『透明資産』経営のススメ【透明資産経営のススメ】心理的安全性という「免罪符」を捨てろ!最強のチームが共有する「心地よい緊張感」の正体

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

ー「心理的安全性」を履き違えていないか

今、日本の経営シーンで「心理的安全性」という言葉が独り歩きしている。 多くの職場を拝見する中で、私が危機感を抱いているのは、この言葉が「ぬるま湯の職場」を作るための免罪符として使われている現実だ。「何を言っても否定されない」という教えが曲解され、ミスを指摘できない、厳しい要求ができない、お互いに顔色を窺い合う「馴れ合いの集団」が量産されている。

しかし、断言しよう。それは心理的安全性でも何でもない。単なる「心理的低体温」だ。 本当の心理的安全性とは、ぬるま湯に浸かって傷をなめ合うことではない。たとえ耳の痛い意見であっても、組織の目的のために「正々堂々とぶつけ合える」状態を指す。そこには、馴れ合いとは正反対の、極めて高く、澄み切った「緊張感」が存在するのだ。

ーエビデンスが示す「高パフォーマンス組織」の真実

なぜ、馴れ合いの組織は業績が上がらないのか。それを裏付けるデータがある。 エドモンドソン教授の初期の研究では、当初「心理的安全性の高いチームほどミス(エラー)が多い」という逆説的なデータが出た。しかし詳細に分析すると、実際には「ミスが多い」のではなく「ミスを隠さず報告する文化があった」のだ。

逆に、空気が凍りついた組織では、ミスは地下に潜る。地下に潜ったミスは、時間の経過とともに複利で膨れ上がり、ある日突然、巨額の賠償やブランド失墜という形で地上に噴出する。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「2万人調査」では、従業員のウェルビーイングが主体的な「プロアクティブ行動(自ら考え動くこと)」に直結していることが示されているが、この「主体性」こそが重要だ。主体性とは、責任を伴う自由である。 「何を言ってもいい」とは、「自分の発言が組織にどのような影響を与えるか」という責任を負うことと同義である。この責任感を欠いた「心理的安全性」は、組織を腐敗させる毒薬にしかならない。

ー成功企業が実践する「心地よい緊張感」の設計

「働きがいのある会社」ランキングの常連である株式会社マネーフォワードや株式会社ラクス、あるいはリクルートを思い浮かべてほしい。 彼らのオフィスに漂っているのは、決して「ゆるふわ」な空気ではない。むしろ、目標に対して驚くほどストイックであり、建設的な衝突(コンフリクト)を歓迎する「熱い空気」だ。

例えば、リクルートには「お前はどうしたい?」という問いが文化として根付いている。この問いは、個人の意思を尊重すると同時に、「意思を持たない人間はこの場に必要ない」という究極の緊張感を突きつける。これこそが、透明資産経営における「空気の設計」の真髄である。

心理的安全性AWARDを受賞した株式会社賀正軒の事例も示唆に富んでいる。彼らは組織の大小に関わらず、心理的安全性が「人のチャレンジ」に繋がることを証明した。チャレンジには必ず失敗が伴う。失敗を許容する空気とは、裏を返せば「失敗を恐れずに高い目標へ挑め」という強烈なプレッシャーでもあるのだ。

ー透明資産としての「規律」と「信頼」

私はコンサルティングの現場で、よく「重心を下げろ」と伝える。 重心の低い組織とは、土台となる信頼関係(心理的安全性)が強固であり、その上に高い規律(ハイスタンダード)が載っている状態だ。 このバランスを定量化する指標として、私は「対話の彩度」を提唱している。

  1. 発言の多様性: 特定の幹部だけでなく、若手や現場スタッフからの「異論」が全体の何割を占めているか。
  2. フィードバックの速度: 問題が発生してから、それがリーダーの耳に入るまでの時間はどれくらいか。
  3. 挑戦の数: 成功確率50%以下のプロジェクトに、どれほどの人数が手を挙げているか。

これらの数字が向上しているとき、あなたの会社の「透明資産」は確実に増大している。逆に、数字上の売上が上がっていても、会議で誰も発言せず、社長の独演会が続いているなら、その会社は「透明な負債」を抱えていると言わざるを得ない。

ー経営者が今すぐ捨てるべき「幻想」

社長、あなたが社員に求めているのは「従順さ」か、それとも「貢献」か。 もし従順さを求めているのなら、心理的安全性など必要ない。恐怖政治で支配すればいい。しかし、もしあなたが、予測不能な時代において自律的に動く組織を作りたいなら、まず「自分がすべてをコントロールできる」という幻想を捨てることだ。

三井金属鉱業が実践する「みんなで愉しむ」風土づくりは、一見すると遊んでいるようにも見えるかもしれない。しかし、その根底には「多様な個性を認め、それぞれの専門性を最大限に引き出す」という、極めて高度な経営判断がある。多様性を認めるとは、自分とは異なる価値観を受け入れる「痛み」を伴う。その痛みを乗り越えた先にしか、本物の空気感は宿らない。

ー2026年、透明資産が経営の勝敗を分かつ

これからの時代、設備や資本といった「見える資産」の差は、テクノロジーによって瞬時に埋められる。競合他社があなたの会社の製品をコピーするのは容易だが、あなたの会社の「空気」をコピーすることは不可能だ。

日清食品ホールディングスが注力するインナーブランディングも、味の素が実践するウェルビーイング経営も、すべてはこの「コピー不可能な独自性」=「透明資産」を磨き上げるための投資である。

心理的安全性を、単なる「優しさ」の指標にしてはならない。それは、組織が真実に向き合い、最高のパフォーマンスを出すための「インフラ」である。 インフラが整えば、社員は勝手に走り出す。社長であるあなたの仕事は、彼らが全力で走れるように、コース上の「不透明な石ころ」を取り除き、透明で澄み切った空気を流し続けることだけなのだ。

ー社長、あなたの「背中」が空気を決める

最後に、最も残酷な真実を伝えよう。 組織の空気の7割は、社長であるあなたの「言動」と「一貫性」で決まる。 口では「挑戦しろ」と言いながら、失敗した社員に冷淡な視線を送っていないか。「何でも相談してくれ」と言いながら、忙しさを理由に壁を作っていないか。

社員は、あなたの言葉を聞いているのではない。あなたの「空気」を読んでいるのだ。 あなたが自らの弱さを認め、透明性を持ち、誰よりも組織の目的に対してストイックであるとき、組織には「心地よい緊張感」が宿る。その緊張感こそが、お客様との絆を深め、独自性を生み出す源泉となる。

さて、あなたの会社の空気は、今日、何度まで熱くなっただろうか。

ー勝田耕司