報告されたヒヤリ・ハットの数が、少ない」ことは、「安全だ」という意味では、ない。むしろ、「兆候が、報告されずに、隠れている」、危険な状態かもしれない。報告された、ヒヤリ・ハットの数が、多い会社ほど、兆候が「見えている」、安全な会社なのです。
―「小さな兆候が、報告される空気」を、設計する
ここに、透明資産経営の、核心があります。大惨事を防ぐのは、立派な安全マニュアルだけでは、ありません。それは、「300の、小さな兆候が、安心して、報告され、拾い上げられる空気」です。もし、あなたの会社に、「小さなミスや、ヒヤリ・ハットを、報告すると、叱られる」「余計なことを言うな、という空気がある」「報告しても、どうせ、何も変わらない」という空気があれば——300の兆候は、報告されず、水面下に、沈み、やがて、1つの大惨事となって、浮かび上がる。
さあ、あなたの会社の、空気を、点検してください。現場の社員は、「ちょっと、ヒヤリとした」小さな出来事を、安心して、報告できるでしょうか。それとも、「何事も、なかったのだから」と、黙っているでしょうか。小さなミスを報告した社員は、叱られているでしょうか。それとも、「よく、報告してくれた」と、感謝されているでしょうか。食の安全が問われる現場なら、なおさら、この空気が、命運を、分けます。
―「300」を拾う空気を、設計する
だから、「300の兆候が、拾われる空気」を、設計してください。第一に、ヒヤリ・ハットの報告を、罰するのを、やめる。むしろ、報告した勇気を、感謝し、称える。報告が、増えることを、「危険の増加」ではなく、「兆候が見えてきた、良い兆し」と、捉える。第二に、報告された、小さな兆候に、ちゃんと、対処し、「報告すれば、変わる」という実感を、現場に、渡す。放置すれば、誰も、報告しなくなります。第三に、頂点の大惨事だけでなく、底辺の「ヒヤリ・ハットの数」を、見る指標にする。三角形を、平たくすることを、目指すのです。
想像してみてください。あなたの会社で、現場の、小さなヒヤリ・ハットが、次々と、報告され、拾い上げられ、対処され——そして、その積み重ねによって、大きな事故やクレームが、「起きなくなっている」様子を。それは、運が良かったからでは、ありません。あなたが、300の兆候が、報告される空気を、設計したから、です。大惨事は、突然、降ってはきません。それは、見過ごされた、300の小さな兆候の上に、建つのです。あなたの会社では、その300が、報告されていますか。それとも、闇に、葬られていますか。
―勝田耕司