『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】「心理的安全性AWARD」の裏側、受賞企業が隠し持つ、泥臭くも温かい「対話の作法」とは?

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

ー「受賞」という光の影にある、数千時間の「泥臭い対話」

経営者の皆様、メディアで紹介される「心理的安全性AWARD」の受賞企業や、「働きがいのある会社」の上位企業のキラキラとした紹介記事を見て、こう思わなかっただろうか。 「うちはあんなにお洒落なオフィスじゃないし、社員もあんなに意識が高くない。土台が違うんだよ」と。

断言しよう。それは大きな誤解だ。 受賞企業の多くも、かつては「情報の隠蔽」「部署間の対立」「若手の離職」「社長の孤独」という、濁った空気の中で喘いでいた。彼らがAWARDの舞台に立てたのは、魔法を使ったからではない。組織に溜まった「淀み」を掃除するために、逃げ場のない「泥臭い対話」を何百時間、何千時間と積み重ねてきたからだ。

透明資産は、ある日突然空から降ってくるものではない。それは、リーダーが傷つくことを恐れずに、社員の「本音」という名の濁流に飛び込んだ先にしか得られない、血の通った資産なのである。

ー統計が裏付ける「対話の質」と「回復力」

組織に流れる空気の質は、トラブルが起きた際の「回復速度(レジリエンス)」に顕著に現れる。 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によれば、心理的安全性が高く、対話の作法が確立されている組織では、トラブル発生から解決までのリードタイムが、そうでない組織に比べて40%以上短いという傾向がある。

また、和光大学リポジトリの研究でも、組織風土の変革における「対話」の重要性が説かれている。単なる情報の伝達(コミュニケーション)ではなく、お互いの価値観を揺さぶり合う「対話(ダイアログ)」が行われている組織では、個人の主体性が高まり、組織全体の「透明資産」が指数関数的に増大することが確認されている。

「科学が示す成長の分岐点」(日本の人事部)で論じられている通り、職場の「なんとなく」の空気を変える特効薬は、リーダーによる「徹底的な自己開示」と、それを受け止める「聴く技術」の融合なのだ。

ー受賞企業の舞台裏:空気を変えた「沈黙との戦い」

2025年、2026年にかけてAWARD等で注目を集める企業は、どのような「泥臭い作法」を実践しているのか。

例えば、株式会社カヤック(面白法人カヤック)だ。彼らの「面白がる」という空気は、一見軽やかに見えるが、その裏には「ぜんいん人事部」という全社員が組織づくりに関わる強烈な対話の仕組みがある。誰かが不満を持てば、それを「面白い企画」に変えるまで話し倒す。この、面倒なことから逃げない姿勢こそが、透明資産を磨き上げる作法である。

また、三井住友海上火災保険株式会社のような巨大組織においても、近年は「対話」の変革が起きている。役職を廃した「さん付け」運動や、役員と若手がガチンコで語り合うタウンホールミーティング。こうした「階層の壁」を壊す泥臭い試みが、硬直化した大組織に「新しい風」を通し、透明な空気を取り戻させている。

地方の製造業で変革を遂げた株式会社由紀精密の事例も素晴らしい。職人の「背中で語る」文化を尊重しつつ、数値データと個人の想いをリンクさせる「透明な対話」を導入した。言葉にできない技術を、言葉にして共有する。この、気の遠くなるような「翻訳作業」という対話の作法が、世界から注目される独自性(ブランド)を生んだ。

さらに、バリュエンスホールディングス株式会社では、社員の個性を最大限に引き出すために、徹底した「フィードバック文化」を構築している。単なる称賛だけでなく、耳の痛いフィードバックも「あなたの成長のために」という透明な意図を持って伝える。この、逃げない対話が組織の筋肉を鍛え上げている。

ー透明資産を積み上げる「4つの対話の作法」

社長、あなたの会社で明日から実践できる、空気を澄ませるための「作法」を伝授しよう。

1. 「チェックイン」という儀式

会議の冒頭、本題に入る前に、今現在の自分の「気分」や「体調」を正直に分かち合う1分間を作る。これだけで、その場の空気の「透明度」が一気に上がり、本音が出やすくなる。

2. 「無知の知」をさらけ出す

社長であるあなたが、「実は、今の市場の動きが私にもよく分からないんだ。みんなの知恵を貸してほしい」と弱音を吐くこと。社長の「不完全さ」という透明性が、社員の「助け合い(助)」因子を爆発させる。

3. 「違和感」を放置しない

会議の終わりに、「今日、何か言い残したことや、モヤモヤしていることはないか?」と一言添えること。その場で解消できなくても、「違和感を出していいんだ」という安心感そのものが、透明資産の残高になる。

4. 1on1を「査定」から「合奏」へ

個別の面談を、目標の進捗確認(詰め)の場にするのではなく、社員の人生の目的と会社の目的をどう調和させるかという「合奏」の場に変えること。

ー2026年、対話こそが「究極の自動化」を防ぐ

2026年、あらゆる業務が効率化・自動化される中で、唯一自動化できないのが「心と心のぶつかり合い」である。 効率だけを求めれば、対話は「無駄」に見えるだろう。しかし、その無駄の中にこそ、イノベーションの種があり、社員の忠誠心(ロイヤリティ)が宿る。

「心理的安全性AWARD」を受賞した企業たちが本当に受賞したのは、トロフィーではない。何があってもお互いを信じ抜き、本音をぶつけ合える「最強の絆」という透明資産の源泉だ。この源泉があれば、どんな技術革新が来ようとも、彼らはそれを乗りこなし、新しい価値を生み出し続ける。

ー最初の一歩は、あなたの「沈黙」から

社長、受賞企業のような「素晴らしい空気」を創るために、今日からできる最も勇気ある行動。 それは、社員の不満や批判を、反論せずに「最後まで聴き切る」ことだ。

あなたの耳に届く「濁った声」は、組織を良くしたいという願いの裏返しである。それを透明な心で受け止める。その泥臭い一歩が、やがて組織全体を浄化し、輝かしい「透明資産」へと変わっていく。

受賞を目的化してはいけない。 目の前の社員と、今日、どれだけ深い対話ができたか。 その積み重ねの先に、気づけばあなたの会社は、誰もが羨む「働きがいのある場所」になっているはずだ。

あなたの会社の対話、今日は誰の「本音」を救い出しましたか?

ー勝田耕司