『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「中間管理職」が会社の空気を決めている~見過ごされてきた、最重要ポジションの真実~

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆を深め、従業員同士の信頼関係を築き上げ、商品・サービスの独自性を強化します。そして、持続的成長につながる経営の仕組みです。

―「社長の思いは届いているはずなのに、現場が変わらない」

経営者からよく聞く、この悩みの答えは、多くの場合、「中間管理職」という存在の中に隠れています。社長がいくら熱く語っても、その言葉が現場に届く前に、中間管理職のフィルターを通過します。そのフィルターがどんな空気を持っているかによって、社長のメッセージは「増幅」されることもあれば、「減衰」あるいは「歪曲」されることもあります。

「うちの部長は社長の話を自分流に解釈して伝えるから、現場に届くころには別の話になっている」「課長がネガティブな空気を出すから、チーム全体がいつも重い」「管理職が変わると、チームの雰囲気ががらりと変わる」——こうした声を、現場からよく耳にします。中間管理職は、組織の空気における「増幅器」です。良い空気も悪い空気も、中間管理職を通じて増幅され、現場に伝わります。この事実を経営者が正確に理解しているかどうかが、組織の空気の質を大きく左右します。

―中間管理職は「最もストレスの高いポジション」である

まず、中間管理職が置かれている状況を正確に理解することが重要です。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの研究者たちが行った調査(2012年)によれば、職場においてストレスが最も高いポジションは、経営トップでも現場の一般社員でもなく、「中間管理職」であることが示されています。理由は明快です。上からの要求と下からの要求の両方を同時に受け、しかし自分には十分な権限がない、という構造的なストレスにさらされているからです。

上司からは「結果を出せ」「コストを削れ」「早くやれ」というプレッシャーがかかります。部下からは「もっと評価してほしい」「仕事量が多すぎる」「方針が伝わらない」という声が上がります。その板挟みの中で、中間管理職は毎日、膨大な判断と調整を行い続けています。この状況を放置したまま「管理職がしっかりしていない」と嘆くことは、問題の本質を見誤っています。中間管理職が機能不全に陥っているとすれば、それは個人の能力や意欲の問題である以上に、中間管理職を取り巻く「空気の設計」の問題です。

―中間管理職が「空気の伝導体」になる瞬間

中間管理職が組織の空気に与える影響を、具体的に考えてみましょう。ある部長が、経営会議から戻ってきます。会議では、来期の目標が大幅に引き上げられ、コスト削減も求められるという、厳しい内容が伝えられました。その部長がチームに戻って最初に発する言葉と表情が、チームの空気を決定します。

「また無茶な目標を押しつけられた。どうするんだよ、これ」とため息をつきながら言えば、チームには「うちの会社はおかしい」「頑張っても報われない」という空気が広がります。「来期、高い目標をいただきました。正直、簡単ではないと思っています。でも、この目標にどう挑戦するか、みんなで一緒に考えたい」と言えば、同じ内容でもチームの空気はまったく異なるものになります。中間管理職は、経営層と現場の「通訳者」です。数字や方針という「情報」だけでなく、それに伴う「空気」を翻訳して現場に届ける役割を担っています。そしてその翻訳の質が、現場の士気・創造性・行動力を大きく左右します。

―「空気を下げる管理職」の四つのパターン

現場の空気を下げる中間管理職には、いくつかの共通したパターンがあります。

第一のパターンは「否定から入る管理職」です。部下が意見やアイデアを持ってきたとき、「それは難しい」「前にやって失敗した」「そんな時間はない」と、まず否定する。このパターンが繰り返されると、部下は「どうせ言っても否定される」という学習をし、やがて何も言わなくなります。

第二のパターンは「感情を職場に持ち込む管理職」です。自分の機嫌の良し悪しをそのまま職場に持ち込み、機嫌が悪い日はチーム全体が萎縮する。情動感染のメカニズム(前述)により、管理職の感情状態はチームに直接伝播します。

