『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「心から笑え」と命じた瞬間、その笑顔は嘘になる――本物の感情が生まれる空気を設計する

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―「心を込めて、笑いなさい」

社会学者アーリー・ホックシールドが、デルタ航空の客室乗務員の研修を、見学していたときのことです。教官が、新人の乗務員たちに、こう言いました。「心から、そう思っているように、笑いなさい」。すると、隣に座っていた新人が、その言葉を、一字一句、まじめにノートに書き取ったのです。

ホックシールドは、はっとしました。デルタは、乗務員の「笑顔」を、商品として、買っている。乗務員は、それを、供給する。では、八時間ものあいだ、心の内では別のことを感じながら、うわべの穏やかさを「売り続ける」人間の中で、何が起きているのか。彼女は、そのとき初めて、ある言葉を書きつけました。「感情労働(エモーショナル・レイバー)」。今日は、あなたが「良い接客」を求めて社員に「笑顔」を命じる、その命令が、実は社員を燃え尽きさせ、しかもお客様には見透かされている、という話をします。そして、本物の感情が生まれる空気の、設計の仕方を。

―「作り笑い」は、人を燃え尽きさせ、そして、見抜かれる

ホックシールドは、感情の扱い方を、二つに分けました。一つは「表層演技」——内心は変えずに、表向きの表情だけを、作ること。作り笑いです。もう一つは「深層演技」——実際に、内心の感情そのものを、求められる表情に合わせて、変えようと努力すること。そして、研究が示すのは、こうです。「表層演技」——ただ、笑顔を「装う」こと——が、最も、人を蝕む。それは、燃え尽きを招き、自分の感情からの「疎外」を生む。「その笑顔は、もう、彼女自身の笑顔ではない」。自分の表情からも、自分が本当に感じているものからも、切り離されていく。そして——お客様は、その、うわべだけの、うつろな笑顔を、感じ取ってしまうのです。

ここに、透明資産経営の核心があります。あなたは、社員に、お客様への、心からの温かさを、求めています。だから、それを「命じる」。「笑え」「愛想よく」と、マニュアルで、ルールで。けれど、本物の「感情」を、命じることは、できません。「表情」を命じれば、それは「表層演技」——作り笑い——を強いることになる。それは、社員を燃え尽きさせ、自分自身から引き剥がし、そして皮肉にも、お客様に、その嘘を、見抜かれる。お客様が感じる「温かい空気」は、偽造できないのです。それは、「育てる」ことしか、できない。そして、ここに、私が繰り返しお伝えしてきた真実があります。感情は、上から下へと、流れる。人は、自分がされているように、お客様を扱う。心から尊重され、大切にされ、急かされていない社員は、本物の温かさを感じ、それを、そのままお客様へ手渡す。搾り取られ、監視され、お客様より雑に扱われている社員は、作り笑いを浮かべ、そして、燃え尽きる。あなたは、感情の空気を、笑顔を「命じる」ことでは、設計できない。笑顔が「本物になる条件」を、つくることで、設計するのです。

さあ、あなたが、どうやって「良い接客」を得ているかを、見てください。あなたは、「表情」を命じていないでしょうか——作り笑いを、決まった挨拶を、そして「お客様は神様だ」という理屈で、理不尽をも飲み込ませながら——その一方で、社員自身は、圧力と、疑いと、お客様に求めるより雑な扱いで、遇していないでしょうか。だとしたら、あなたは、「作り笑いの工場」を、築いているのです。うつろな笑顔、燃え尽きていく人々、静かな自己疎外、そして、その嘘を感じ取るお客様。しかも、最も本物の温かさを持っていた、あなたの最良の社員から、先に燃え尽きます。本物の感情の蓄えもないまま、一日中、感情を偽り続けることは、この世で最も、消耗する労働だからです。あなたは、社員の「心」を、すり減らして、偽物の温かさを、受け取っているのです。

だから、笑顔を命じるのを、やめてください。そして、本物の笑顔が生まれる「条件」を、設計するのです。社員を、少なくとも、あなたがお客様に扱ってほしいのと、同じくらい良く、扱う——温かさは、上から下へ、流れ通るのですから。彼らに、尊重を、余白を(急かさないこと)、支えを、そして、理不尽を一身に浴びなくてよい権利を、与える。そうすれば、彼らの前向きな感情は、作り物ではなく、本物になる。果てしない作り笑いの燃え尽きから、彼らを守る。想像してみてください。お客様が、本物の温かさを、感じている様子を。社員が、実際に、それを感じているから。あなたが、それが感じられる空気を、設計したから、です。

本物の笑顔は、買えません。そして、偽物の笑顔は、社員を犠牲にし、しかも、誰も、だませない。お客様が感じる温かい空気は、社員が生きている、その同じ空気が、手渡されたものです。だから、感情を、命じるのを、やめてください。それが本物になる条件を、設計するのです。社員を、お客様に扱ってほしいように扱えば——笑顔は、おのずと、そこに生まれるのです。

―勝田耕司