『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「ウォール街ゲーム」か「コミュニティ・ゲーム」か――呼び名一つで、協力は倍になる!?

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―同じゲーム、違う名前

心理学者リーバーマン、サミュエルズ、ロスが行った、鮮やかな実験があります。彼らは、被験者に、協力するか裏切るかを選ぶ、ある心理ゲーム(囚人のジレンマ)をやらせました。ルールも、報酬も、まったく同じ。ただ一つ、変えたのは——ゲームの「名前」です。ある人たちには、これは「ウォール街ゲーム」だと告げ、別の人たちには、これは「コミュニティ・ゲーム」だと告げた。

結果は、驚くべきものでした。「コミュニティ・ゲーム」と呼ばれた人たちの協力率は、「ウォール街ゲーム」と呼ばれた人たちの、およそ二倍。呼び名一つで、人の振る舞いが、まるで変わったのです。しかも——事前に、仲間や教官が「この人は協力的だ」「この人は競争的だ」と評価していた、その「性格」は、実際の行動を、まったく予測しませんでした。たった一つの言葉が、その人の性格を、軽々と、押し流したのです。今日は、あなたが無意識に使っている「言葉」こそが、あなたの会社の空気を設計している、という話をします。

―人は、名づけられた「ゲーム」を、プレイする

私たちは、振る舞いは「その人の性格」から生まれると、信じています。「彼はチームプレーヤーだ」「彼女は競争心が強い」。ところが、この実験が示したのは、状況を名づける、たった一つの言葉が、性格を凌駕する、という事実でした。そして、この実験がさらに示したのは——人は、その事実に、まるで気づいていない、ということです。誰もが、性格が行動を決めると、思い込んでいる。

ここに、透明資産経営の、力強い設計原理があります。あなたは、一日中、あなたの会社の「状況」に、名前をつけています。気づいていようが、いまいが。市場を「戦い」と呼べば、社員は戦う。案件を「問題」と呼べば、社員は身構える。隣の部署を「あいつら」と呼び、あるプロジェクトを「コスト」と呼ぶ。あなたが設定するその「フレーム(枠づけ)」こそが、空気の一部であり、それは、どんな性格よりも強く、行動を形づくるのです。言葉は、あなたがすでに引いている、設計のレバーです——たいていは、無意識に。

さあ、あなたが使っている言葉に、耳を澄ませてください。あなたは、市場を「戦争」、競合を「敵」、社内の評価を「査定(=裁き)」、お客様を「客数」、変化を「戦い」と、呼んでいないでしょうか。その一語一語が、「ウォール街ゲーム」の名札です。社員に、裏切れ、疑え、社内で競え、人をモノとして扱え、と、静かに指示している。そして、その結果生まれた文化を、あなたは、社員の「性格」のせいにする。それは、彼らの性格では、ありません。あなたが、そのゲームに、つけた名前なのです。あなたは、自分の語彙で、競争的で、敵対的な空気を設定しておきながら、なぜ社員が協力しないのかと、首をかしげているのかもしれません。

だから、言葉を、意図的に設計してください。あなたが望む行動を「誘う」フレームを、選ぶのです。「市場シェアの争奪戦」ではなく、「誰よりもお客様に喜ばれる仕事」。「あいつら」ではなく、「私たち」。「コスト部門」ではなく、「これを可能にしているチーム」。ゲームの名を、「コミュニティ・ゲーム」に付け替えてください。そして、協力が、およそ倍になるのを、見ていてください。社員が変わったからでは、ありません。あなたが、名前を、変えたからです。想像してみてください。すべての状況が、人の最良を引き出すように名づけられたとき、そこに生まれる空気を。

人は、あなたが名づけたゲームを、プレイします。だから、あなたが持つ、最も強力で、最も安上がりな設計の道具は——あなたが選ぶ、言葉なのです。次のスピーチの前に、問うてください。「私は今、どんなゲームに、名前をつけているのか」と。すべてを「戦争」と呼びながら、協力を説くことは、できません。ゲームの名を変えれば、空気が、変わるのです。

―勝田耕司