こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。
―自分の待遇は、何も変わっていないのに
同じくらい優秀な、二人の社員がいるとします。あなたは、片方を昇給させました。もう一方の待遇は、一円も、一項目も、変えていません。ところが——もう一方の社員が、その昇給を知った瞬間、彼は、意欲に満ちた社員から、不満を抱えた社員へと、変わってしまう。自分の条件は、何一つ変わっていないのに、です。
なぜ、こんなことが起きるのか。答えは、行動心理学者J・ステイシー・アダムズが1963年に提唱した「エクイティ理論(公平理論)」にあります。今日は、あなたが「良い待遇を与えている」つもりで、実は社員のやる気を破壊しているかもしれない、その仕組みと——「公平」という空気の、設計の仕方を、お話しします。
―人は、金額ではなく、「比率の比較」で動く
アダムズの発見は、こうです。人は、自分の「もらうもの(アウトプット)」を「差し出すもの(インプット)」で割った比率を、無意識に計算しています。そして、その比率を、「自分だけ」で評価するのではない。隣の同僚、あるいは業界の相場という「比較対象」の比率と、見比べるのです。自分の比率が、相手の比率と釣り合っていれば、「公平だ」と感じ、満足し、やる気を保つ。ところが、自分の比率のほうが低いと感じた瞬間——不公平感、そして怒りが生まれ、やる気は崩れ落ちます。
ここが決定的です。人を動かすのは、給料の「絶対額」では、ありません。他人と比べた「比率」なのです。だからこそ、自分の待遇が何も変わっていなくても、隣がより良い比率を手にしたと知っただけで、人は、みじめになる。しかも、不公平を感じた人は、それを埋め合わせようとします。その最初の犠牲になるのが——「頼まれてもいないのに、やっていたこと」です。同僚を助ける。後輩に教える。誰の担当でもない問題を、進んで片づける。この「言われなくてもやる、上乗せの働き」が、真っ先に、静かに、引っ込められる。そして、不公平の埋め合わせは、しばしば、退職という形にまで至ります。
―「公平な空気」は、透明性で設計する
ここに、透明資産経営の視点があります。あなたは、「公平」とは、社員に良い待遇(絶対額)を与えることだと、思っている。違います。公平とは、「比較」の問題です。そして、比較は、避けられず、目に見えず、そして「主観」で行われる。だからこそ、「公平な空気」は、気前のいい給料からは生まれません。それは、比較そのものを「設計」することから生まれる——誰が、なぜ、何を得るのか、その基準を、透明で、一貫したものにし、社員が「この比率は、フェアだ」と、見て、納得できるようにすることから。
そして、恐ろしいのは、暗闇です。給与が秘密で、昇給が気まぐれに見えるとき、人は、不公平を「想像」します。そして、想像された不公平は、たいてい、現実よりも、ひどい。あなたが、一人に、こっそり、勘で、昇給やボーナスや特別扱いを与えるとき——あなたは、その人と自分を比べるすべての社員のやる気を、知らぬ間に、毒しているのです。しかも、その被害は、「不公平だ」という文句としては、表れません(人は、めったにそうは言いません)。それは、あの「上乗せの働き」——教え、助け、進んで直す——が、静かに死んでいく形で、表れる。最も鋭く比較する、あなたの最優秀の社員から、先に、光を落としていく。あなたは、それを得られなかった全員のやる気を削ぐ報酬に、お金を使っているのです。比較の公平さを、設計しなかったから。
だから、「公平な空気」を、設計してください。報酬の基準を、透明で、一貫したものにする——たとえ待遇に差があっても、社員が「なぜ、その比率なのか」を、見て、理解できるように。一人により多く報いるなら、その「インプットの違い」を、堂々と説明できるようにする。不公平が想像で膨れ上がる、あの暗闇を、減らすのです。そして、以前お話しした「決め方の公平(手続きの公正)」と、組み合わせる。想像してみてください。報酬に差があっても、それが恨みを生まない職場を。全員が、その比率は、隠されたものではなく、設計されたフェアなものだと、見て、分かるから、です。
公平とは、あなたが「いくら払うか」では、ありません。それは、社員が比較したときに、「何を感じるか」です。そして、社員は、必ず、比較します。だから、ただ良い給料を払うだけでは、足りない。比較が「フェアだ」と感じられる空気を、設計するのです。絶対額は、誰のやる気も、上げません。比べた比率が、全員のやる気を、決めるのです。
―勝田耕司