第三のパターンは「上には良く、下には厳しい管理職」です。経営層の前では従順で愛想が良く、部下には高圧的で細かいミスを責め立てる。このダブルスタンダードは、部下に「会社への不信感」を植え付けます。

第四のパターンは「責任を取らない管理職」です。部下のミスは叱責するが、自分のミスは認めない。成果は自分のものにするが、失敗は部下のせいにする。このパターンが続くと、部下は「ここで頑張るのは割に合わない」という空気を学習します。

これらのパターンに共通しているのは、いずれも「管理職自身が、安全な空気の中にいない」という状態から生まれているという点です。管理職が上からのプレッシャーにさらされ、承認されず、孤立していると、その苦しさは必ず下の空気に滲み出ます。

―「空気を上げる管理職」が持っているもの

一方、現場の空気を高める中間管理職には、共通した特徴があります。富士通株式会社は、2020年代に入り「ジョブ型雇用」への移行と並行して、管理職の役割を「管理する人」から「場の空気をつくる人」へと再定義する取り組みを進めています。管理職に求められる能力として、業務管理スキルだけでなく「心理的安全性の醸成能力」を明示的に位置付けたことは、組織における管理職の役割の本質を正確に捉えた方向転換だといえます。

空気を上げる管理職に共通しているのは、「自分のチームの空気に責任を持つ」という意識です。チームの空気は偶然ではなく、自分の言動によって設計できるものだという認識を持っている。具体的には、部下の発言を「まず受け取る」習慣を持っています。すぐに判断・評価・否定をするのではなく、「なるほど、もう少し聞かせて」という姿勢で場を開く。この小さな習慣が、「ここでは意見を言っていい」という空気をつくります。

また、自分の失敗や迷いを適切に開示することも、空気を上げる管理職の特徴です。完璧を装わず、「自分もこれには悩んでいる」「一緒に考えたい」という姿勢が、部下との間に人間的な信頼関係を生み出します。

―中間管理職を「空気の設計者」に育てるために

では、経営者は中間管理職をどのように支援すべきでしょうか。まず重要なのは、中間管理職を「孤立させない」ことです。多くの組織では、中間管理職は「できて当然」の存在として扱われ、経営層からも現場からも支援を受けにくい立場に置かれています。しかし前述のように、中間管理職は組織の中で最もストレスの高いポジションです。そのポジションにいる人が孤立していれば、その孤立感は必ず部下の空気に伝わります。

管理職同士が横のつながりを持ち、悩みを共有し、互いに学び合える場を意図的につくること。経営者が管理職と定期的に一対一で対話し、「あなたの仕事を見ている」「あなたの苦労を理解している」というメッセージを伝え続けること。これらは、中間管理職の心理的安全性を高め、その安全性が部下への接し方に好影響をもたらします。花王株式会社は、管理職を対象とした「1on1ミーティング」の文化を組織的に整備し、管理職自身が「承認される経験」を定期的に持てる仕組みをつくっています。管理職が承認される経験を持つことで、自然に部下を承認する行動が生まれる——という好循環を、意図的に設計しているのです。

―経営者と中間管理職の「空気の共鳴」

組織の空気が最も美しく機能するのは、経営者と中間管理職の空気が「共鳴」しているときです。経営者が大切にしていることを、中間管理職が自分の言葉で体現する。経営者のビジョンを、管理職が自分のチームの文脈に翻訳して伝える。経営者の「上機嫌の空気」が、管理職を通じて現場に届く——この共鳴が起きているとき、組織は一枚岩のように動きます。

しかしこの共鳴は、自然には生まれません。意図的につくる必要があります。経営者と管理職が同じ価値観を共有し、同じ方向を向き、互いへの信頼を積み重ねる機会を、日常の中に設計すること。その設計こそが、経営者の最も重要な仕事のひとつです。中間管理職は、会社の空気の「増幅器」です。その増幅器が良い空気を増幅できているとき、組織全体が動き出します。そしてその増幅器の質を決めるのは、経営者がどんな空気を中間管理職に届けているか、にほかなりません。

経営者の皆さん、今日、あなたの管理職は、どんな空気の中に置かれていますか?

―勝田耕司