『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「もっと連携しろ」と叫んでも無駄――協力は、席と席の“距離”で決まる

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―50メートル離れると、人は週に一度も話さなくなる

MITのトーマス・アレン教授は、なぜ、同じ課題に取り組む技術者チームの中で、成功するチームと、しないチームがあるのかを、調べました。原因は、頭のよさでも、責任感でもありませんでした。それは「コミュニケーション」——そして、そのコミュニケーションを支配していたのが、なんと「席と席の物理的な距離」だったのです。

彼が、距離とコミュニケーションの頻度を、グラフに描いたものが、いまや有名な「アレン曲線」です。それが示したのは、衝撃的な事実でした。人と人の距離が離れるほど、コミュニケーションの頻度は、なだらかにではなく、崖から落ちるように、激減する。そして、およそ50メートルも離れると、週に一度、言葉を交わす確率すら、ほぼゼロになってしまうのです。今日は、あなたが「もっと連携しろ」と叫んでも、なぜ会社の壁がなくならないのか——そして、協力を、号令ではなく「設計」する話を、お伝えします。

―デジタル時代でも、距離は「死んで」いない

「それは昔の話だろう。今は、メールもチャットもビデオ会議もある。距離なんて、関係ない」——そう思うでしょう。ところが、アレンがのちに調べたところ、結果は、まったく逆でした。デジタルの道具は、この効果を、消しませんでした。それどころか、物理的に離れると、対面だけでなく、メールやチャットを含む「あらゆる」コミュニケーションが、そろって減っていたのです。人は、近くの人とよく話し、そして、その、よく話す人にこそ、メッセージを送る。遠くの人とは、対面でも話さず、そして、メールも送らない。距離は、死んでいなかったのです。

ここに、透明資産経営の、決定的な設計原理があります。あなたは、社員に「もっと連携しろ」「壁を壊せ」「部署を越えて話せ」と、繰り返し号令をかけています。号令です。けれど、協力とは、「意欲」の問題では、ありません。「距離」の問題なのです。50メートル離れた二人は、あなたが何度頼もうと、どんなに優れたチャット・ツールを与えようと、連携しません。そして、隣り合って座る二人は、誰にも言われずとも、労せずして、連携する。だから、協力は、あなたが「叫んで」引き出すものではない。それは、あなたが「設計」するものなのです——「誰を、誰の近くに置くか」という、近接性を設計することで。協力の空気は、フロアの見取り図の中に築かれる(そして、離れて働くチームには、意図的に「心理的な近さ」を設計することで)。

さあ、あなたの会社の配置を——物理的にも、組織的にも——見てください。最も連携すべき二つのチームは、近くにいるでしょうか。それとも、別のフロア、別の建物、別のタイムゾーンに、いるでしょうか。あなたは、経理をこちらに、営業をあちらに置いて、そして、なぜ両者が話さず、互いを理解しないのかと、首をかしげている。それは、心構えの問題では、ありません。距離の問題です。あなたが、互いを必要とする人々の間に、一メートル距離を置くたびに、あなたは、そのぶんの協力を、差し引いている。そして、どんな「壁を壊そう」というスピーチも、どんな新しいチャット・チャンネルも、それを足し戻しては、くれない。あなたは、壁を、文字どおり壁の中に設計しておきながら、それを社員のせいにしているのです。

だから、近接性を、意図的なレバーとして、設計してください。互いを必要とする人とチームを、近くに置く——同じ空間、同じ部屋、あの「臨界距離」の内側に。それができないとき(離れて働くとき)は、「心理的な近さ」を、意図して設計する——定期的な対面、共有される儀式、そして、気軽に声をかけられる本物の安心を。道具だけでは、それは起きないのですから。スピーチをする前に、机を、動かしてください。想像してみてください。あなたが、協力を号令するのをやめ、距離を設計し始めたとき、ひとりでに立ち現れる、連携を。

あなたは、それを禁じる距離を越えて、人を「連携させよう」と、説得することは、できません。協力は、フロアの見取り図の中で、生きもし、死にもする。だから、次に「もっと協力しよう」と叫ぶ前に、あなたが、互いを必要とする人々を、どれだけ引き離して置いたかを、見てください。そして、動かすのです。協力の空気は、あなたが説く「価値観」では、ありません。あなたが設計する「距離」なのです。

―勝田耕司